王妃主催ピクニック 初夏のクランペンボーの森の雷鳴Ⅳ
嫉妬にかられたストルーエンセは警告をするようにラファイエルを襲おうとした大狼を射殺した。
何事もないかのように森を離れて再びピクニック会場へ帰ろうとしていた。
国王の下級侍女がその会場で王妃キャロライン・マチルダとラファイエルの不倫関係を匂わす告白をして、同席した者達から批判の嵐が吹いていた。
2人の男が嫉妬に駆られて静かな戦いを繰り広げていた頃、女達の口論は佳境を向かえていた。
ムッスリと横を向いて会話しようとしないビューローと、突然私の浮気現場を目撃したと告白してきた下級侍女。
その隣には殺気に満ちて今にも飛びかかりそうなホルスタイン伯爵夫人とどうしていいのかわからず右往左往するだけのゲーラー。
ビューローとホルスタイン伯爵夫人の顔を何度も見てはため息をついて遂には下を向いてしまっている。
私はめんどくさくてうんざりして言葉すら出てこない。
顔は完全な無機質状態でじっと私とラファイエルの不倫現場を目撃したと告白した侍女を見つめていた。
なんなのこの女は。
ストルーエンセは何がしたいの?
警告?
もしかしてバレた?
いや!!
単なる嫉妬?牽制?
「王妃陛下!!
どうか真実をおっしゃってください。
ここには王妃陛下の忠実な僕しかいないではないですか」
私どうしてこんなに侮辱されないといけないの?
私はそりゃ肯定される様な容姿も特技も魅力もない。
でもだからと言ってこんなに侮辱される必要あるかしら??
私はいままで思った事のないほど自尊心がめきめきと身体の中から根を張り自分の外へと向かって飛び出してくるのを感じていた。
そう私の肯定。
「ですから………ラファイエル殿とは謁見の日に初めてあったのです。
それにあの夜会の際は………」
そう言おうとした時だった。
そんな修羅場を強い風が吹く。
髪が乱れ被っていた麦藁帽子が煽られて青い空に舞っていった。
丁度その方向に視線をやった時、逆光で良く見えない。
けれど人影が入って来た。
そう女性。
栗毛色の艶やかな馬に乗り、乗馬服は男性物の着装して威風堂々とした姿が印象的だった。
でもそれよりも更にその人物の顔を見てハッとした!
思わず名前を呼ぼうとしたけれど、その女性の視線を私に向けて瞳は口をつぐむように言っているかのように感じて私は無言を貫いた。
そう…………ヨ…ハンネ……あの……キュー商会でお針子のリーダーをお願いしていた彼女。
港町の養女になる為に退職した彼女がここに現れたの?
もうあんぐり~~ヨハンネ??
どうして?
どう生活していたの?
元気?
養父母は優しくしていれた?
聞きたい事はいっぱいある。
でも……どうも今はそれどころではない。
そう言っているようだった。
「どなたかしら?」
「ヨハンネ・マリー・ド・マレヴィルと申します。
キャロライン・マチルダ王妃陛下に初めてご挨拶申し上げます。
今は船乗りの船長マレヴィルの妻でございます。
この度は特別の御配慮により王妃陛下の主催の会にご招待いただきました」
貴族男性がする礼をする様子は優雅で教養を身につけた事を語っている。
心を打たれ今にも抱きつきたい衝動を必死にこらえる。
「貴女その男装。
とても似合っているわ。
刺繍もとてもエレガントで中世的だわ。
悪くないわね」
ビューローはその装いが新鮮でキラキラした瞳でヨハンネを見ている。
「刺繍は私がいたしました。
デンマークの花々を刺繍しています」
「そう素敵ね。
私も男装いいかもしれないわね。
陛下が出産されて体調が戻られたら皆で男装して乗馬をいたしましょう。
活動的で楽しいでしょう」
「ホルスタイン伯爵夫人。
良い考えですわ」
話題を変えたかったゲラーがすぐに飛びついた。
少し会の雰囲気が和やかになった所で二頭の馬がこちらに向かってくるのが見える。
それは確実にこちらに向かってやってくる。
そうストルーエンセとラファイエルだ。
彼らは涼しい顔つきで会場に戻り馬を降りこちらを歩いてくる。
すると私の前にいたヨハンナがあっと言う間に姿を消した。
と思ったらそのしなやかな身体をラファイエルに飛びついて抱きしめていた。
えぇええぇ~~~~~~~~~~~~??
私の心の声が漏れるのではないくらい驚いた。
だってだって??
二人ってそんな関係でしたっけ?
それにラファイエル私に告白したじゃない?
どういう事??
これは??
どうやらこの光景に驚いたのは私だけではなかった。
その場にいた全員が呆気に取られている。
それはそうだ。
下級侍女の王妃と外国人商人の不倫現場を捕らえたという告白が成立しなくなるのでは?
いやもしかして二股??
「ラファイエル!!
会いたかったわ~~」
ヨハンネはいままで聞いた事のない軽やかな甘い声でラファイエルの首に両手を絡ませて、身体ごと彼に預ける様に抱きしめている。
ラファイエルも動揺する様子もなく、当然でいつもと同じようだと言わんばかりにヨハンネの身体をその逞しい腕に抱き寄せた。
「私もだよヨハンネ」
後ろでストルーエンセが大きな深い溜息をついた後咳払いを一つする。
「この度王妃陛下に一般市民の生活を身近に理解してほしいと存じ、この女性をお傍に置いていただきたく。この機会に招待いたしました。
地方の出身者ではございますが格別に教育を受けた者です。」
ストルーエンセはまさかこの状況を事前に知っていた様子はなく、どうやら偶然二人の事を知ったみたい。
いつも冷静な彼が明らかに動揺していたから。
なんだ?
どういうことだ?
ヨハンネはラファイエルの恋人?
もしそうなら……私は余計な事をラファイエルに言ったかもしれない。
まあ彼がそれを風潮しないという確信があったからだ。
「……国王陛下の下級侍女。
君は離席したまえ。
そして君の処遇は追って連絡する。
それまで自宅謹慎だ」
ストルーエンセは侍女を睨みつけながら放った言葉を聞いてその女は真っ青になっている。
「ストルーエンセ様。
私の告白は本当です!!
どうか調査を!
ストルーエンセ様!!」
「何をしている!
近衛兵!
王妃陛下に危害を加えようとしている女をつまみ出せ!!」
ストルーエンセは不愉快さを隠さずに激しい口調で命令する。
近衛兵はつかさずやってきて女の両腕を軽々とひっぱり、まるで人形でも移動させるようにサッとその場から追い出した。
「ラファイエル殿。
どうやら誤解があったようだ。
不愉快に思われたら申し訳ない」
「いいえ。
ストレートエンセ殿。
あの夜。
王妃陛下の元にヨハンネがあがると知って王妃陛下に仲介をお願いしたのです。
それで愛の告白とあの女が誤解したのでしょう。
私が愛してやまないのはこの女性ヨハンネ・マリー・ド・マレヴィルです。
この人です」
えぇ~~~~~~??
二人はそういう関係だったの?
ええぇ~~~~??
人間不信に陥りそうだわ~~~~。
ラファイエルあれはなんの告白??
なんだったというの~~~~
楽しいピクニックが修羅場になる所だった。
さてラファイエルとヨハンネの関係は?
次回王妃の出産が彼らの転機になります。
次回休載いたします。
新話更新は活動報告にて掲載いたします。
宜しくお願い申し上げます。




