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王の居ぬ間に 仮面舞踏会の出会いⅡ

咽る様な仮面舞踏会の会場を抜けてテラスへ出たキャロラインマチルダ王妃は?

仮面舞踏会の喧騒からテラスへ移動して、束の間の静けさを得ようとしたその時。


カサカサと音の鳴る方に視線を送る。

月光が葉に閉ざされながらも、柔らかな木漏れ日のように人影を映し出す。


「誰?」 

反射的に思わず話しかけた。


風音にかき消されたのか答えはない。


私はふっとここで気がついた。

そう今夜の出会いは全て隠される仮面舞踏会の夜。

自分を名乗る愚かな者はいない。


全て一夜の戯れとなるのだから。

全てが許される日。


「……。

 他に人がいたなんて…。

 休息を奪ってしまいましたね。

 失礼するわ」


隙を与えないかのように本意ではないけれど、会場に戻ろうとした時だった。


「す………こし……待ってください」


その人が気になって思わず足を止める。

風音もやんで、静寂だけが漂う。


少し軽い溜息がその人から漏れ、ゆっくりと人影がテラスの窓にはっきりと映し出した。


ライトグレーの唐草模様の刺繍のジャケットはシンプルながらも品がよく、同じ色のパンツもすっきりとしながら、を強調したデザインなので筋肉質な長い脚であるのがよくわかる。

肌は薄く白粉をはたいているだけで、自然と赤く染まった頬はいかにも健康的だった。

髪はライトブロンドで絹のようなツヤ感があるが、どこか人工的で恐らくカツラだと思う。

目元を白狼のマスクで覆ってはいるが、彼が誰かはすぐにピンときた。


そうラトゥールだ。

アベイルのパートナーとしてやってきたのだろう。


なんとなく気まずい空気が流れるが。

ラトゥールは呼びとめたのは自分だと、深い吐息を吐いて私の顔をしっかりとやや潤んだ瞳で見つめきた。

何故だか胸がどきっとなる。


「はじめまして麗しい方」

澄みきった初夏の日差しが似合う声。

恥ずかし過ぎて、顔をそむけてしまう。

何故って私には持ち合わせていないもの…私には……。

眩しすぎるから。

私は王族に生まれただけ。

それだけ……美しくもない……。


気を取りなおして、彼に作り笑顔で答える。


「はじめまして。

 でも麗しいなんて。

 そんな台詞は軽率ですわ」

月光は雲に隠れ私に影を落とす。


「いえ。

 貴女は他の誰よりも美しく魅力的で私にとっては手に届かない輝く金星の様です」

偽りとは思えないほどの瞳の奥に熱い輝きが私には眩しい。

 

「……貴方の恋人が聞いたらとても傷つくでしょう。

 彼女の不幸は望んで……」


「いえ……。

 彼女は恋に、愛に酔っているだけ。

 私を愛している訳ではない。

 私はただの装身具にすぎない」


「いえそんな事はないわ」


「私にはわかるのです。

 そう。

 貴女はそうではない。

 凛とした。

 コペンハーゲンの冬の青い空の様に澄み切った美しさが」


「いいえ!!

 私は美しくなんかない。

 醜いわ!

 私に残されたものはこの高貴な血だけ。

 うわべだけの言葉はいらない。

 私は姉様達よりも美しくないわ」


「それは!

 違う!!

 私は今まで出会った女性の中で貴女ほど美しい方に出会った事はない!」


「貴方に私の何がわかるというの!!」


「…私は過去にある貴婦人にとんでもない仕打ちをしてしまったのです。

 私は彼女を愛していた。 

 でも私の浅はかな、ちっぽけなプライドのせいで行為で彼女を不幸にしてしまった。

 私は今自分の気持ちを正直に生きると、言葉にすると誓ったのです。

 ですから貴女は私の望であり。

 貴女の望みは全て答えたい。

 本当に貴女ほど美しく、心の清らかで優しく、朗らかで春の木漏れ日の様な方を私は知らない!!

 どうか私の言葉を偽りと思わないでほしい」

胸の奥に確かに真実であってほしいと気持ちは自然と湧き始めていた。

何故かはわからないけれど。


「………ラ………そう今宵は戯れの夜。

 二度とない。

 だから貴方の戯れと」


「…………」


私は呟く様に風にかき消される様な声を出して蝋燭の薄明かりに照らされた舞踏会場へと戻る。


今度は呼び止めもせずラトゥールは私を見送っている。

僅かに彼の指先が震えているのがわかった。

それでも私は振り向かずに、騒めきと魅惑的なムスクの咽る様な会場に入る。


はっと気づく。


一人の男性が私の前で美しい礼をしてゆっくりと私を眺めている。


デンマーク宮廷に出入りしている者は一度謁見した者は当然でそれが外国人でも覚えている。

けれどまったく記憶にない人物だった。

紺色の無地のジャケットと同じ色の半パンツ。

白のシャツは真新しく清潔感がある。

その装いは明らかに貴族ではないのはわかったものの品格すら感じるほどの印象を与える。

肌はやや浅黒く、何よりも美丈夫なほど体格はよい。

瞳は淡いグレーブルーでその奥には炎の様な荒々しさと豪快さと野心が垣間見える。

なんとなく危険な香りのする男性だった。


誰だろう?

宮廷に上がった者ではないのは明らかだった。

外国人だろうか?

私は知らないこの男性を。





ラトゥールとの再会を思わぬ形で出会い動揺した王妃を舞踏会場である男性が待ち構えていた。

それは誰?

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