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アンバランサー・ユウと世界の均衡  〜唯一無二の属性<アンバランサー>を持つ少年が世界を救う!  作者: かつエッグ
第二編 「星の船」

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わたしは、雷魔法を放ちそうになる。

「任せてくれ。この、鍛冶師マクスウェル一世一代の仕事だ。わしの持てる技をすべて注ぎこんで、世界最高のクリスを鍛えてみせるぞ!」


 マクスウェル親方は、どんと自分の胸をたたいて、吠えた。


「なにしろ、あんたにはほんとうに世話になったからなあ」

「よろしくお願いします、マクスウェル親方」


 ユウは頭を下げた。


「親方、気合が入りすぎて、また、やりすぎにならないといいけどねえ…」


 ジーナが小声で言った。

 ともあれ、マクスウェル親方は自信をとりもどし、全力で仕事にかかってくれるようだ。

 これで、わたしたちは、クリスが仕上がるのをまつだけである。


「さて、ぼくらは、これからどうしようか。せっかく王都に来たんだから、ライラ、ジーナ、行きたいところあるかな?」


 たしかに、到着早々、マクスウェル親方のハンマー騒動にまきこまれ、わたしたちは、これまで王都をたのしむよゆうなどなかったのだった。


「はいっ!」


 ジーナが手をあげた。


「あたし、あります!」

「うん、うん、ジーナはどこにいきたいの?」

「あたしたちって、冒険者パーティ『雷の女帝のしもべ』じゃん」

「それは、そうだね」

「だから、やっぱり、ここはひとつ、王都の冒険者ギルドに顔を出したいな。どんなところか、見てみたい」

「冒険者ギルドか…」


 ユウがなんとなく引いている。


「だめ?」

「いや、いいんだけど…なにか、行くと、もめごとが起きそうな気がする…。ほかには?

「はいっ!」


 またジーナが手を上げる。


「せっかくだから、大聖堂も見物したいな。神様がいるところ」

「大聖堂か…」

「だめなの?」

「いや、まあ、いいんだけど…なにか、行くと、めんどうが起きそうな気がする…」

「なんなの、ユウさん。どこに行きたいかって聞いたのは、ユウさんだよ」

「そりゃそうだ…」


 ユウは苦笑した。


「で、ライラはいきたいところある?」

「うーん…そうだなあ…ほんとは、王立古代遺跡院とか見てみたい気もするけど。まあ、一般人は入れないとは思うけどね」

「王立古代遺跡院! そここそ、めんどうがおきそうだな。いちばん、行ってはマズい場所な気がする…」

「だからさあ、ユウさん、聞いておいてそれはないでしょ!」


 ジーナが言う。


 ということで、わたしたちは、まず、ジーナの希望にそって、王都の冒険者ギルドを訪れることになったのです。もちろん、ユウの危惧したとおり、めんどうは起こったわけですが…。あっ、よく考えたら、このユウのせりふって、例の「ふらぐ」ってやつじゃないですか? わたしもだんだんわかってきましたよ。



 冒険者ギルドは、一国だけのものではなく、国家から独立した国際的な組織となっている。

 ギルドと、国との関係はいろいろで、たいへん協力的にやっている地域もあれば、反目しあっているような地域もある。

 ここ、王国ではといえば、まあ、あるていどの緊張関係はありつつも、完全に敵対的ではなく、必要なときは協力しあう、というところだろう。

 王国に危機が迫れば、ギルドは依頼をうけ、王都防衛や敵を攻撃するなどの任務に就くこともある。もっとも、それほどの事態は、幸い、百五十年前、ルシア先生が戦って魔力をうしなった、あの魔獣の侵攻以来絶えてなかったが。

 なので、王国のギルドは、王都の中心にどうどうたる建物をかまえて、活動している。


「これかあ…」


 ジーナが、大通りに面した冒険者ギルドの威容をみて、声をあげた。


「王都のギルドは、さすがにすごいや」

「ふうむ、まるでどこかの国の()()()()()みたいだ」


 とユウがまた、よくわからないことをつぶやく。

 広大な敷地を、防壁でとりまき、その中心部にがんじょうそうな立派な石造りの建物がたっている。


「入れてくれるのかな…」


 わたしが言うと


「なにいってんの、ライラ。あたしたちは、『雷の女帝のしもべ』なんだから。ギルドカードだってあるんだから。どうどうと行きましょう! あっ、あっちから入るみたいだよ」


