王宮での秘め事Ⅱ キャロライン・マチルダとマチルダⅣ
「はぁ〜……ははっ……〜〜」
息が上がりそうになるのを必死でその駆ける足を止める事は出来ない。
今日は今夜の晩餐会の用意で侍女は勿論侍従や召使い、下女に至るまで見当たらない。
こんなに私のプライベートエリアで声をかけられない事はかつてない。
私は三階の自室から螺旋階段を下り、1階へと降りスカートをたくしあげて中庭に出る。
この時間なら庭園の花を摘みに庭師がいるのを思いついたから。
手入れされた庭園にある温室へと走る。
まだ冬の季節、針葉樹が濃い緑色を染めてはいるものの鮮やかな花々は咲いていない。
ただ温室には季節に関係なく、色とりどりの花々が咲いている。
この時間なら庭師が宴会用の花を用意する為にいる可能性が高いから。
アカシアの並木道を抜けた先にガラス張りの円柱の建物がドンドン近づく、息を切らせてなんとか扉のドアノブを回して入る。
むせるような花の香りの先に、人知れず咲く色とりどりの百合が咲き乱れていた。
「誰か?
誰かいないのですか?
病人が!!」
冬の日差しが高いガラスの天井から反射し、私の声を更に広げてくれている。
けれど私の叫びに答える声はしない。
私の声を反響させるだけ。
何故??
この間にマチルダの命に関わったらどうしよう。
心の奥底で最悪の事態が何度も木霊する。
マチルダがいなくなるかもしれない。
どうしよう!
どうしたら………。
「誰か!!」
もうすがるしかない。
お願い!誰か!!
温室の更に奥へと足を進める。
この温室は植えている花によってエリアが区切られていて、百合の花園を抜けると次の扉を開けると薔薇の花園が現れる。
「誰か!
誰か?
助けて!!」
答えない声に心が砕けそうになったその時、右手の南国から取り寄せたという見たことのない緑の葉が揺れたと思うと人影が現れる。
「あっ!」
その姿を見た時にあまりの驚きに時が止まった。
「……お…王……王妃陛下」
私を呼ぶ声は目の前に現れた人はラファイエル!
思わず顔を背けて手で顔を覆い隠す。
「王妃陛下。
謁見賜りましたラファイエルにございます。
人をお呼びだと参上いたしました。
何かございましたか?」
落ち着いた心地よい低い声。
ようやく私は冷静になれたわ。
そう今は王妃キャロライン・マチルダ。
アルベールではないわ。
あっ!
「ラファイエル。
助けてちょうだい。
私の侍女が倒れたの。
医師を。医師を呼んで!」
ラファイエルは目を見開いた後、怪訝そうな表情をして暫く沈黙してしまった。
嫌な沈黙に私は落胆の溜息を漏らしてしまった。
私がやはりいけないと願いを取り下げようと口が開くより早くラファイエルがほほえみながら話し始める。
「王妃陛下。
丁度数名の小間使を同行させています。
その者を王妃陛下の部屋へ向かわせます。
陛下は衛兵に通行を許可するように手配くださいませ。
私は取り急ぎ医師を連れてまいります。
時間はかかりません。
お部屋へお戻りくださいませ」
そう言い残して、足早に温室を出ていってしまった。
私は呆気にとられ暫く呆然としていたけど、はっとして気を取り直し部屋へと戻った。
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「確かによ。
確かに早くとはラファイエルは言ったけど…」
ぼそりと呟く。
だってさっき。
慌てて衛兵に通行許可を告げて温室から帰って来て数分でメイド達が来て、慣れた様子でマチルダを彼女の部屋に運んで10分も立たないうちにラファイエルとなんとサンジェルマン伯爵が現れたの。
びっくりする私の横で伯爵はテキパキとマチルダを往診していたわ。
脈拍、瞳孔、心拍を測ってまさに医師の姿にしか見えない。
あっ!!
そういえばキュー庭園に移動空間の出入り口を造ったって言っていたわね。
逃亡計画が頓挫してすっかり忘れていたわ。
「あの…伯爵。
マチルダの容体は?」
サンジェルマン伯爵は耳に当てた聴診器を外し、困ったような表情をして話し始めた言葉に衝撃を受ける。
「王妃陛下。
彼女は妊娠しています。
そうですね2ヶ月といった頃でしょう。
私は専門外なので、信頼出来る者を紹介しましょう。
これは忙しくなりますね」
頭は真っ白




