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第四章 国王の宮廷医師 小さな改革の始まり

国王の帰還後に宮廷は一新される。

デンマーク宮廷を追われていた啓蒙主義派の貴族達が権力を持うと画策する。

ここは宮殿の喫煙室しかも他の者が出入り出来ない様に衛兵を配置している。

挿絵(By みてみん)

数名の男達は葉巻を嗜みながら神妙な面持ちでひそひそと小声で話し合っていた。



「見事な手腕だ。

 ヨハン」

シンメルマンは満足そうに口角を大きく下げてその男の広い肩を叩く。


ヨハンと呼ばれた男は少し恐縮そうにはしているが、へりくだった素振りは見せていない。

それどころか廷臣達の中で切れ者と言われるシンメルマンと比べても見劣りしないくらい威風堂々とした姿で立っている。


「随行医から宮廷医へ就任に動いてくださった皆様の尽力に尽きます」

軽く礼をしたその振る舞いは貴族ではないかとホルク伯爵は背筋が凍る思いでその様子を見ている。


「国王陛下も最近はすこぶる安定されておる。

 これもそなたの功績だ。

 この調子でたのんだぞストルーエンセ」


外遊の随行医として推薦したランツァウ伯爵も得意そうに身体を反り返しながら言葉をかける。

長く政権闘争に敗れ、離れ地で冷や飯を食べ続けた苦い記憶は彼を政治の世界へ執着させていた。

領地で彼の存在を知り、希望に満ちた異国の改革を行おうと政争に敗れ宮廷を追われた廷臣達の元に訪ねていた。

再び政界へ返り咲きたい者達は王の医師という地位に彼をねじ込む事に成功し、外遊中に王の健康が改善した事もあり彼は王の信頼を得て多くの支持者達を再び宮廷に呼び寄せる事に成功したのだった。


「ランツァウ伯爵。

 陛下のご病気は完治する事は出来ません

 が。

 改善する事は可能だと思います。

 それには常に陛下の精神を安定する事の出

 来る人物が必要です」


「はて?」


その場にいた全員が訝しげに顔を見合わせる。


「そのような人物がいれば我らが適任者を陛下の元へつけているが。

 思い当たらないな」


「はい。

 そうでございましょう。

 私が思うに。

 政治的野心がなく、陛下に忠実で評判も良く、出しゃばらないとびきりの美女がおります。

 皆様の賛同は必ずとれると確信出来る人物でございます」


「公娼にか?」

ランツァウ伯爵は顎に手を乗せて、暫く天井を眺めながら、思案している様子だった。


「なるほど。

 悪くはない。

 王妃様とはお互い疎遠の仲。

 身分に相応しい公娼か」


にやりと意味深に口元が緩む。


「ではストルーエンセ。

 後は頼んだぞ」


ランツァウ伯爵は上機嫌で、葉巻を口に含んで息を吐く。

白い煙と煙草の匂いが部屋に漂う。


「かしこまりました。

 よい報告ができます。

 私はこの後陛下に呼ばれておりますのでこちら失礼いたします」


ストルーエンセは軽やかにお辞儀をし部屋を去り、部屋に三人が残された。




「皆様!

 本当にあの男を信用して任せるのですか?」


ホルク伯爵は不満を隠そうとはせずに荒々しい声で訴えかけた。


「仕方ない。

 王の健康状態が悪ければ、我々とて思うように政治を動かせない。

 その事はそなたも承知しているのではないか?」


嫌味を含んだシンメルマンの言葉に酷く怒を感じたが、今はそれに拘ってはいられない。


「ホルク伯爵。

 そなたの地位を奪われるのでは?

 そう懸念しているのだろう。

 彼は平民、国務委員になったからといって、貴族ではない者がこの国を統べることは無い。

 我々は彼を利用し、使い道がなくなれば追放すればいいだけだ。」


ランツァウ伯爵はさも当然とばかり、先ほどのストルーエンセの賛美とは違い、いかにも見下した表情をしながら言葉を吐く。

ランツァウ伯爵は以前このホルク伯爵によって宮廷追放に合った。

その時の恨みをまだ抱いているのだ。


そうは言ってもホルク伯爵の王への影響力は日に日に陰りが見え始め、かわりにストルーエンセがそこへ入ろうしているのは確かだ。

「しかしながら……」


「外遊中にベンターゲンが陛下に会おうとしたではないか。

 なんとか捕まえて追い出す事に成功したが。

 またあの娼婦が宮廷に舞い戻って来たなら。

 大騒ぎだ。

 それこそ陛下はあやつり人形と化すだろう。

 今の所彼には独断での政治的野心は見えない。

 彼の支持する啓蒙主義を私達が実現した

 ら。

 彼も満足するだろう」


「そうだ。

 結局裏方の人間だ。

 彼にも野心はあるだろうが、この国では限

 度があるのだよ。

 彼を満足させつつ我らに幸運をもたらして

 くれよう」


「……。」


ホルク伯爵は高位貴族である2人にそれ以上何も言えなかった。


自分の力は国王の寵臣でしかないからだと自覚していたからだ。

2人とは違う危機感が黒い霧のように身体に纏わりついて悲観的な考えから逃れられない。


苦虫をすり潰したような悔しさが胸に刻まれる。










宮廷を追われた貴族達は王の信頼を勝ち得た中産階級出身の医師に王の精神安定を託した。

彼はどう動くのか?


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