#29〔ヒーロー〕
「ぐっ!」
声を出したのはドゴゴル。酷く苦しそうだ。これが邪竜の使った〈真核蝕〉の効果であることはすぐにわかる。
そのときだった。
それこそ漆黒の、憎悪に塗れたオーラがドゴゴルから放たれた。
「な、にが?」
精一杯の声を出す。
そして次の瞬間、俺は驚愕する。
そこにいたのは石巨人のそれではなかった。身体が漆黒に染まり、その上に艶やかな黒い鱗が幾つもあった。そう——まるで邪竜のような。
氏名:ドゴゴル
種族:漆黒の復讐鬼
職業:生贄→黒への反逆者
HP:398
MP:0
筋力:308
防御:333
魔力:0
魔防:296
素早:80
器用:74
幸運:541
スキル:炎耐性
固有スキル:混沌属性無効、誇り高き戦士
称号:誇り高き者、覚醒者
その変化はステータスを見ても瞭然であった。強い。強いのだ。もちろん邪竜とは比べ物にならない。しかし強い。ステータスも、スキルも称号も。
それは確かな成長であった。
「はぁ、はぁ、はぁ」
ようやくドゴゴルが落ち着いたようだ。
ドゴゴルの顔は清々しかった。黒に染まっていながらも。
「くっ、くくくく」
何がおかしかったのかドゴゴルが笑い声をあげた。
「ここで逃したこと、後悔させてやる」
ドゴゴルは言い切った。強いのだな。その精神までも。兄を殺され、その張本人に敗れ、それでも挫けない強さ。それは誇り高き戦士と呼ぶに相応しい。
「なぁドゴゴル、俺と来ないか?」
「?——どこに、だ?」
「どこまでも、だ。あのクソ竜を倒すときまで、な」
「そりゃあ魅力的な提案だな」
「だろう?なんなら集落の奴らも連れて行っていいんだぞ?ここじゃ負のオーラで生きにくいだろ。それに邪竜の鎖からも解放される」
「ますます魅力的な提案だな」
「そうと決まれば——帰るか!」
「だな!」
ドゴゴルの顔に、憎しみも、後悔もなかった。ただほんの少しだけ、復讐の香りが漂うだけで。




