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キュー商会の快進撃 遊覧飛行 アルベールの正体

気球から転落してしまったアルベールは?

無事なのか?


挿絵(By みてみん)


闇が広がった世界。

身体を横たえてふわふわと宙に浮いている感覚がしていた。

いつまで果てしなく広がり、決して明けないそんな気がしたわ。

でもそれでもいいとさえ思った。

それほど煩わしい日々が続いてきた。

いつまで耐えないといけないのか? 

何が正解で何が間違いか?

分からない。

分からないから……不安だわ。

その不安はインクのシミの様にドンドン心を侵されるような気持ちになる。

このままここで何も考えずにずっと……このまま……。


「………お……おう……」


唐突に沈黙が破られる。

闇の中から人の声が聞こえた。


誰?

誰かが呼んでいるの?


あぁ〜もう放っておいてこのまま静かに身をゆだねていたい。

何もかも面倒だから!

放っておいて!

御願い。


「お…王………妃…」


あぁぁ〜。


「王妃陛下」


私の眠りを邪魔するその声は、まるで私の手を力強く握って引っ張り上げるように無理やりに静寂の世界から連れだした。


開いた瞳にさざ波の様にユラユラと浮かぶ映像が徐々に鮮明になっていく。

男性?

あっ!!


「……サン……ジェル…ン伯爵?」


「王妃陛下!!」


そう私の目の前にサンジェルマン伯爵が心配そうな表情をして椅子に腰かけていた。

ハッとした後、夢で(うな)されていたのか?

身体中に汗がびっしょりでナイトガウンが肌にくっついていた。


「私どうしたのかしら?

 確か。

 気球に乗り込んで……。

 そしたら……。

 グラッとして………」


自分で話すだけでもぞっとして気持ち悪くなると同時に、その時の記憶が脳内に鮮明にリプレイされる。


あっ!

ラファイエルが…………。


「王妃陛下。

 だから無茶だと申しあげたのです」


「そうだわ~~確か……気球から真っ逆さまに落ちたんだっ……」


「コホンッ!

 王妃陛下。

 ドゥルヴェール殿がお助け出来たから何事

 もございませんでしたが!

 もしそうでなければと考えただけで寒気が

 いたしました」


「あっ!

 そうだった。

 気球から落ちてラファイエルが助けてくれた!

 っ……もしかして気を失った後…。

 バレたんじゃないの?

 私ラファイエルに担がれ来たの?」


「王妃陛下!

 そこは大丈夫です。

 ドゥルヴェール殿にそんな不審な様子はございませんでしたから。

 それに私の術はそんな程度で解けたり致しません!!」


「……悪かったわサンジェルマン伯爵。

 つい………心配に……貴方を信用していないのではないのよ。

 失言だったわ。

 ごめんなさい」


「陛下!

 陛下からのどうしてもというご希望で。

 陛下を性別の違う別人に見える最新の催眠術を特別におかけしました。

 私の調合した特別な香水を散布し、同じ香りを纏う人物つまりこの場合は陛下を男性に見える様に暗示

 する術でございます。

 解く方法はこの香水を破棄し、陛下も使用するのを止めるのみでございます」


「あ!!

 そうだったわね…気分を悪くしたわね。

 御免なさいね。

 ……あれから気球の体験者は?

 誰も乗らなかったわね。

 あんな事故を目にしたら……そうよね。

 サロンの評判が落ちたらどうしましょう」


サンジェルマン伯爵は安心させるようににっこりと微笑んで思ってもいない言葉を発した。


「いえ。

 それがですね。

 キュー商会の従業員達が機転を利かせたんです。

 事故が起こった後、従業員達が陛下をドゥルヴェール殿救出する様子。

 緊急事態の救出実験だと説明したそうで。

 招待客の信用は益々高まり、その場にいらした妊婦、ご老人と持病を持つ方以外全員乗車されました。

 体験に何事も勿論こざいませんでした。

 皆様大変楽しまれ、喜んでおられたそうです。

 王妃陛下おめでとうございます。

 あの気球は本来はもう少し後に発表されたはずの乗り物です。

 まあ~今回は私の好奇心が高まりすぎました。

 皆様にはどうかご内密にと釘を刺しておきました。

 まあ~~噂程度はどうする事も出来ないでしょうが。

 気球と設計図を処分、解体しますので特に問題ございません。

 王妃陛下診断いたしましたが特にお身体に問題はございませんでした。

 そろそろお仕度をティーパーティーが始まります。

 サロンドゥキューの新しい門出お祝い申し上げます」


軽くしかしその仕草は優雅そのもの。


「まあぁ~それはよかったわ。 

 ありがとう伯爵。

 では後ほどね。」


とりあえず問題はない。

でもこれからが本番!!

サロンの名を益々高めて!!









アルベールは王妃キャロライン・マチルダ王妃だった。

次回サロンドゥキューの新しいお披露目式が開催される。

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