ストルーエンセの改革の弊害 1971年春 不安と不満の渦Ⅱ
強盗に入られたキュー商会だったがアルベール【キャロンキュー実はデンマーク王妃キャロライン・マチルダ】は彼らを救済する策に出る。
王妃はどう立ち回るのか??
キュー商会での出来事の後、私はまだ霧のかかった早朝に一旦密かに宮殿に戻ったの。
移動はキュー商会と宮殿のキュー庭園を結ぶ空間移動装置を使ってね。
でもね……。
その時は気がつかなかったけれどどうやら………。
霧の間に私の姿を見た人影があったみたいなの。
支配人には手紙を置いて、彼らを雇用する意思と人員配置の相談、そして雇用条件を指示しておいたわ。
とりあえずはなんとかなりそう。
でもこういう事はこれからありそうだし。
なにかいい手はないかしら?
いきなりは浮かばないけど……。
絶対にこのままではダメなんじゃない?
だって解雇は彼これからもしそうだし、今度どこかで起こったら??
毎回は助けられないし…!
ひとまず窃盗=死刑を☓しないと……。
気はすすまないけどやるっきゃないわね。
よし!
身体を拭いてさっはりしてから!!
しっかり寝て明日きめるわよ〜。
**********************************************
ストルーエンセが政権を握ってから宮廷のエチケットは随分省略化されたわ。
王家の食事の公開もそうね。
貴族達に食べる姿を見せるのは正直きつかったわ。
私はイギリスの王族だったけどほとんど王宮には行った事はなかったし、そんな儀式はなかったもの。
初めは食事が喉を通っても味はしなかった。
早くなくなればいいのにと思っていたからほっとしているわ。
普段は朝食は一人でいただくけれど、今回はストルーエンセに頼み込んで王と私そしてストルーエンセらの閣僚の数名をを交えて朝食会にしてもらった。
今ダイニングに勢揃いしているわ。
ランツァウ伯爵、そして私の嫌いなストルーエンセの友人ブライト、ストルーエンセに夫。
全員突然朝食会なんてどういう?
って感じで怪訝そうにお互いの顔を見合っている。
「今日皆様に集まってもらったのは。
私の意見をぜひ内政に取り上げてほしいからです。
わが国の法律では窃盗による処刑は可能です。
勿論犯罪ではありますので、処罰は必要です。
しかしながら処刑も可能など。
重すぎはしませんか?
現政権は啓蒙主義を理想とすると聞いております。
にも関わらずこれを放置するのはあまりに非道ではありませんか?
貧困層では窃盗を日常行うしか生きるすべがない人々、そうでなくてもせざるを得ない者もいます。
国家の温情を今こそ見せる時ではありませんか?
窃盗による処刑を即刻廃止にすべきです」
私は強い眼差しを王へと向けて力ずよく言葉を放った。
王はあまりの勢いに視線を外し俯きながらストルーエンセの顔色を窺った。
「王妃陛下。
確かに窃盗により処刑は可能でございますが。
あくまで悪質な場合の最終判決でございます。
滅多にある事ではございません」
ブラントンが政治の何たるかを知らない王妃だと言わんばかりの飽きれ少し馬鹿にしたように言い放った。
「あるないではありません。
そうなるかもしれないという恐怖心を植え付け、統治する手法が問題なのですわ」
「王妃陛下。
あまりに唐突なお話です。
陛下が何故そのように思われたのはどのような理由があるのでしょうか?」
ランツァウ伯爵が憮然とした表情で私に問う。
「………んんっ……実は私の懇意にしているブルジョア階級のご婦人宅に住み込みの使用人がいます。
彼女の兄は元々生真面目で良く働く者だったそうですが。
職場の同僚にそそのかされて誘いに乗ってギャンブルにのめり込んだそうです。
給料だけでなく借金もつぎ込んで遂には家族も出ていって、やけになってある高位貴族の屋敷に侵入して何度か窃盗を行った。
そんなある日に屋敷に忍び込んだところを取り押さえられ、主人から暴行を受けた後警察に引き渡して重罰にしてもらうと言われたそうです。
彼は命かながらなんとか深夜に屋敷を抜け出し妹の所に転がりこんだそうです」
「まあ~~よくある話ですな。
あくまで私情な思惑ですな」
ブラントンは腕を組み身体を背もたれに深くもたれかけながら王妃たる公の者が私の為に行動するのだといやみったらしく言った。
「問題はこれがブルジョア階級の方の耳に届いた事です。
彼女は特に重宝していた使用人をほおっておけずに、慈善活動で会ったバザーの際に相談を持ち掛けられましたの。
よくある話かもしれませんが。
婦人は大変心を痛めは今の政権に賛同しているのに。
どうにかして助けられないかとおっしゃるのです」
「………王妃陛下。
いちいち庶民のお涙話を真剣に聞き、同情して政策をしていけばあらゆる願いを叶えなくてはいけなくなりますよ!」
ランツァウ伯爵も少し怒りに満ちた口調で答える。
「民衆に寄り添った政府こそ啓蒙主義に相応しい国家なのではありませんか?
それとも友愛の精神と人道への尊重は書籍の中だけとおっしゃるのかしら?
私も引き下がりませんわ。
命がかかっているんですから!!
「王妃陛下の仰る事もまた正義で尊い考えでございます。
ただ我らも目下早急に行わないといけない案件がめじろ押しでして。」
ブラントも失礼な言葉使いを止めようとしない。
ほんとう失礼な男!!
「順番がなんだというのです!
人の命と尊厳を無視して国策優先など。
本末転倒ですわ」
ここでずっと瞳を閉じて腕組をしながら静かに聞いていたストルーエンセの口が開く。
「皆様。
王妃陛下のおっしゃる事ももっともです。
確かに早急な案件かもしれませんが。
啓蒙主義の理想は理性による国家運営です。
軽犯罪における処刑の判決は果して理性の刑と言えるでしょうか?
正に改める様に事務方に指示いたしましょう。
王妃陛下御心配なさらずに。
それでよろしゅうございますね国王陛下」
「う……う~ん……。
ストルーエンセ…しんどいから……部屋に戻るよ」
そういえば夫の体調は益々悪そう。
顔色は青白いし、目も焦点があっていない。
どことなくソワソワしているし。
まあ………いいか。
「陛下。
おかげんの悪い頃にわずわせ申し訳ありません。
お部屋にお戻りくださいませ。
後は私が書をしたため用意いたしますので王印をお願い致します」
「うん……」
ああ~相変わらず……無機質な王ね。
「ストルーエンセ殿ありがとう。
私の顔をたちますわ」
いかにも作り笑顔をストレートエンセに向けた。
自分でもかなり作り笑顔でドン引きしちゃうけど。
「私も陛下のお心を察せずに申し訳ありません」
とりあえず作戦は成功。
どうしてストレートエンセが私の意見に同意したのかはさておき。
これで行動に出られるのだからよしとしよう!!
朝食会で窃盗の処刑を廃止する事に成功した王妃。
そしてストルーエンセの改革に影がさしかかっていくのか?
次回以降王妃は変装モード炸裂に!




