#30〔永い闘いの序章〕
「ドゴゴルさん!」
集落に近づいてきたあたりでドゴゴルに声がかかる。あれは…あの時の少年だな。
「無事だったんだね!逃してもらえたの?」
「あぁ、逃してもらえたよ。にしても、よく俺ってわかったな」
漆黒に染められたドゴゴルは一見すると敵にすら思える。
「そりゃあそうだよ!どうみてもドゴゴルさんだもん!」
すると奥の方からわらわらと石巨人たちが集まってきた。
誰もが驚愕し、安堵した。
そしてドゴゴルは切り出す。
「なぁ。みんなに少し提案があるんだ」
ゆっくりと語る。
「この虫——俺の仲間のカジと、そして俺と、ここを出ないか?」
誰もが口をあんぐりとあけた。
「どこかへ移動したとして、生活していくことができるのか?」
問うたのはご老人、長老というところだ。
そしてこの場合答えるのは俺だろう。
「大丈夫だ。眷属達が食べ切れていないウルフが山ほどある。食べ物に困ることはない。それに俺の眷属になると誓うならば亜空間に入ることだってできる」
「確かにそれは魅力的だが…一晩、くれないかね?」
「もちろんだ。じっくりと話し合ってくれ。俺は今日はここまでにさせてもらうから、明日聞きに来るとする」
「あぁ、感謝する」
そして俺はそのままログアウトした。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
翌日。俺は再びFSOにログインしていた。
「カジさん、ですね?」
話かけてきたのは昨日の老人ではなく、比較的若い男の石巨人だった。
「私がこの村の村長、バーミルールーだ。
それで昨日話あった結果なのだが……」
——ゴクリ
唾を飲んだのは誰だろうか。
「私たちも、ついて行かせてもらいたい!」
ふぅ。俺は安堵する。眷属も増えて賑やかな事だ。
これも単にドゴゴルの人望あってのことだろう。もし俺が突然現れて同じことをしても、誰もついてこないはずだ。ドゴゴルが信頼している人(虫)なら…ということだ。
「もちろんです。では」
「はい。わかっております」
「「「我々石巨人はエルダーコックローチ、カジ様を主人とし、従属を誓います」」」
寸分乱れぬ声で石巨人達は誓いをたてた。
「あのクソ竜の肉を喰らうその時まで俺たちは運命共同体だ!」
「「「おぉおおっ!」」」
眷属となった石巨人総勢38名。
「カジよ。私からも——」
ドゴゴルが何かあるようだ。
「なんだ?」
「我、漆黒の復讐鬼、ドゴゴルは邪竜を倒すその時まで、エルダーコックローチたるカジ様に眷属となることを誓います」
まさかだった。
「おいおいマジかよ」
「あぁ。当たり前さ。お前ならきっと、やってくれるだろ?」
「おうよ!『真の最恐』になってあんな竜はぶち殺してやんよ」
「そりゃあ頼もしいな、ご主人よ」
「やめろ。気持ちが悪いわ」
「それは少し酷いんじゃないか?もっと眷属を大事にした方がいいぞ?」
「俺ほど眷属を大事にしている奴はいないだろうよ」
一頻り笑い合った俺たちは熱く、そして固い握手を交わした。
これが——これこそが、
——永い闘いの序章である。




