ストルーエンセの改革の始まり 1971年春 傷害事件Ⅱ
ラファイエルに誘われて人気のティーサロンに来た王妃。
ラファイエルは何を王妃に語るのか?
しかもよきせぬ事が!?
ふぁっ〜。
うっとりするような香りが鼻をつく。
サロンラ・ミューズの中にはいり最初に気づく甘い香りはそうサンジェルマン伯爵が調合してくれた催眠術が作動する効果のある香りだ。
今日も私はこの同じ香りの香水をつけている。
だから誰が見ては私はキュー夫人。
内装はラ・ミューズという名に相応しい内装のサロンは落ち着いた紺色の壁紙に所々金色の星座が描かれている。
美しい大理石の彫刻は全てギリシャ神話の女神達の銅像。
天井はガラス張りになっていて昼間はさんさんと太陽の光が差し込んで神々しい空間を演出している。
調度品はマホガニーの重厚で唐草模様の木彫りが美しい。
背もたれやクッションも紺色で品がありセンスの良さが垣間見える。
「ようこそお越しくださいました。
当サロンの女主人グディールと申します。
キャロン様にお目にかかり、とても光栄でございます」
「素敵なサロンですわ。
大人気なのがうなずけます」
「ありがとうございます」
「グディール夫人。
席に案内いただけますか?」
「えぇ。
ラファイエル殿。
特別席をご用意いたしました。
ゆっくりとおくつろぎくださいませ」
優雅に私達の前を歩いて誘導してくれた先にはヴェールで隠された小部屋があった。
ホールはかなり間隔を空けてテーブルを配置していたけれと、こちらは空間としては繋がっているので半個室の作りをしている。
中に入ろうとした時だ。
人影がすっとしたかと思ったと同時に私の右腕に軽く衝撃を感じた。
反射的にその方を見ると足早に通り過ぎた男の姿が見えた。
着ている服装はいかにもブルジョア階級の紳士の装いで、この高級ティーサロンに相応しい人物。
「失礼」
男の顔色は青白くどこか心もとない様子でやや落ち着きがなかったように見えたけれど気にするほどではなかった。
「いいえ」
すぐに男は奥のソファーに腰をかけて手にした新聞を読み始めていた。
「さあ参りましょうキュー夫人」
「ええ」
私は再び小部屋に入る。
その部屋はホールの雰囲気を楽しめる上にある程度のプライバシーも守れヴェールを上げれはサロンを見渡せる位置。
小さな六角形の空間に花柄模様の白い壁紙に調度品は木製で白く塗られ、背もたれには美しい花柄の刺繍が全面に施されている。
「素敵な空間ね。
フロアーが見渡せてプライバシーも守られている。
うちの参考になりますわ
色々配慮されていて素敵です。
グディール夫人」
「ありがとうございます。
ではティーセットをご用意いたします」
すぐに給仕が現れたテーブルにティーセットを静かに置いて行く。
私達は椅子に腰掛けて紅茶が出来上がるその時を待った。
ゆっくりと給仕は熱湯をポットに注ぐ。
立ち上がる湯気と共にありえないほどの豊かな香りが立ち始めた。
「ラファイエル殿!
なんの香りですか?
芳醇な嗅いだ事のない強烈な甘い香り。
素晴らしいです」
「キャロン様。
サンジェルマン伯爵閣下のご協力の元最新の蒸留機器を開発しました。
天然の花々やスパイスを蒸留して香料を造りだして紅茶に移してフレイバーティーを提供いこうと思っています。
なので紅茶は明から取り寄せた色と味わいは濃く、あえて香りはひかえめな葉を厳選して輸入しました。
フランスから輸入して試飲中です。
お気に召されましたでしょうか?」
「ええ……。
これはそうねぇ~~~。
いろんな花の香りしかも異国。
そうねイメージでは南国の香りがするわ」
給仕はポットからティーカップに紅茶を溢れ終えると一礼して小部屋から退出していく。
ラファイエルと二人。
あのマチルダの妊娠がわかってサンジェルマン伯爵と一緒にいた時以来だから少し緊張する。
「陛下。
サンジェルマン伯爵の判断とはいえ。
承知していない者に重大な秘密を知られ困惑されていらっしゃると思われます。
どんな計画も小さな綻びから発覚し、破綻致すもの。
陛下の懸念は十分に理解いたしております」
「ええ。
私は今とても不安です。
真実を知る人間は最小限であるべきと思っています。」
「おっしゃる通りでございます。
しかしその最小限の協力者であるべきという考えも危険な側面もございます。
協力者が少なすぎて、対策が講じられず。
それも破綻する原因となるでしょう。
私は陛下の懸念を取り除き陛下の望みを叶えたいと思っております」
「……………」
「陛下。
今信頼してほしいとは申しません。
これからの私を見ていてほしいのです。
それでも陛下が私を信頼出来ないのでしたら。
私はこの命と引き換えに陛下に安心させる為の覚悟がございます。」
「………」
「キャロライン・マチルダ王妃陛下の為に。
全てを投げ出す覚悟を」
「…分からないわ。
ラファイエル。
貴方の真意が……。
私とストルーエンセとの関係はご存知でしょう。
宮廷では隠れた真実でしたが。
今は宮廷に出入りしていない貴族でも噂になっているとか。
貴方の耳にも入っているはず」
「…皆噂話です。
ただ私にはそのようになるよう陛下が放置されているように感じます。
謁見の際にも陛下の彼を見る瞳には黒い霧がかかったような。
信用されていないように私には見えました。
あの表情は愛する者に向けられたものとは違うと断言出来ます。
私には陛下が何か演技の様に感じてならないのです」
「……。
そんな……そんな事はありませんわ。
……私は彼を愛しているの」
「いいえ陛下」
「………貴方は……なんの意図で?」
「陛下。
私は陛下の本当の望の為に。
意図は陛下の望のみでございます」
「私の意思……わ…わた………」
「キャ~~~~~~~~~~~~!」
「わぁ~~~~~~~~~~~~~!!」
突然聞こえた悲鳴にその方向へ視線を向けた。
突然の叫び声、サロンで何が起こったのか?
次回緊迫が。