 ジーナの指さすところに、門があって、冒険者たちが、列をつくっていた。

 筋肉隆々の体格に、大きな剣を背負った、きびしい顔のこわもての戦士。

 背はそう高くないが、厚い胸と太い腕をして、頑丈そうな盾を抱えた、盾術師。

 黒いローブをきて、フードをかぶって顔を隠し、黒檀の杖をもった怪しげな魔法使い。

 身軽そうな装備の、目つきの鋭い、おそらく斥候盗賊スキルをもった冒険者。

 体は細身だが、長い刀を腰に差して、そこはかとなく殺気を漂わせている剣士。

 大きな袋を肩に担いだ、でっぷりした商人風の人もいる。


「あれって、()()()()?」


 などと、ユウがわからないことをいうが、いつものことだ。

 種族も、ヒト族をはじめ、獣人族、エルフ族、ドワーフ族、さらには見当もつかない謎の種族など、さまざまな種族がみられた。

 さすが王都のギルドだ。

 そんな冒険者たちが、みんなギルドの建物に向かっている。


「あたしたちも、早く、いこうよ」


 ジーナがいって、列に並ぶ。

 門衛は、冒険者からカードをうけとると、さっと確認し、


「次」


 表情も変えず、一言いうだけで、不愛想である。

 そうやって、列はだんだん移動していく。

 わたしたちが列に並んでいると、後ろから


「おいおい、ここはお子様がくるところじゃないんだけどな…」


 などと、ばかにした声がかかる。

 ジーナが、さっとふりむき、相手をきっとにらむ。


「んん? 文句でもあるのかな? 親切心でいってやってるんだよ、こちらは、よぉ」


 すらっとした体形の、金髪の男で、長剣を腰に差していた。

 それなりに整った顔立ちだが、なんとなく軽薄そうだ。

 となりには、ローブをはおり、杖をもった初老の魔法使いが、こちらもにやにや、笑って立っている。


「へえええ、それはそれは、ご心配いただき、ありがとうさま」


 ジーナが、目を金色に光らせていった。


「でも、僭越ながら、あたしのみるところ、あんたたちこそ、王都のパーティにしては、ちょっとばかり実力不足じゃあないでしょうかねええ」


 ちょっとちょっとジーナ。

 いきなり何やってるのよ。

 たしかあんた、しばらく前に、獣人の子どもに「短絡的なのはダメ」とか説教してなかったですかね。

 そんなにすぐ挑発にのって、どうするのよ…。


「なんだと? 身のほどをわからせてやったほうがよさそうだな…だいたい、じゅ」


 あっ、あなた、その先をいうとまずいよ、とわたしが思った瞬間


「やめときな」


 タイミングよく、ドスの利いた声ががかった。


「あっ、リベルタスさん」


 やってきたリベルタスさんは、わたしたちに軽く手をあげると、


「おい、知らないのか、ギルド周辺でもめ事をおこすと、あっというまに門衛がやってきて、カードをとりあげられちまうぞ」


 剣士と魔法使いにいい、あごを門の方にしゃくった。

 無表情な門衛が、動きをとめ、こちらの様子をじっとみている。


「ちっ、命拾いしたな…」

 いまいましげに、わたしたちに言い捨てた。

 うーん、たぶん、命拾いしたのはそちらだと思うよ。

 あの先をしゃべっていたら、きっとユウが怒って、あんたら、たいへんな目にあってたと思うな。


「リベルタスさんも、王都のギルドに用事が?」

「うむ、この間こなしたクエストの登録をな」

「あっ、あたしたち、ずいぶんやってない!」

 とジーナ。


「まめに、やっておいたほうがいいぞ。ランクをあげたいならな」

「そうですよね! よし、あたしたちも、ついでに、ここでやっちゃおうよ!」


 ジーナが、わたしとユウに言うが


「うーん…、あれか…。あれやると、いつもねえ」

「だいじょうぶだよ、ユウさん、なんといっても王都の設備だもん、きっとモノが違うよ」

 ジーナが根拠のない発言をする。


「気が進まないなあ…」


「どうせ、たいしたクエストなんかしてないくせによ…」

 さっきのやつが、うしろでぶつぶつ言っているが、無視だ。


「次」

「次」


 そうこうするうちに、わたしたちの番がやってきて


「次」

「次」

「次…ん?」


 淡々と進めていった門衛が、ユウのカードをみて、ちょっとためらい


「おいおい、インチキなカードじゃないのか?」

 さっきの剣士がヤジをとばしたが


「いや、問題ないな、次」

 なんとか、ぶじに通過できたのだった。


「なんか、あぶなかったなあ…」

 とユウ。


「なにか、おかしなものを感じたのかなあ」

「なにしろ、ユウさん、これまでに機械をなんども壊しちゃってるもんねえ」

「だから、気が進まないんだよ…」


 わたしたちは、門を抜け、ギルドの建物にむかう小道を歩いて行った。


 おおおっ!

