#27〔真の強者〕
戦闘職の眷属を全て出す。
元々強いのは承知していた。——だが、ここまでの威圧感があると誰が予測できるだろうか。恐怖を、絶望を具現化したようなその竜に牙を向けなかったことを、誰が責められるだろうか。
「それで贄よ。そこの虫けらはなんだ?もしかして昨日やってきた羽虫の親玉とかなのかな?」
「その通りだ。ここでお前を倒させてもらう!」
震えそうになるのを必死に堪えて言う。精一杯の見栄だった。
「おぉ、それは怖いものだ」
邪竜からは驚くほど敵意を感じない。本当にそこら辺の羽虫に向けるような、そんな視線を向けてくる。
「488匹か」
!?……488匹——戦闘職としてここに出した眷属の数と一致する。
「ではまずは……」
邪竜がすぅ、と息を吸う。何かの予備動作だった。
そして——それは放たれる。
〈混沌の吐息〉
それは漆黒だった。様々な色が混ざり合い、まさしく混沌であったその吐息は、どこまでも漆黒だった。邪竜が纏うオーラのような絶望が、恐怖が、そして死が。全てが醜悪であった。これほど醜いものはないだろう。
しかし——それは美しかった。
俺は理解する。これが強者だ——と。
これが最強だと。これが最凶だと。これが最恐であると。
勝てない。これは絶対に勝てない。
眷属の内約8割がやられた。残った眷属は100匹といない。
真の強者を前に、俺はなす術がなかった。




