#35〔聖骸骨〕
ご無沙汰です。
リアルがめちゃくちゃ忙しくて書く時間があまり取れませんでした。申し訳ねぇ。
これからも不定期にはなりますが気長によろしくお願いします!
神の造物——キャーリヴ城を前に、1分にも1時間にも感じられる時が過ぎたころ、遂に沈黙が破られた。
「凄いな」
ドゴゴルが言ったのか、それともリールが言ったのか、はたまた俺が言ったのか、最も簡潔な感想を述べた。
「あぁ、凄い」
もう少しだけ感慨に浸っていたいものだが、そうもいかない。ドゴゴルが歩き初める。
これまた黒の大きな扉は門と同様開かれている。
もう少し感慨に浸っても良かったのだが、それは目の前の骸骨が許してくれないようだ。骸骨は俺たちを見据え、こちらに——歩いてきた。
骸骨の紅い眼窩と目を合わせる。骸骨は必死に口の辺りをガチャガチャと動かし、俺たちに何かを伝えようとしていた。
「なんなんだ?」
ドゴゴルが言う。
「ふむ、何かを伝えようとしているみたいだな。」
続いてリールも。
「少なくとも敵意は無いようだな。」
「だな。」
「なら無駄な戦闘は避けるべきだろう。」
俺は最もな提案をする。向こうから襲わないなら襲う必要はない。それになんか可愛いし。
「その通りだ。それに、いやそれ以前に——こいつは強いぞ。」
ドゴゴルの声色に混じっていたのは5分の好奇心と5分の恐怖だ。
言われて初めて俺はその骸骨を凝視する。確かに少し皮膚を纏う汚い骸骨とは違い、純粋な骨だけに見えるその姿は確かに有象無象の骸骨とは一線を隔てていた。それにやはり知性があるのは魔物として一種のステータスだろう。
するとその骸骨は右手を少し挙げる。右手を眩い光が包み、魔法を発動させた。
〈精神干渉〉
刹那、脳内に声が響く。
『我は偉大なる王に仕えし古代聖骸骨である。用件を聞こう。』
脳内の声の主は目の前の骸骨であると悟る。古代聖骸骨とはまた強そうだ。
「君たちを傷つける気はない。その王とやらに会わせてくれないか。」
魔法などを一切使用せずに言ってみる。
『その理由が知りたいと言っている。王は今お眠りになられている。』
「ここに真なる邪竜が向かっていると聞いた。その邪竜は非常に邪悪だ。実際こいつらの同族も蹂躙された。奴がここに来るのなら共に闘う必要がある。そのための話し合いがしたい。」
半分嘘を吐く。とはいえ半分本当だからな。ひとまずその王とやらに会わなければ始まらない。
『なるほど。それは確かに十分な理由と言える。』
「なら」
ドゴゴルが言いかけると、骸骨はそれを手で制した。
『しかし、だ。私はそれを素直に信じるほど馬鹿ではない。なにか証明できるものはないのか?その邪竜とやらの情報も少し聞かせてもらおう。』
「邪竜は強い。俺たちでは歯が立たないほどに。少なくとも
大勢での共闘は必要だ。」
『そのために来たのだろう?なんの証明にもなっていない。』
バレた。
「証明できるものは……な」
い。と言いかけたところで口を挟んできたのはリールだった。
「この身が何よりの証拠であろう。毒蠍蠍族は群れて生活する。まして私は王族であるぞ。そんな者が1匹でいるはずがなかろう。」
『なるほど………分かった。良いだろう。しかし……我も王と御拝謁をしたことはない。』
「「「は??」」」
は? である。いやいや、は? である。
『王が玉座の間から出られたことはない。我のかつての主を絶する力を持つことだけだ。我らが知っていることは。』
「かつての主?」
『ふむ…うーむ、うぬ。』
少し悩んだかと思うと、決心がついたようで顔を少し上げた。
『我にまだ知性がないころである。我らは強者に従う本能があるのは知っておるな?』
当然、という具合に聞いてくるので頷かざるを得なかった。実際ドゴゴルもリールも頷いているので間違いではなかったようだ。
『我らの住んでいた洞窟にある強者が生まれてな。不死の大賢者というのだがな。不死王を名乗り、洞窟の不死者を従えてこの街を襲ったのだ。玉座に不死王が到着した後消滅したのはすぐに分かった。そしてそれ以上の強者があることも、勿論わかる。その王に我らは従属を誓ったというわけだ。と言ってもそれ以来1度もお目覚めになられないのだがな。』
まるで機械だな。なんて安易な感想を飲み込む。なるほど。この城にはやはりというべきか、強者が存在するようだ。それがスタンピードを起こしたとされる不死者でないのは少しだけ想定外だ。
『という訳だ。王に会いたいというのであれば玉座まで自力で行くことだ。殺傷は…』
骸骨が少しだけ逡巡する。
『まぁ、なるべく避けてくれ。』
「了解した。じゃあ。」
『うむ。』
俺たちは再び城に目を向ける。
禍々しく、神聖な城に。




