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王の居ぬ間に 仮面舞踏会の出会いⅢ

ラトゥールと別れたキャロライン・マチルダ王妃の目の前に見た事もない男性が現れた。

彼は誰なのか?

これからの王妃の運命を左右する人物が登場しました。



「初めまして令嬢。

 もし今パートナーがいらっしゃらないなら私と一曲踊っていただけませんか?」


令嬢?

 あぁ~~ここでの全ての女性へ向けた敬称だっわね。

ラトゥールと出会った動揺ですっかり面喰ってしまって………。


あぁ~~なんて断ろう?


あっ!!駄目だわ。

思い出した。

仮面舞踏会ではダンスに誘われたら断るのはご法度。

受けるのが当然のマナーとされているのを。

めんどくさいけど仕方ない。


反らしていた視線をちらりと彼に向けた。


まじまじと彼の顔を覗く。

彼の表情が花が咲くように綻んだ。


「初めての宮廷での仮面舞踏会に貴女と踊れたらどれほど誉れでしょう」


その甘い台詞とは裏腹に、瞳の奥に燃え盛る炎の様に野心に満ちているのがわかった。


ドギマギしてしまう。

その全てを焼き尽くすまで消えないほどの炎だった。

それは私の胸をジリジリと焦がすような痛みを伴って私に襲いかかる。


なぜだかわからない。

でも逃げなくては彼から。

関わってはいけない。

本能的なのかしら?

でも身体は一歩も動かない。

いや何かに押さえつけられる様に動かない。

そしてさっきから身体の中から蠢くものを感じて落ち着かない。


「令嬢。

 大丈夫ですか?

 ご気分がお悪いなら。 

 女性専用の休憩場所までお連れいたします」


その声は静かに奏でるコントラバスの様に聞こえ心地よい反面、虚事のように聞こえて仕方がない。


「い……いいえ。

 何でもありませんわ………。

 少し人に酔っただけでもう大丈夫ですわ

 踊りましょう」


彼の差し出された手を自分のそれに重ねる。

冷たいその手に何故だか恐怖心がよぎるのを。


悟られてはいけないわ。

心臓の慟哭が相手に伝わっているのでは?とさえ思えるほどの緊張感で身体は身震いする。


宮廷での鉄則。

彼は貴族ではないかもしれないけれど、貴族に伴われた人物だから警戒は怠らない。


表情には出さずに軽くほほ笑みかけた。

踊りの輪は蜜に誘われた蜂達で、熱気に満ちていた。

挿絵(By みてみん)

彼は筋肉質で無骨ながらも女性に優しくあろうとする。

私の腕を優しくとる手。

腰に廻した手は優しく振れる程度だけれど、明らかに宮廷に不慣れなぎこちなさが感じられた。

ダンスのリードに危うさはあるけれど、不愉快ではない。


管弦楽のハーモニーが会場を軽やかに流れる中、演舞の中へゆっくりとステップを刻み自然と入り込んだ。


彼の仮面の奥の瞳には少し緊張してはいるが、私に微笑みかける余裕はあるようだった。



「ありがとうございます。

 ご一緒に踊れるなど出来るなど光栄です」


「一夜の夢。

 今宵は…儚い夢」


仕方ないわ。

マナーだものと言わんばかりの返答をしてしまった。


「夢……儚い?

 夢は叶える為にあるのだと思っています。

 その為には全てを投げ出すつもりです」


皮肉に口角をあげたその顔には私の言葉の否定がこめられて、一瞬に呆気にとられた。

貴族でもないであろうに高慢ちきな返答に言葉が出てこない。



「………なんだか物騒ですわね」 

やっと口から出た言葉は肯定も否定もしないありきたりなものが言えただけだ。


「ダンスの会話にはふさわしくないですね。

 申し訳ございません。

 無骨者でこのような華やかな場所に初めて

 失礼をお許しくださいませ」


「今宵は貴方がどんな方など。

 厭わないわ。

 どうか気になさらないで」

 

「素晴らしい方だ。

 貴女の夫が羨ましい」


「まぁ……」


そう言った後、伴奏は終了し同時に踊りも終えた事を知る。


「では。

 またご機嫌よう」


「ええっ。きっとね。

 ご機嫌よう」


男は何事もなくただゆっくりと腰を折り、私に礼をして去って行く。

後ろ姿すら堂々として一瞬だけなら貴族だと誰もが思うだろう。


「必ず。

 再びに」

男のその放った言葉は私には届かない。

謎の男性は一体誰なのか?

帰国した王は?

次回はキャロライン・マチルダ王妃の周辺が大きく変わっていく。



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