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第五章 キュー商会の快進撃 新しい経営者

火災で焼失したサロンドゥキューが再建された。

王妃は再びキュー商会を訪ねる事は出来るのか?

新しい展開に!


蝋燭に照らされたキュー商会は暗闇に浮かび上がる煌びやかな宮殿に似ている。


夜だというのに支配人と従業員達がある小柄な男を全員で取り囲んでいた。

すらりとして細面の顔立ちはふっくらとしている。

まだ若い青年はまるで女性の様な幼さも宿る顔立ちをしている。

希望に満ちたキラキラした瞳で全員を見つめていると、ゆっくりと小さな唇がうごきはじめる。


「初めましてキュー商会の皆様。

 私は新しくこちらの商会をキャロンキューから託されました。

弟のアルベール・ザハッドワグナーと申します。

 姉からの手紙にあったように、姉は今妊娠しております。

 流産の危険がある為に今は田舎の別荘で静養しております。

 出産後も育児があり、当分の間首都に行けないと申しております。

 経営に支障がないように私を派遣させ、経営について助言と運営を託されました。

 皆様と協力して更にキュー商会を盛り上げていきたいと思っています。

 皆様のお力をお貸しください。

 これから宜しくお願いしたい」

柔らかな声で語った青年はまだ20歳にも満たない様に見える。

白い肌に紅潮した頬は薔薇の花の色、美男とはいえないが純粋さと明るさが身体からあふれ出る独特の快活さを持ち合わせていた。


だからといってたよりなさげな印象はなく、支配人と従業員は真剣な表情で、新たな経営者に期待と羨望の視線をおくっている。


初めて会う人物だが、キャロンからは支配人を通じ、手紙でこの事を知らされていた。

なによりこの目の前の弟を名乗る人物がキャロンにそっくりだったからだ。

どうして異を唱える必要があるのかと言わんばかりに満面の笑顔で迎えた。

ようやく以前の活気のある従業員の姿を目に出来て、アルベールはほっと胸をなでおろす。


「従業員一同オーナーと変わらない姿勢で誠心誠意お仕えいたします。

 なんなりとお申し出ください。

 御覧の通り本店はサロン火災以前より更に活気に満ちています。

 売り上げも順調で、サロンもすでにお披露目出来るほど完成しています」

支配人が得意げに告げる。

アルベールは満足そうににっこりと微笑んで大きく頷いた。


「皆様のご尽力の賜物です。

 姉も大変喜んでいました。

 そしてお披露目のイベント案も提案されています。

 まずはこの企画の成功の為皆で力を合わせて協力してください」


「勿論です!」


「ありがとう」


「アルベール殿!

 宜しくお願いします」


「ありがとう」


「宜しくお願いします。

 楽しみです!」


「ありがとう」


パチパチパチパチパチ!

割れんばかりの拍手が彼を手放しで迎える序章の合図だ。


「ありがとう皆さん。

 それと私は日光アレルギーで、あまり日中は訪問出来ない。

 なので夕方や夜間に訪問する事が多いと思います。

 不便をかけるかもしれないが宜しくお願いしたい」


「お気になさらずアルベール殿。

 それよりもお披露目のパーティーですが…。

 その件で大変力になっていただける方をお二人お招きしています。

 今からご紹介してもいいでしょうか?」


「あ! 

 はい。

 姉からも聞いています。

 是非お会いしたい」


そう告げられるとアルベールの前に奥の間のカーテン越しに二人の人物が現れた。


年配の男性と若い男性。

二人とも身なりは清潔で年配の男性に至っては随分豪華な衣装を(まと)い明らかに貴族に見える。

もう一方の男性はブルジョア階級の男性の様で、清潔な紺の上下の衣装がとても誠実そうで顔立ちから外国人だろう。


「初めましてアルベール殿。

 私はサンジェルマンと申します。

 姉君の指南役でこちらに出入りしています」


「あっ! 

 はい。姉から聞いています。

 お世話になっていますサンジェルマン伯爵」


「双子の弟君と聞いていましたが瓜二つですな」


「はは!幼い頃は乳母以外見分けがつかない時があったそうです」


「でしょうな!!」


「はじめましてアルベール殿。

 ラファイエル・ドゥルヴィーユと申します。

 イギリス移民のフランス商人です。

 主に嗜好品の貿易を生業としており、今回のサロンドォキューの催しの協力をさせていただくと聞いております。

 どうぞ宜しくお願い致します」

かなりの長身ですらりとした体格に薄いプラチナブロンズを後ろで束ね、黒曜石の様な黒い瞳は物静かで落ち着いた印象を与える。

まさに紳士の名が相応しい人物に思えた。


「はい。

 聞いております。

 今回の催しは新生サロンドゥキューの最初の催しです。

 姉からも志向を凝らした珍しい内容にするように言われています。

 是非ご協力をお願いします」


「それとアルベール様。

 針子のヨハンナですが。

 キャロン様へのお手紙に書いた様にうちの顧客のご紹介で、地方の養女に請われ退職いたしました。

 本当はお2人にご挨拶してからお別れするつもりでしたが、養父が病で体調が思わしくなく、早く来訪

 するようにと。

 名残惜しそうに去って行きました。

 彼女からお2人にお手紙を預かっています。

 後ほどお読みくださいませ」


そう支配人は告げ胸元から白い封筒をアルベールに手渡した。

 

「そうありがとう。

 姉にも渡しておくよ」


「腕のよいリーダー格の人材でしたが。

 後身もしっかり育て退職いたしました。

 事業に支障はございません」


「幸せになる機会だし。

 めでたい事です。

 姉から支度金を贈るように言われているから私から送りますね」


「ありがとうございます。

 心使いに喜ぶでしょう」


「では皆様。

 催しの詳細の打ち合わせをいたしましょう。

 今回もきっとコペンハーゲン中にこのサロンの話題で持ちきりになるでしょう」


「はいアルベール様。

 では会議室へ」


皆そう言ってエントランスから消えていった。






サロンドゥキューのお披露目式典は?

その前に招待客に披露された物は?

次回式典中に起こった小さな事故

それは?

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