国王の宮廷医師 小さな改革の前進
公娼候補に辞退された事でストルーエンセは八方塞になる。
次に計画したのは?
宮殿の使用人が使う小部屋の小窓から僅かな太陽の光が入り、男女の2人が並んで小さな木製のソファーに腰掛けている。
男はたいそう真剣な眼差しで女を見つめながら言葉をかける。
「不肖私の願いをお聞き入れてくださり、ありがとうございますマチルダ殿。
愚かにも王妃陛下の御不興を受けるようなまねをし、深く反省しております。
マチルダ殿から私が大変反省し、王妃陛下に今度は礼を尽くしたい。
国王陛下並びに王妃陛下お二人に真摯に国務顧問官としてお仕えする事をお伝えしてほしいのです。
そして出来れば王妃陛下への謁見をお許しをお願いいたしたく…。
マチルダ殿にぜひお口添えをお願いしたいのです」
ストルーエンセは誠意溢れる言葉を並べながらも、頭の中ではまったく別の事が離れない。
そう目の前にいる女性は紛れもなくかの人に似すぎていると。
そう………似ているというには単純すぎる。
顔ではない。
そうあれほどの美貌の人は世にそうそういない。
いるはずがない。
本人以外は。
しかしその人はいるはずのない人がいる。
身体つきとそして目線をやや恥ずかしながら恥ずかしげに俯く姿。
そのぎゅっと握りしめる小さな手は磁器の様に白くありながら、絹のような滑らかさがある。
それはかつて自分が強く握りしめたそれそのものだった。
伏し目がちな瞳の奥の輝きに、どうしても彼女の記憶が鮮明に思い起こされてならない。
あの愛した貴女に。
何故だ?
どうしてだ!!
どうしてあの方に似ているのだ!!
「…ストルーエンセ様?」
マチルダの自分の呼ぶ声で、ようやく飛んでいた意識が戻った。
似ている声が!
その時不意に悪戯心で参加した仮面舞踏会の一夜が頭に飛び込んでくる。
そしてそこで悟ったのだ。
その理由を……。
「失礼したマチルダ殿。
先日から体調が思わしくなく。
国王陛下の病状が不安定で夜の眠れぬほど疲労困憊してしまっているのです。
もし王妃陛下に口利きをお願い出来たら疲れも吹っ飛びます。
マチルダ殿!」
マチルダはストルーエンセの懇願にどうすればいいのか迷っていた。
思考回路はまったく混乱して答えは出せそうにない。
ストルーエンセ殿に悪気はなかったのだろうか?
国王陛下の精神安定の為公娼を置くと考えただけかもしれない。
いや。
口ではそう言っているけれど、行き詰まって私に頼んでいるかもしれない……。
王妃様にも謝罪の気持ちも後悔の念も持っていないかもしれない。
「マチルダ殿!
もし私の願いを叶えてくれるなら。
国王陛下と王妃陛下の関係性を改善する橋渡をしてみせます。
そうすれば王妃陛下の宮廷での地位は確固たるものになる。
マチルダ殿お願いだ!」
国王陛下と王妃様が和解すれば。
国王陛下が王妃様を気にかけるだけで、今の宮廷で孤立する事はないのでは?
その言葉にマチルダの身体に電流が走る。
それこそ望む事であり、王妃の宮廷生活がよい方向に改善出来る最善の策だとわかっていたからだ。
そしてストルーエンセの真っ直ぐと自分だけを見つめる、その炎の瞳に身が焦がされそうな熱い血が騒ぎ始める。
「……わ…わかり…ました。
本当に王妃様の力になってくださいませ」
陥落してしまったのだ。
「勿論です。
ありがとう。
マチルダ殿!」
ストルーエンセはマチルダの両手を強く握りしめその顔を覗く。
赤く染まった頬をちらりと見ては満足そうに微笑んだ。
マチルダと別れた後、早速国王の私室に向う
ストルーエンセは人気役者でもこれほどの演技は出来ないだろうと思わず苦笑していた。
自らの希望と野心、信念に必要なものはわかっていた。
衛兵の待機する国王の私室の前でジャケットの襟をただす。
「陛下にとりなしを」
「ストルーエンセ国務顧問官殿。
お越し」
ギィ〜〜〜。
扉が開かれた。
ストルーエンセは国王に何を進言するのか?
次回から急転換2人の関係も明らかになる。




