ストルーエンセの改革 1771年夏 罪の子
王妃キャロライン・マチルダ主催のピクニックで爆弾発言をした国王陛下の寝室専属の下級侍女。
王妃とフランス人商人ラファイエルとの不倫現場を目撃したというものだった。
窮地に陥る王妃を救ったのは以前キュー商会でお針子をしていたヨハンネとそのラファイエルだった。
二人は恋人同士でラファイエルは一方的に好意を寄せていて、キュー商会と懇意の王妃へ元の雇い主キュー夫人と仲を仲介してもらうために王妃に彼女の想いを打ち明けていた時の話だと打ち明けた。
夫の下級侍女がとんでもない告発をしたあの日から、丁度一週間目にサンジェルマン伯爵から秘密の手紙が届いたの。
私の留守中に瞬間移動装置でやってきて置いて帰っていったらしいわ。
らしいというのはね。
手紙にそう書いていたから。
受け取った手紙で納得したわ。
あの日からラファイエルとヨハンネの関係になんだかもやもやして落ち着かない日々を過ごしていたの。
王妃陛下
ご連絡が遅くなり申し訳ございません。
ストルーエンセの監視も強化されるだろうと思いご連絡が今夜になってしまいました。
先日のピクニック事件ではさぞ驚かれたでしょう。
実はあの事件の数日前に王宮へスパイを送り込んでおりました。
その者から国王陛下の寝室担当の下級侍女がよからぬ事を企んでいると。
報告を受け調査いたしておりました。
その者の情報からあの侍女とストルーエンセが王妃陛下とラファイエル殿の関係を不審に思い。
下世話な事件を起すというのです。
その時にラファイエルにその話をしたのですが、偶然にもいえ…幸運にも二人は恋仲だと聞きました。
そこで二人と会いヨハンネには陛下の事情もお話いたしました。
秘密にデンマークを離れたいと。
ただキュー夫人であるとはお伝えしていません。
どうか王妃陛下からお話くださいませ。
ヨハンネはこれからもお傍に置き、王宮に波乱の波を起こしてくださいませ。
さて本題はマチルダ殿の件でございます。
そろそろ出産時期でございます。
当地に居ります彼女を王都へ呼び寄せました。
今は秘密裏にある屋敷に匿っております。
あと二、三日で出産するのではと産婆は申しております。
すでに私の配下の者を王妃陛下の寝室担当に仕えさせております。
事前に王妃陛下の侍女を使い、寝室に例の香木を焚くように指示くださいませ。
ストルーエンセは必ず現場に同席するはずです。
出産の現場に男が同席するなど、恥ずべき事ですが。
睡眠術の効き目は確かと王妃陛下もご存じの通りでございます。
後は事前の打ち合わせ通りに無事に出産出来ますように神に祈るばかりでございます。
では当日は手配通りに。
尚この手紙は読んでいただいた後燃やしてくださいませ。
陛下の御運を願ってやみません。
サンジェルマン
そう言えば伯爵は、あの日の出来事でなんにも口を出さなかった。
きっと全てを知ってあえて黙っていたのね。
自分に問いかける。
そうよね……。
そうだとしても……ラファイエルの幸せ……よかったって……。
そう……よかったって………思わなきゃ。
そうよ……。
私がラファイエルの気持ちに答えられないなら。
彼の幸せを願わないと。
でも……ならあんな告白をしなくても……。
いえいえ……。あれからだいぶんと経ったもの。
愛する人が出来ても可笑しくないわ。
それにヨハンネなら私も好きになるのはわかるのも…………。
でもでも………。
私の心に木枯らしが激しく吹いてまるで木の葉を揺らす様に心を揺さぶって離さない。
駄目。そうよ駄目。
えって何が?
だって……。でも………。
自分でも可笑しかった。
だって………。
嬉しいと悲しいが一気に濁流の様に押し寄せてくるんだもの………。
私はぎゅっと手紙を握りしめ寝台の傍に灯っていた燭台の炎にそれを近づけた。
一瞬の強い炎を発したかと思ったら黒い灰が目の前で散っていく。
散ってはいったけれど私の心にはしっかりと刻まれた。
皆の想いが私の中ではじけ飛ぶ。
そう……あの日。
私あのピクニックで忌々しい出来事で得たものがあったの。
それまで劣等感の塊だった。
醜女。
可愛くない。
それが私の重荷。
でもあの侍女に罵られて私はその劣等感から解放された。
そうどうして?
どうしてそこまで言われないといけないの?
私!!
そう私は私でいいのって!!
うふっ~~又キュー商会の皆に会いたいわ。
ラファイエルとヨハンネを祝わないといけないし……。
でも……まずはマチルダの出産を優先にしないと。
さあ~~~当日まで練らないと絶対にストルーエンセに気づかれないようにしないと……。
次はマチルダの出産が待ち受ける。
王妃の寝室で無事に王妃として出産出来るのか?
次話へ続きます。




