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王宮での秘め事Ⅱ キャロライン・マチルダとマチルダⅡ

王妃の謁見の為に王宮の控えの間にいる。

アルベールとラファイエル。

アルベールはどう切り抜けるのか?

コペンハーゲンで今や時の商会と言えど、自国の王妃に謁見出来るなど宮廷の重鎮の推薦がないと経験出来ない名誉だったの。


でもそこは今時の権力者の一人になったストルーエンセ請願審議官の鶴の一声で国王は大きく頷いたという。

今日はラファイエルと同伴で今王妃のプライベートエリアの手前にある謁見の控えの間にいる。


私が私に会いに来た。

とちょっと??な展開に変な感じで、ラファイエルとの会話もなんだかしずらいし。

ラファイエルも心なしか緊張して、何度もタイを絞めなおしては落ち着きがない。

こんな彼を目にするのは初めて思わず笑いがこみ上げるけどなんとかすんでで抑え込んだ。


「王宮なんて本当に場違いだよね」

神妙な面持ちで落ち着かないラファイエの顔を覗き込む様に笑いながらちゃかすように話しかけた。

彼の瞳には狼狽える様子がありありとみてとれた。


ラファイエルは緊張からかやや強張った顔を見せながらなんとか無理をしながら笑って答えてくれた。


「本当に……王妃陛下にこんな形でお会いするなんて……なんだか……。

 いや……。

 どうなるのか……」

緊張で声が震えている。

こんな姿のラファイエルは初めて見た。


「へぇ~~君も緊張するんだね。

 謁見するだけじゃないか。

 確かに雲の上の方だけど。

 僕達をとって食おうとする訳じゃないし」

私はさりげなく彼の肩を抱いてちゃらけてみせる。


「…それ……。

 きん…緊張……する…」


すると彼は少し恥ずかしそうに、身を小さくまるめながら私の手をさりげなく肩から降ろす。


「だってこの間のお披露目式でも堂々として僕の方が緊張していたのにさあ~」


「そうだったかな?

 緊張していたよ。

 でも君の前でアタフタ出来ないからね」


「そうなの?

 ありがとう」


「……てっいうか君は。

 どうしてそんなに落ち着いていられるん

 だ?…」


「えっ??

 落ち着いているって??」


「あぁ~~すごく!!」


「いや……。

 緊張しているよ。

 本当…」


「そんなふうに見えないだが!」


「え??

 ていうかラファイエルこそ君らしくないよ。

 少し冷静に……」


「冷静??

 そんなの無理さ!!

 だって………」


「だって??」


「ああ~~~もういい!!」


「えぇ~~~~~」


ドアノブを廻す音がして扉が甲高い音を立てて開く。


「王妃陛下のお呼び出しです。

 どうぞ謁見の間へお越しください」


ラファイエルの言葉に少し引っ掛かったけれど、僕達は大きく頷いて侍従の後について行き部屋を後にした。


***********************************************

挿絵(By みてみん)

「よく来てくださったわ。

 キャロライン・マチルダです。

 アルベール殿、ラファイエル殿。

 貴方方が生み出す利益でデンマークでの経済効果は計り知れないほど恩恵を受けていると聞いています。

 お話出来て嬉しく思います」


王妃の謁見の間に通された私達に王妃が労いの言葉を掛けてくれた。

しかし初めての経験よ…。

そりゃそうよね……。

だって私がデンマーク王妃だもの。

自分に自分を労うなんて??だわ。


あっ!

