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王の居ぬ間に 仮面舞踏会の出会い

キュー商会が襲撃されてキャロライン・マチルダ王妃の逃亡計画は中止される。

密かに宮殿にやってきたサンジェルマン伯爵が去った後、王妃は人影に気がついた。


「王妃陛下?」


カサッと物音が聞こえた方向に聞き慣れた女性の声。

心臓をキュッと握られたような感覚と血の気が引いて身体が氷の様に凍り付く。


もしかしたら伯爵がやってきたのを見られたかもしれない。

そう思って動揺したけど、深呼吸で静さを取り戻しながらスカートを翻す。

そして口角をあげてゆっくりと彼女に視線を移す。


「マルグレーテ?」


暗がりの中でぽかんと口の開け驚いた顔をした筆頭侍女長マルグレーテ・フォン・デア・リューエがいたの。


プレッセン侯爵夫人が去った後、私はよかったと思ったわ。

でもね。

私の意図しない人事だと示すために新たな筆頭侍女長の候補者を断固拒否したの。


しばらくしてマルグレーテが宮廷に現れて私に紹介されたわ。


第一印象はよかった。

初対面では私室のテラスでお茶と軽い食事会がセッテングされたわ。


白い歯を見せて笑う屈託のない表情に惹きつけられた。


穏やかで明るくて、一緒にいて落ち着つける人柄だった。


「ホルク伯爵の強欲といったらお腹いっぱいになっても食べる事を止めない狐。

 そのうち狩られましてよ」


冗談のセンスも最高だった。


実は彼女私の天敵ホルク伯爵の妹。

勿論おそらく私を見張るためによこしたのよ。

でも逆に利用できると思った。

彼女を通じてホルク伯爵の動きがわかるから。

でも筆頭侍女長として献身的に仕えているわ。

私は本心を隠しながらも彼女を段々と惹かれていった。


そう少なくとも兄の操り人形の素振りはまったくみせていない。

今の所は…。


「王妃陛下。

 このような夜遅くに。

 いかがされましたか?

 夜風はまだ冷たく風邪をひいてしまいます

 わ。

 お部屋に戻りましょう」


優しい口調で自分の羽織っていた絹のストールを肩に掛けてくれた。

仄かに薔薇の芳香が漂ってマグルレーテの体温が私を安心させてくれる。

まるで姉の様な接し方の彼女といると、故郷に帰ってきたような気さえする。

ほっこりと心が温かいもので覆われる。



「ありがとうマグルレーテ。

 眠れなくて…。 

 夜の庭園に散歩に来たの。

 でももう戻るわ」


彼女は実の姉の様に冷えた私の身体を心を包み込んで胸の奥底をポカポカにして満たしてくれる。


「王妃陛下。

 お身体が冷えていますわ。

 もう夜も遅いです。

 ホットワインを用意します。

 お飲みになって……。

 明日は王妃陛下主催の仮面舞踏会です。

 お休みになりませんと。

 明日はお忙しくなりますわ。

 準備の為に朝からお忙しくなります」


そう不在の王から何故か私主催の仮面舞踏会を開催するようにと手紙がきたの。

なんで???

本当彼よくわからないわ。

仕方ないから夫が外遊に出ている貴婦人達を招待しての仮面舞踏会を開催するの。

ああ~~~めんどくさいわね……。


「そうよねマグルレーテ」

そうは言ったものの逃亡に失敗した私の表情は自分でも深い沼に落とされたかのような沈み込んだ顔だろうと思った。

心の中は取り繕えないほどにの失意にいる。


********************************************




次の朝は起床から朝食、高位貴族の夫人との謁見後まではいつもと同じルーティン。

この後が大変。

仮装用にメイクするためにスキンケア。

勿論キュー商会の化粧品よ。

ローズ水に蜂蜜を混ぜたクリームで顔をマッサージ。

どんなにした所で、仮面を被るのだからどうでもいいじゃないと思うでしょ。

でもメイクはエチケットよ。

私はされるがまま、夢ごこちな中でウトウト。

舞踏会なんて面倒だけど………。

気持ちはいいわね。


小一時間くらいマッサージ受けた後、いよいよメイク開始。

白粉、頬紅、眉、そしてつけホクロ。

髪は理容師4、5人に弄くりまわされて。

セット完了。


そしてコルセットを乱暴に装着されて、この日の為に作られたドレスに手を通す。


「私は私で…でも私じゃない」


「王妃陛下?」

マルグレーテが不思議そな瞳をしていた。


「なん…なんでもないわ。

 マルグレーテ」


支度を終えて舞踏の間は夫の居ぬ間に若い愛人達を連れ立った貴婦人達で埋め尽くされていた。

今日は相手が誰か分かっていても、素知らぬ顔で接するのが鉄則な日。

後日今日の事を確認したり、非難したりはエチケットに違反者は即仲間はじきにされる。


これは私も同じ。

皆私を王妃とわかっているものの、誰も話しかけてこない。

勿論パートナーもいない。

主賓の挨拶もない。

全てが今日の夜の中に隠される。


シャンデリアの灯火が揺らめき、薄明かりの中で浮かびあがる白粉を塗り固めたような肌はその場を何か異様な雰囲気に変えてしまう。顔を、瞳を隠しているから尚更だった。


ちょっと酔いそうだわ。

お酒を口にしていないのに、やけに目眩がしてならなくなった。


「マルグレーテ。

 私少しテラスで休むわ」


「大丈夫ですか?」

マルグレーテはあえて王妃と呼ばない。


「えぇ、少しだけ1人になりたいの」


「わかりました。

 何かあればお呼びください。

 すぐ傍にいます」

マルグレーテはそう言って私を近くのテラスへ付き添い、近くの壁際で待ってくれた。


そのままテラスに滑り込む。

少し広めだけど丁度大木に囲まれて、葉の間から月光が差して、なんともいえぬ幻想的場所。

誰にも見られないだろう。

そう思ったのも束の間だった。

カサカサカサ……。


何かの音が耳につく。


ジャリジャ!!

何か石が踏まれたような音が耳を突いた。


「誰?」






背徳感と甘美な一夜に新たな出会い?


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