#28〔羽虫〕
カジくん混乱中につき三人称視点です
その空間にいる者たちの表情は対照的であった。
つまらなそうに座る竜、絶望する虫。
そして——
その石巨人は憤怒していた。兄を奪った竜に、だ。
「うぉおおおおおお」
ドゴゴルに考えなどなかった。ただただ憤怒に全てを委ねていた。
「くくく、面白い羽虫だ」
邪竜の胸の辺りに漆黒の魔法陣が映し出される。そして即座に繰り出す。
〈真核蝕〉
「ぐぁっ!」
パタリという感じ。ドゴゴルは倒れた。心臓の辺りを押さえながら。
「今使った魔法は徐々に精神、肉体共に蝕んでいく魔法だ。遅効性魔法の中では最強であろうな。蝕まれていくのがわかりながらそれを阻止できない。お前に待つ運命は「死」のみだ。抗うことの許されない運命を呪って死にゆくことになるだろう。なんと愉快なのか!リミットは3ヶ月だ。それまでにせいぜい私を超えてみると良い」
——くははははは
虚空に低い笑い声が木霊する。
「いつでも待っておるぞ。羽虫よ」
そう言うと邪竜はゆっくりと虚空の空間の奥へと進んでいった。
なんというやつだ。ようやく冷静さを取り戻したカジは思う。そして邪竜にとってこれはただの茶番であったとも理解する。
邪竜にとって俺やドゴゴルを逃したのに特別な理由はないだろう。羽虫を逃すか殺すかなど、強者からすれば些細な事ですらない。出来事の内に入っていないのだ。
あれが強者にのみ許された態度。
あの邪竜に勝つ姿を、カジは想像出来なかった。




