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王宮での秘め事Ⅱ キャロライン・マチルダとマチルダ

キャロライン・マチルダ王妃の愛人ストルーエンセと王妃の次席女官長アイベンの密会。

それを覗き見していた人物が!

王妃の私室に最も遠い静かな奥の間の廊下に響き渡る足早に過ぎ去る足音。

荒い息使いと激しい鼓動で今にも失神しそうだが、倒れる訳にはいかなかった。

ひたすら王妃の私室に向かわないといけない!

あの淫ら情景を必死に打ち消すようにひたすら走る事だけだ。


挿絵(By みてみん)

王宮生活では絶対にしないいや出来ない行動だった。

けれど駆けださずにはいられなかった。

ようやく王妃の私室に近い王宮の間にたどり着いく。


ゼイゼイ息があがり、鼓動は口から出てしまわないかと思うくらいに波打っていた。

自分が聞いた事、見た事がどうしても現実だとは思えなかった。


嘘!!

私は何を見て何を聞いたの?

あれはなんだったの?

幻?

現実?

しかし頭の中に鮮明に浮かぶ光景は幻などでない事はすぐにわかる。


何故??

何故??

王妃様を最も愛し、一途に恋焦がれていたあの方ストルーエンセ様が。

アイベン次席女官長と口づけ……。

淫らな行為を?

どうしてあのアイベン次席女官長と?

どういう事なの?

お二人への信頼強い王妃様。

この事を王妃様が知ったらどんなにか悩まれるか……。

私はいったいどうしたらいいの!!


そう自問自答していたのはマチルダだ。


イギリスで幼い頃から傍にいたキャロライン・マチルダ王妃の最も身近な侍女だった。

一緒にデンマークの宮廷に入り、王妃に献身的に仕えていた。

その地位とは裏は何屈辱的な生活を過ごし針の(むしろ)で日々を共に経験した数少ない心を許していたと自他認める存在だと自負している。

王妃の為なら全てを投げ打つ忠誠心に満ち溢れている。

その王妃を愛し、また王妃も愛している彼が……。

そんな王妃の恋人が違うしかも王妃様の側近の次席女官長と関係していた。

現実で心は打ちのめされ、頭の中は激しい慟哭が嵐の様に吹きすさんでいる。


王妃に頼まれて用意していた香水のストックを取りに行くところだった。

いつもは召使に使いを出すだけの業務だったけれど、その日に限り召使は不在だった。

他に頼めそうな人物もおらず、一人で保管場所まで取りに行ったのだ。

そこは王宮の奥まった部屋で、たまたま通った普段は使用されていない部屋に話声が聞こえた。

思わずその会話を聞いてしまったのだ。

ふと覗くとそこにたのはストルーエンセとアイベンだった。


しかも王妃の秘密の恋人と王妃の次席女官長の二人が男女の仲だった。


王妃様に言うべきか?

でもきっと悲しむわ。

王妃様はストルーエンセ殿を愛しておられるもの。

それにストルーエンセ殿も本当に浮気されたのか?

いえ……あの方に限って………何か理由があるはずだわ。

そうよ!!

絶対にそう。

ストルーエンセの誠実さを疑わないマチルダは自分が見た光景を信じられたい。

打ち消すように理由があるはずだと自分自身に言い聞かせる。ので


あぁ~~~どうしたらいいの?

一体どうしたら!!

一体!!




***********************************************


「マチルダ?

 どうしたの?」


心ここにあらずと言わんばかりの遠い目をしたマチルダの顔を鏡越しに見つめて問う。


はっとした様子のマチルダはすぐにわかるくらいの作り笑顔を見せた。

その固い口を開く。


「なんでもありませんわ王妃様。

 それより今日はストルーエンセ殿が特にと願い出たちまたで評判のキュー商会の謁見日ですね。

 平民との謁見なんてまさに啓蒙主義的な思想ですね」


「あぁ~~そうね」

櫛で私の髪を()きながら、文章でも読むかのような感情のない口調で答えるマチルダに少し違和感を覚える。

長く一緒にいてるので彼女が何かに悩んでいるのはすぐにわかった。


「ねえ…。やっぱり何かあるわね。

 まっ!!

 まあ~落ち着いたら話をしましょう」


「本当になんにもありませんわ」


まさか王妃様にストルーエンセ殿とアイベン次席女官長の事をいう訳にはいかなかった。


そう何度も何度も考えて、時間を選んではストルーエンセ殿と会話する機会を伺っていた。

そんなある日、一人で国王の私室の近く廊下を歩く彼を見つけた。

居ても立ってもおられずに声をかけた。

すぐ人気のない王宮の中庭で死角になる場所へと誘った。


そして自分の見た光景を話始めた。

初めストルーエンセは驚いた様な顔をした後、視線をやや空に向けながら私の話を聞いていた。

その後考えこんだ様子を見せて、ため息をつき苦しそうに吐き出す様に話を始めた。

 

「あの時近くにいらして、知られたのですね。

 実は……アイベン殿は追放された元恋人ラトゥールを今でも慕っていて……。

 追放されたのは王妃陛下が庇ってくれなかったからだ。と王妃陛下を恨んでいて。

私に接近して王妃陛下に復讐をしようとしているのです。

 私は彼女が誘惑してきた時、彼女の身辺を調査し、その事実を知りました。

 彼女に接近したのは王妃陛下に危害を加えないようにするためです。

 心ない愛の行為に罪悪感はありますが。

 全ては王妃陛下の為と我慢しておりました。

 マチルダ殿が知ったからにはそろそろよい頃合いかもしれません。

 陛下に彼女を解任して宮廷から退出するようにお伝えください。

 後日私から王妃陛下にお伝えいたします」


「そうだったのね。

 ストルーエンセ殿が王妃様を裏切るなんて考えられませんでした。

 真実を知れてよかったです」


「不快な思いをさせてしまいました。

 いくら王妃陛下の為とはいえ。

 申し訳ございません」


「…いえ。

 ストルーエンセ殿の誠実さを疑い申し訳ないのは私です。

 お許しくださいませ」


「…ではお互い様という事にして」


「クスッ!

 はい。そのように」


「マチルダ殿。

 顔色が悪いです。

 よければこちらの薬を服用くださいませ。

 滋養強壮の薬で国王陛下もお飲みになっています。

 疲れが取れますよ」


「ありがとうございます。

 ストルーエンセ殿。」

私はほっとした。

ストルーエンセ殿からアイベン次席女官長を愛しといるからだ。

などと言われでもしたら、どうしたらいいか路頭に迷ってしまう。


とにかく、私が黙っていればいいわ。

謁見の後に王妃陛下にストルーエンセ殿に言われた様に恋人を掠奪しようとしていると伝えればいいもの。


「……それとマチルダ。

 謁見の時の事なのだけれど………」

ふっと王妃様の声が聞こえてはっとする。



王妃の謁見をやり過ごしたアルベール達に。

次回まさかの展開へ。

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