キュー商会の快進撃 新サロンのお披露目式 予期せぬ招待客
ティーパーティーの後会場はさながら美術館の様な部屋で皆美しい芸術作品に触れて和やかな雰囲気の中で、とある人物が現れて。
午後のティーパーティーは好評のうちに終え、皆美術品で埋め尽くされている大ホールに数々の手にはシャンパンやワインを持ち思い思いの相手と会話を楽しんでいた。
まだ熱気冷めやらぬ招待客達は数々の絵画や彫刻、アンティークや現代工芸士による宝飾品を自由に鑑賞している。
本来これらは王室か王族、裕福な高位貴族のみが所有し、邸宅の装飾品として飾られてきた。
けれど啓蒙主義には芸術は全て市民のものであるという定義に基づいてこの式典の目玉としたの。
招待客はそれら国宝級の名品を感嘆の声と共に高鳴る胸を押えながら、時が過ぎるのも忘れるくらい至福の時を過ごしてくれたわ。
「見事な絵画と彫刻の数々ですこと」
「高位貴族の邸宅か、王宮や王族の邸宅にしかないのでは?」
「本当に素晴らしい作品」
「何でもアンティークは観賞用ですって。
新進気鋭の作家によって製作された物は注文に応じて製作して販売されているそうですわ」
「ええ!私の新しい別荘用にもう注文いたしましたの」
「まあ~~私も本宅の庭園様に石像を注文いたしましたの」
そんな会話の中である夫人がふと目に入った男性を見つけて話相手のフォルデオ夫人に耳打ちした。
「まぁ〜フォルデオ夫人。
あの方をご覧になって。
今話題の的ヨハン・フリードリッヒ・ストルーエンセ請願審議官ですわよ」
「えっ!
まぁ本当……。
サロンドゥキューのお披露目式にいらっしゃるのなんて。
流石キュー商会ですわね。
今デンマークの時の方もいらっしゃるなんて。
これからもしっかり出資しないと」
「今や啓蒙主義の最先端のサロンですもの」
「私達のような平民は貴族の方々の開かれるサロンには伺えませんもの。
行っても不快な態度で嘲られ、笑いのネタにされるだけですわ。
こちらのサロンは芸術や文化は私達平民にも生み出せると勇気をもらえますわ」
「本当に私達の時代が到来したのですわね」
「新しい時代に!」
数名の夫人達が輪になって扇を口元を隠しながら話に興じている。
周りには似たグループが密やかに会話を交わしている。
「ところで……先ほどストルーエンセの姿を見かけましたわ。
中々のたくましい方ですわね」
「国王陛下も幾分体調も回復傾向にあられるとか。
誠に喜ばしい事ですわ」
「そうなのですか?」
「ええ更にこの前に王太子殿下の種痘にも成功されて王妃陛下の信任も厚いとか」
「まあ~初めは嫌っておいでだと聞いておりましたのに」
「なんでも国王陛下に王妃陛下を尊重するように進言されたとか。
それで王妃陛下の気持ちに変化があったようですわよ」
「ストルーエンセ殿の寵愛はついに、陛下もベルンストルフ大臣を罷免されましたもの。
もっかストルーエンセ請願審議官を厚く信頼されておられるとか」
「まあアディフ夫人情報通でいらっしゃいますわね」
「いえいえ。
私の夫が経営する貿易会社が宮廷に食材を納品しているの。
それで王宮内でちらほら噂話を耳にするそうですわ。
なんでも大臣達そっちのけでストルーエンセ請願審議官につぶさにお聞きになるのだそうです。
まさに啓蒙主義時代の寵児ですわね」
「なんでも捨て子の養育院の設立を進言されたと」
「まあ~~それは慈悲深い。」
「あの力強い鋭い瞳。
どんな困難にも打ち勝つに違いありません。
独身でいらっしゃるのがもったいないですわ」
「もう意中の方はいらっしゃるのかしら?」
「確か外遊からいらした頃から独身でいらしたわね。
奥方を迎えられたとは聞いておりませんわね。
そういえば秘密の多い方ですわ。」
「まぁ〜あれほどの方の奥方となればそうそうはいらっしゃらないのでは?」
「まぁ確かに」
「皆様の中で年頃のお嬢様でどなたか相応しい方いらっしゃるのでは?」
「ベルトル夫人の三番目のお嬢様確か評判の美人さんですわ。
いかがですか?」
「まあ~恐れ多いですわ。
大して人並みの容姿ですわ。
それに教養や花嫁修業もまだまだ。
実は今私どもの娘より夫の遠縁の養女で、とても聡明なお嬢さんがおりますの。
養父からの容貌で行儀見習いを依頼されていまして。
首都の郊外にある私共の別宅で勉強中でございますの。
いずれ首都の本宅に呼ぼうと思っておりますのよ」
「まぁオンディーヌ海運の後ろ盾を得て、首都でデビューなんて幸運ですわね」
「もしかしたら……」
「いえいえ……。
養父は出来れば王宮に仕える女官にしたいようでして。
貴族の方の知り合いもいませんでしたので私共に相談されたのです」
「まあ~ではいずれは王宮に?」
「ええ家庭教師の報告では順調に教育は進んでいるそうです。
容姿はなかなかの美女でございましてよ」
「それは楽しみですわね」
「ええ」
「ストルーエンセ請願審議官殿とお見受けいたします」
ある恰幅の良い中年の紳士がにこやかにストルーエンセを呼び止め近づいた。
「どちらかでお会いいたしましたでしょうか?」
「これは失礼いたしました。
私はオンディーヌ海運の経営者ハンス・ゲルドルンと申します。
アイベン侯爵夫人の紹介を受けて来週お会いする事になっておりました。
まさかこんな所でお会い出来るなど思っておらず。
思わずお声かけしてしまいました。
お忙しいのにわざわざ時間を裂いてくださりありがとうございます。
お目にかかれて光栄でございます。」
「それは失礼いたしました。
ヨハン・フリードリッヒ・ストルーエンセです。
貴殿の来週の訪問を心待ちにしておりました。
私の希望を聞いていただけると、アイベン侯爵夫人から聞いております。
詳しくは来週に王宮でお待ちしております」
「…ストルーエンセ殿」
「アイベン侯爵夫人」
「先々行ってしまわれるので、追いつくのが大変ですわ」
「これは大変失礼な事をいたしました。
今日のパートナーですのに。
まだ宮廷に不慣れな新参者です。
お許しくださいませ」
「いえいえ。
今回は私が無理やりパートナーにお誘いしていただきましたもの。
今時の請願審議官殿をパートナーに出来るなど光栄ですわ。
今日は貴殿に紹介したい方がいますの。
参りましょう。
では失礼してよろしいかしら?
ゲルドルン殿」
「勿論です。
アイベン侯爵夫人」
「では参りましょう。
ストルーエンセ請願審議官殿」
アイベン侯爵夫人に連れられたストレーエンセは?
誰に会うのか?
次回思ってもみない展開へ。キャロラインマチルダ王妃にピンチが?…………。