 わあっ!


 敷地の向こうのほうから、おおぜいの人のどよめく声がきこえてくる。


「なにか、催し物でも、やっているのかな」

「なんだろうね」

「すごいね、敷地のなかに、そんな場所があるんだねえ」


 などと言いながら、冒険者ギルド王国中央本部の建物にたどりつく。

 冒険者ギルドの紋章が浮き彫りにされた巨大な扉は、頑丈に金属で守られ、その上についたいくつもの傷跡が、わたしたちの町のギルドと同じく、独立不羈のギルドの気概をしめしている。


 ガランガラン!


 扉を開けると、ドアベルが鳴り響くのも同じだ。

 これはたぶん、どの冒険者ギルドにいってもこうなっているのだろう。


「うわあ、なかも広いや」


 ジーナが思わず声を上げた。


「ハハハ、田舎者がきたようだな」

「あんな弱っちくて、パーティなのか?」

「おおかた、薬草集め専門なんだろ」


 などという声が聞こえるが、まあ、いつものことである。

 ジーナも、さっきの今なので、いきなり暴発はせずにこらえているようだ。

 えらいえらい。


「あんな連中にも、師匠ってやつがいるのかねえ」

「せいぜいが、田舎のへぼ魔術師だろうな」


 なっ、なんだとぉ?!


 とたんに、高い中央ホールの天井付近に、むくむくと、不穏な黒雲が発生し、その中でぴかぴかといなびかりが光りはじめて


「ちょっと、ちょっと、ライラ!」

 ジーナがあわてて、わたしを止める。


「あんた、なにやってんのよ!」

「あっ」

 わたしもあわてて、無意識にやっていた雷魔法の詠唱をとめた。

 黒雲は、すうっと薄れて消えた。


「なんだ?」

「いったい、何事だったんだ?」

「あれ、魔法じゃないのか?」

「おいっ! だれだ、こんなところで魔法を使おうとしたやつは!」

「あれは雷魔法だぞ、めちゃくちゃにもほどがある!」


 大騒ぎになっている。

 ユウが、あきれたように言った。


「ライラ、気持ちはわかるけど、君って、なんだか、だんだん性格がジーナと…」

「そんなことは、けっして、ありません!」

「なによ、その言い方は」


 わたしたちが小声で言い合いをしていると、


「あのー」


 そっと声がかかった。


「ひゃっ、すっ、すみません」


 おもわずわたしは謝ってしまったのだが、そこには、ギルドの女性職員が、にこにこしてたっていて


「みなさん、はじめてお目にかかる方々ですね。今日は、どのようなご用件でいらっしゃられたのでしょうか?」


 美人の獣人女性職員は、どこかでみたことのあるような顔をしている。


「わたくし、ここの職員をしております、フェリシアと申します」


 フェリシア…まさか?


「あの…フェリシアさん」


 ジーナも同じことをおもったのだろう、フェリシアさんに聞いた。


「ひょっとして、ご親族のかたで、アリシアさんというかたが…」

「まあ!」


 フェリシアさんは顔をぱっと輝かせ


「アリシアをご存じですの? わたしの妹です。アリシアも、王都ではありませんがギルドで働いているんですよ」


 ああ、やっぱり。


「そうなんですね、アリシアさんのお姉さんですか。よろしくお願いします」


 とユウがあいさつし


「アリシアさんのいる町から、用事があって、王都に出てきたんですよ。今日は、ここの見学と、あと、この二人がカードの更新登録をしたいそうです」

「わかりました! ではこちらにおいでください!」


 そういうと、フェリシアさんは、いきなりユウの手をつかんで、ぐいぐいとひっぱっていく。

 まったく、行動パターンが同じ姉妹だった…。


いつも読んでくださってありがとうございます。ここからしばらくは、主人公たちは王都を楽しむ(?)予定であります。


面白ぞ、次を読みたいぞ、そう思われた方は応援を!


フェリシア:うーん、この不思議な匂い、なんだろ。いいねえ!

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