でもその時の訪問者は決まって言った台詞を思い出した。


「敬愛なる我が王妃陛下。

 王妃陛下にご挨拶申し上げます。

 お目にかかれ誠に誉れでございます。

 ありがとうございます。

 若輩者のこれといった身分もない私達をお招きくださり、この上ない名誉にございま

 す。

 今は静養中の姉オーナーのキャロンも喜んでおり、益々貢献したいと手紙に知らせてまいりました。

 幾久しくデンマーク王室の栄を願っております」


「心強い言葉です。

 それと今日は顔にできものが出来てね。

 腫れてしまっているの。

 ヴェールを被って、素顔をおみせ出来なくてごめんなさいね」


確かに薄いベージュのレース柄のヴェールを被った王妃はそれはそれで神秘さが増している。


「いえ。

 お大事になさってくださいませ」


「ありがとう。

 請願審議官殿。

 お二人を連れて来てくれて感謝します」

隣のストルーエンセに話しかけた。


「もったいないお言葉でございます」

いかにも対外的な敬意を込めた口調で微笑む。

「最近デンマーク宮廷もつまらない噂話ばかり。

 そういえば気球という乗り物を発明したとか?

 どういう乗り物かしら?

 興味があるわ」


「王妃陛下のお耳にも入ってしまいましたか?

 あれは…です……ね……」


この後私は私にキュー商会でのお披露目式の話を歌でも謳うかのように軽やかに話続けた。

だって楽しくて仕方なかったもの。

ドンドン話したい事は山程あって、言葉はスラスラ出てくる。


隣のラファイエルは目を丸くして呆気にとられたように黙っている。


そんな楽しい会話は突然終わりを告げた。


王妃の謁見の間の扉がなんの前触れもなく、大きな音を立てて突然開いたからだ。


「ストルーエンセ!

 ここにいたのか?」


突然現れたのはそう夫のクリスチャンⅦ世だ。

最近会っていなかったけど、更に顔色が悪そう。青白いし唇は紫がかっている。

どことなくハラハラするくらいテンションが高そうで、飛び跳ねそうな勢いで決壊したダム湖の水が一気に流れ出すような大きな声ね。

フィリ…いやストルーエンセは少し困った顔をした後、すぐに笑みを讃えて王に礼する仕草をみせた。


中々優雅に礼をするわ。


「国王陛下。

 ご気分はいかがですか?」

ストルーエンセは柔らかな口調で子供に言い聞かせるように声をかけた。


「昨日よりまし」


「国王陛下。

 王妃陛下にお言葉を」


「王妃。

 久しいな。

 ストルーエンセと仲良くな。

 私は嬉しい!!

 そうだストルーエンセ!

 朗報だよ!!

 私は決めたんだ!

 君のために!

 大臣と請願審議官と顧問官を全員解任するよ!

 決めた!

 決めたよ~~~~」


我が夫の言動に………途方に暮れてしまう。

今は一商人だから。

知らないふりをしていればいいけど………。

本心は引きちぎられそうで心が痛い。

現実と空想と妄想と彼の中で荒れ狂る嵐を目にして物悲しい気分になる。


ストレートエンセはあたふたして場を繕うとして夫に近寄り優しく囁く。

さすが宮廷医師。

夫の神経を逆なでしないようにしている。


「国王陛下そのお話はまたこの次に。

 まずはあちらに参りましょう。

 お薬の時間ですし。

安静にしなくてはいけません」


「うん。

 わかったよストレートエンセ。

 じゃあな……王妃」

子供の様な口調でそっけなく言う夫。


「王妃陛下もお疲れでいるご様子。

 次回またの機会に、貴公達にはこれからもデンマークの発展に貢献いただきたい。

請願審議官として是非お願いします」



「はい。

 ストレートエンセ請願審議官殿、ありがとうございました。

 それでは王妃陛下。

 ご健康を願っております。

 本日はありがとうございました。

 王妃陛下に神の恵みがございますように。

 失礼いたします」

ストルーエンセは夫の身体をささえながら、足早に部屋を出ていった。


私は最上級の敬意を示す為に深く王妃に頭を垂れた。

 「アルベール殿、ラファイエル殿。

 王宮の庭が美しいので立ち寄っていかれてください。

 侍従には伝えていますから」


ヴェールに隠された表情はわからなかったが王妃はコクリと頷いて微笑んでいるようにも見えた。


「ありがとうございます。

 では王妃陛下。

 本日はありがとうございました」


「ありがとうございます。

 では王妃陛下。

 本日はありがとうございました」


私達は王妃の謁見の間を退出した。


次回は驚きの展開へ。

一難さってまた一難です

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