表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/67

王宮での秘め事 ストルーエンセとエリザベート・フォン・アイベン

サロンドゥキューのお披露目式でストルーエンセから王宮へ招待される事になったアルベール達。

その翌日王宮ではストルーエンセとアイベンが密会していた。

「ストルーエンセ殿。

 何故王妃とあの連中を会わせようとされたのです?

 意図がわかりかねます」


アイベンは昨日、サロンドゥキューのお披露目式でラファイエルを通じてストルーエンセをキュー商会のオーナー代理に紹介した。

しかしその場で、ストルーエンセが王妃の謁見を打診した事に不信感を募らせてそう問いかけたのだ。


「商売にしか興味がない奴ら。

 だが彼らの、今や新特権階級になりつつあるブルジョワ階級の支持は見逃せない。

 下手をすれば保守派達さえ彼らと接点を持とうとするだろう。

 その前に抑えておかないと。

 あのカリスマ性利用価値はある。

 本当はキャロン・キューを心柱に修めたかったが、いないならどうしようもないからな」

ストルーエンセは無機質な表情で巻煙草に火をつけふっとつまらなそうに息を吐いた。


「……っでも不思議です。

 サロンドゥキューの放火を指示されたのは貴方様だというのに。

 何故?それなら燃やす必要はなかったのでは?」


ぼそりと呟くように告げた言葉の後で極めて自然にそっとストルーエンセの肩に手を置いた。

意味ありげな微笑を湛え、彼の権力欲の塊の様な瞳を見つめる。


野心家な厚かましい平民の男。

心の底では軽蔑していたが、決してそれを表には見せやしない。

愛おしい者を見つめる偽物の眼差しを貴族特有の特技でいともたやすくやってみせる。


ストルーエンセはふっと吹き出し笑いをした後に答え始めた。


「あぁ~~あれか?

 本当はおもいのほか損失の規模がちいさかったんでね。

 サロンを無くした後、私が王に進言して助け舟を出す手配になっていたのだけど、その前に再建が始まってしまってね。

 彼らの実力を見くびりすぎたようだ。

 まあ~~君のおかげですんなりと彼らに接近出来たから渡りに船だったよ」


ストルーエンセは始めデンマーク宮廷の中で廷臣達を自由に動かす影の実力者という立場に満足していた。

しかし廷臣達の進言で国王を思う通りに操るうち、自分でもデンマークの政治改革を成し遂げたいという野心が止まらなくなっていった。


けれど自分がやりたいと願う改革はいくら廷臣達に申し出ても口を濁して無視し続けられる。

精々政治とはほぼ無関係な孤児院の開設くらい実現させるくらいしか出来ない。


自分のしたい改革を実現するには大臣達や顧問官、請願審議官は邪魔な存在でしかない。

どうすれば思う通りの政治が出来るのか?

そんな時にアイベンが近づいてきたのだ。

アイベンは王妃の最側近の一人だった。

野心と胸の奥に強烈な憎悪が髑髏を巻いているアイベンに出会った時この女は使えると本能的に感じたのだ。

すぐに男女の関係になった。


愛していもない相手と肉体関係を築くのは前世も今世も同じだな。

心の中で笑えた。


前世では数多くの貴婦人とのアバンチュールを楽しんだ。

時には顔だけで、時には出世の為、身体が求める為理由は様々だった。

あのプラーテン伯爵夫人は笑えるほど男に飢えていたっけ………。


ふっとフィリップの記憶が頭をよぎる。


まあ~~私は今世も変わらないな。

ふっと笑えた。


ふっと意識を戻すとアイベンが上目使いにその瞳を覗き込んでいた。


「まあ~~タイミングが良かったってことかしら?」

アイベンは肩に置いた手をさらに彼の首筋に当てて自分へと引き寄せる。

お互いの吐息が触れるそんな距離だ。

魅惑的な瞳にはまるで野生の狼の様な強欲で腹を満たそうとするストレートエンセの瞳に自分が映し出されている。


それを見ながらアイベンは自分はよい選択をしたと確信した。

キュー商会の招待状を懇意にしているブルジョワ階級の商人に王宮への商品の納品を交換条件にして手に入れた。

目的の半分は達成し、これから起こるであろう計画にワクワクとする。


ラトゥールを失ってから心の溝は埋まらない埋まるどころか。

何故こうなったのか?

自問自答し続けた。

そしてたどり着いた先が王妃への憎悪。


王妃がラトゥールとの関係をしっかり否定してくれたら。

王妃が噂話にならないように手を打ってさえくれていたら。

王妃が追放されたラトゥールを海外で匿ってくれていたら。

王妃が…王妃が………王妃が!

もう止めどもなく溢れて沸くどす黒い憎悪の波紋は大きく波打って自身を支配していった。


「あぁ~放火した後、サロンの再建が始まったすぐ後に。

 君からお披露目式の招待状を手にしてパートナーにとアプローチがあった。

 渡りに船だったよ。

 あのサロンはまさに啓蒙主義の象徴だ」


「では丁度いい所に私が貴方の胸に飛び込んだのはまさに神の導きによるものでしたのね」

挿絵(By みてみん)

「ああ~~~」

二人はまさに沈もうとする太陽の最後の日差しを背に受けて、身体を密着されて重ね合った。


二つの強欲な野心が一つになった瞬間を、息を殺して覗き見ていた者がいた事を欲望に貪欲な2人は知らなかった。





さて密会を覗き見していたのは誰なのか?

アルベールと王妃は同一人物なのにどう切り抜けるのか?

次回お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
https://narou.nar.jp/rank/manual.php
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