王宮の秘め事Ⅲ キャロライン・マチルダとラファイエル
突然の侍女マチルダの妊娠がサンジェルマン伯爵によって宣言されて王妃は頭が真っ白に。
さてこれからどうする??どうなる??
話は戻って、マチルダが眠っている間に隠し部屋にサンジェルマン伯爵とラファイエルを待たせていたの。
まだ彼らには残ってもらわないといけなくなるかもって思ったから。
この部屋は夫の寝室へと続く通路に繋がっている。
使った事もなく、ほとんど誰からもわすれられていた部屋よ。
二人を隠すのに都合がよかった。
目が覚めたマチルダを部屋に残し、私は隠し部屋の扉の前で大きく深呼吸をする。
これから大胆でいながら慎重に起こなわなければならない事をお願いしないといけない。
バレたら彼らの命はないだろう。
しかも残忍な方法で処刑されるのは目に見えていたから…そもそも相談なんて………。
「御2人共ありがとう。
助かりました」
「危機一髪っといった所でしたな」
サンジェルマン伯爵は憎らしいほどの不敵な微笑みを浮かべて私をまっすぐ見つめている。まるで私がこれから話す内容を知っているかのようにね。
「本当に。
他の人に知らせてもし……妊娠がわかってしまっていたら……。
宮廷のスキャンダルとして話は一人歩きし
たでしょう」
私はこの言葉を口にしながら想像しただけでぞっとする。
寵愛する独身の侍女が妊娠したなど宮廷は噂話で持ち切りになり、どこから相手がストルーエンセだと知られればマチルダは宮廷で針の筵。
乱れきった風紀のデンマークでは宮廷の奉仕する者が独身者が妊娠する事は避難の的になってマチルダと監督責任のある女官長、そして私は窮地に陥るもの。
「ええ。これもラファイエルの的確な判断で助かりました」
サンジェルマン伯爵はラファイエルの肩を抱きながら、子供を褒める様にあの時の行動を褒めた。
「いえ……。
王妃陛下のお役に立てて光栄です。
これから陛下さえよろしければお役に立てたいと存じます」
一方のラファイエルは冷静で恐縮した表情をしながら、心配そうな顔を私に向けている。
その視線はまるで恋人に向けられているように感じてドキドキしてきた。
「……王妃陛下……実は」
「サンジェルマン伯爵?
どうしました?」
「診断後に私だけでは陛下のお助けにならないと。
彼に陛下の秘密をお話いたしました。
陛下がデンマークを離れたがっている事。
そしてマチルダが陛下の影武者になっている事を」
「えっ??……………」
伯爵流石にそれは軽率ではありませんか??
「陛下私はこの事は一切他言いたしませんし。
陛下のお助けしたいと……いえ……。
このラファイエル。
この命を賭けてお助けいたします」
「………陛下。
私伯爵サンジェルマン。
いえ…。
私共は陛下と共に行動する事をお約束いたします。
何故なら全て陛下は本当の姿を取り戻したいとお考えでいらっしゃいます。
かくゆう私もそう願いながらも時代と環境に流され続け翻弄した者でございます。
陛下。
陛下の望みを教えてくださいませ。
全ては陛下の為に」
そういえばある書物に記述していたわ。
サンジェルマン伯爵は実はとある有力貴族の子息で政変に敗れて失踪してヨーロッパを流浪していたと。
「王妃陛下。
全ては御身の為に」
「……ラファイエル?
私は貴方を謁見の際に初めて会ったのですよ。
何故こんなに尽くしてくれるのかしら?
貴方は外国人で。
この国とは縁もゆかりもないのに。
命さえ投げ出さなくなるかもしれないの
よ……。
私は貴方に見返りを渡せないわ。
後悔も裏切りもして欲しくないの。
したくもないわ。
だから黙ってくれるだけでいいのよ」
私は正直戸惑っている。
確かにアルベールとして彼と接してきてすごく誠実で人格者で人として尊敬出来る。
でも信じきっていいのかしら?
裏切られたら?
私はまたひどく落ち込むだろう。
それが怖いのかもしれない。
「見返りなど考えてもいませんでした。
勿論後悔も裏切りなど決していたしませんし。陛下にもさせたりはいたしません。
ただ私の勝手な罪滅ぼしの代わりと思ってくださいませ。
若い頃清純な女性を愚かにも傷つけた事にも気がつかず。
過ちを重ねてしまいました。
私のこの申し出は神の導きによる小さな贖
罪でございます。
かと言ってその罪が許されたる事はありま
せんが……。
陛下に真心を尽くしお支えしたいのです。
不幸せな貴人の笑顔が見ていたいというの
は私の願いですから」
「……罪滅ぼし?
…笑顔?」
罪滅ぼし?
彼ほどの人がそんな理不尽なめにあわせたなんて信じられない。
「はい。
なので陛下はお気にしないでくださいませ」
「気になります!!」
「いえ……。
その必要はございません。
全ては神の思し召し。
その全てを捧げる為に神の意思のままに。
そのために命など惜しくはございません。
どのような事になっても。
たとえ拷問にあったとしても。
陛下の御心に逆らう事はございません」
変な気分。
初めて会った相手にしかも外国の王妃にそこまで尽くすのか?
いえ自虐的すらある。
でも私は今断りや彼を否定する事はなんとなく出来きない。
どうしてか?
断ればいいだけなのに。
黙って何もしないでほしいとだけ頼めばいいだけなのに……。
なんだかそれを口にする事が出来なかったの。
「わかりました。
何かあったら伯爵。
彼を逃がしてくださいね」
私は彼の申し出を受け入れた。
「かしこまりました陛下。
私に不可能はございません。」
「ではこれからの計画を皆で話し合いましょう」
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深夜まで秘密の部屋でこの7か月間の計画を念入りに立てた。
ある程度の道筋が決まりサンジェルマン伯爵とラファイエルは王宮を脱出した。
キュー庭園に造られた瞬間移動装置の発動で難なく帰途についたと手紙にあったわ。
最後に私には聞かせられないであろう謎の言葉を残して。
「ラファイエル殿いや…ラトゥール殿王妃陛下にいつ真実をお伝えするのですか?」
「時期がくれば……。その日が来ることを覚悟しておりますが……。
恐ろしいと思う反面……。
早く来てほしいと思う事もございます。
そう彼女の願いが叶った時に。
全てをお話いたしたいと思います」
「……私にはよくわからないが……。
君が報われる事を祈るとしよう」
「…………」
まるで夜の闇のような表情を浮かべたラファイエルを伯爵はじっと眺めている。
人の思いとは複雑で思うようにならないものだと。




