王宮の秘め事Ⅱ キャロライン・マチルダとマチルダⅤ
突然失神した侍女マチルダを助けるためにキャロライン・マチルダ王妃は庭園に向う途中にラファイエルと遭遇する。
ラファイエルはサンジェルマン伯爵を呼び出し、王妃の私室でマチルダを診断すると。ある事実を告げられた。
頭の中がガンガンする!
サンジェルマン伯爵の言葉が私の脳内に鐘の音が何度も何度も絶え間なく響く。
妊娠!?
マチルダの妊娠!?
想定外だわ……。
実はストルーエンセが前世の恋人フィリップだと知った時には、彼への愛情は塵一つ残ってない事に気がついていたわ。
前世では勿論愛していた。
そう彼がいなくなったら私も生きてはいけないって断言出来るほど。
だけど転生していろんな資料を読んで、冷静になって私なりにあの愛情のなんたるか結論は出ていた。
そう彼にとって私は高貴な権力者から奪えた勲章のような存在だったって。
不幸な結婚で耐えられなくて差し伸ばされた手をついつい掴んで泥沼に陥った。
今世では絶対に冷静でいるって決めたのよ。
ストルーエンセとの不倫関係も自分の評判をあえて落とす様に工作したわ。
ふしだらな王妃を演じたの。
だっていずれ消える王妃だもの。
評判が悪い方がすぐに忘れてくれるし、私が居なくなればフレデリックの治世には母后の影響はないはずたもの。
でも……マチルダが妊娠していたなんて…………。
実はストルーエンセと関係すると決意した時に自分がみがわりになる!ってマチルダが泣いて頼んできた。
彼の夜の相手を自分がすると言ってきかなかった。
初めは反対して断ったわ。
だって大切な侍女。
いいえ姉妹同然に育ったんだもの。
っでも泣いて懇願されて、押し負けちゃったの。
最初は王妃たる私が愛人を囲い醜聞の的になったとして最後の一線を越えさせないための自己犠牲?
でもよくよく考えたら彼が宮廷に現れた時、そして彼女をあの男を見る目は確かに恋する女の表情だったものね。
結局了承したの。
彼女のストルーエンセを思う気持ちに反対出来なかった。
私はすぐにサンジェルマン伯爵に頼んで避妊薬を作ってもらって手渡した。
必ず飲むようにきつく伝えたのに!
この子は飲まなかったのね……。
好きな男性の子供を否定出来なかったって事ね。
……もし私がまだフィリップに未練があったら……。
そう思うと憐れでしかたない……。
私が出来る事を精一杯してあげよう。
ぎゅっとマチルダの手を握った。
私はまだ目覚めないマチルダにそう誓った。
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マチルダが意識を取り戻したのは翌朝だった。
私は体調不良を理由に晩餐会を欠席したわ。
ストルーエンセは怪訝そうだったけれど、女官長に伝言して面会は断った。
不機嫌そうに帰っていったらしいけど、まぁとりあえず今会う訳にはいかないから。
「おう…王女様?」
「マチルダ!
目を覚ましたのね」
「はい。
私どうしたのかしら?」
「まずは水を飲みましょう」
そう言って寝台のサイドテーブルに置かせたグラスを手渡した。
ゆっくりとそれを口に運ぶ。
マチルダのふっと吐く息がした。
「マチルダ。
よく聞いてちょうだいな。
あのね……貴方はね……妊娠しているのよ」
マチルダはぽかんとした表情で瞳を一杯広げて私をみている。
「……?!」
「……お…おう」
「マチルダ。
言わなくていいわ。
大丈夫私がなんとかするわ。
そう…!
いいわね」
「王女様……。
ごめんなさい。
申し訳ありません…。
あんなに言われてたのに!!
それに……恋人を…」
あっそっか。
マチルダは本当に私がストルーエンセを愛しているからって思っているのよね。
「マチルダ。
貴女と私は一心同体のような者よ。
同じ人を愛したのは。
いいの。
マチルダの子は私の子供。
いい私の言う事をしっかり聞いて。
いい〜。
絶対にお腹の子は守ってみせるわ。
その為にはマチルダに我慢してもらわない
といけないの」
「産んでいいのですか?」
「勿論よマチルダ」
「ありがとうございます陛下。
申し訳ありません…!
決してお二人の邪魔になりませんから!
私が欲張ったせいで!
王妃陛下の愛する方を…お許しください陛下!!」
いやいや全然いいのよ。
私は今世彼を愛している訳ではない。
マチルダ逆に御免なさいね。
本心では彼とかかわりたくないし、あんな男をマチルダに近づけたくないわ。
でも恋心はどうしようもないものよくわかるわマチルダ。
だから負い目に感じる事はないのよ。
「なんか変な感じね。
マチルダに敬称を言われると………。
大丈夫よ。
2人とも私の大切な者達ですもの」
「王女様〜〜」
「いい。
この子は私の子供として育てるわ。
デンマーク王女として誕生するの。
だから貴方と親子の名乗りはさせられないわ。
辛いでしょうけど。
御免なさいね」
「王女様!!
そんな神をも恐れない行動!!
ばれたら!!」
「いい!
マチルダ!
私はこの国の王妃よ!!
その王妃の産む子は全て国王の子供!」
「……でも真実が知れたら……」
「いい。
確かに最近秘密裏に宮廷で私とストレートエンセの恋仲は極秘に知られているわ。
でもね!
私にはとっておきの裏技があるのよ!
まさに白魔法がね」
「………白……魔法??」
「まずは貴方は身体を大切にする事。
お腹が目立つ前に体調不良で静養に向かわせるわ。
そして宮廷に呼び戻すから!」
「王女様。
そんな事??」
「大丈夫よ。
任せておいて!!」
「王女様~~~~~」
史実ではキャロライン・マチルダ王妃の2番目の子供はストルーエンセとの子供と当時知られています。王女ルイーズ・アウグステの肖像画はストルーエンセの面影を色濃く引き継いでいるように思えます。
当時はそう信じられていました。
貴族達の不倫は日所茶飯事でしたが、王妃の不倫、ましてや非嫡出子をもうけるなどスキャンダルでしかありませんでした。




