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アンバランサー・ユウと世界の均衡  〜唯一無二の属性<アンバランサー>を持つ少年が世界を救う!  作者: かつエッグ
第一編 「エルフの禁呪」

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帰りの列車で、その人は涙ぐむ。

 ダミニさんとサラマー、三人の戦士が見送ってくれて、わたしたちは、いよいよ帰りの弾丸列車にのりこむ。

 列車には、シンドゥーで買い込んだ、大量の食材も積まれている。

 スパイスや、甘いシロップもあるが、いちばんかさばっているのは、もちろん、ユウがほしがったお米である。


「ふふっ、これで、毎日お米が食べられるなぁ」


 ユウは、お米がつまった麻袋の山をみて、感慨深げだが、正直、わたしやジーナは、それほどの気持ちはない。

 どちらかというと、わたしたちに大事なのは、あの甘―いシロップだ。帰ったら、さっそく、あの激甘菓子を作るんだ。みんなの驚く顔が目に浮かぶよ。


「では、ダミニさん、いろいろお世話になりました」

「こちらこそ、ありがとうよ。これからは、この列車で、簡単に来られるから、また遊びに来ておくれ」


 別れの挨拶をして、そして、列車は滑り出す。


「ふう…やれやれ…」


 列車が何事もなくステーションを離れ、わたしは、ほっと息をついた。


「これで、シンドゥーの国ともお別れだね。ヴリトラ様に付きまとわれるのも、もうおしまい」


 ヴリトラ様の蜘蛛は、ようやく、わたしの首筋をはなれて、帰っていったのだった。


「ライラ、その言い方はないよ」


 と、ジーナ。


「ヴリトラ様は、口は悪いけど、あたしたちのこと、いろいろ助けてくれたじゃん。そこにはきちんと、感謝の気持ちを持ちなよ」

「あんた、ずいぶん、まともなことをいうようになったねえ…」

「ふつうです」

 

(まあ、たしかに、今回の件ではいろいろと助けてもらったから、それはそうだけど、でも思い返してみると、最初が最悪だよね。なにしろ、わたしはあんな場所でさらわれたのだ。花も恥じらう乙女に、あれはないでしょう?)


「そう言うな、娘」

「うわっ!」


 ヴリトラ様の声が聞こえ、そして、正面の()()()()()に映る画像が、ぱっと切り替わった。

 列車の進路ではなくて、なにか、暗いトンネルのようなものが映っている。

 なんとなく、見覚えのある光景だ。


「うう…ライラぁ、用足ししてて死んじゃうなんてあんまりだぁ」


 ジーナの泣き声が流れた。


「ま、まさか…」

「こ、これって?!」

「わたし、ものすごく、いやーな予感がするのですが…」


 あわてるわたしたちに、ヴリトラ様の声が


「君たち、道中退屈だろう。向こうに着くまで、この間の出来事を、上映してあげるよ。

 わたしが腕によりをかけた、特別編集の総集編だ。さあ、存分に楽しみなさい」


 そして、ヴリトラ様が記録してあった、わたしたちの戦いの映像が、音声付き、解説付きで、大画面で始まってしまったのだ!


「いやー、やめてー!」


 いちばん慌てたのは、ルシア先生だ。

 ルシア先生が登場する場面では、ヴリトラ様は熱が入ったのか、ショックをうけるルシア先生の横顔に、


 ががーん!


 という効果音が入ったり、


「わたしが、助ける!」


 という、決然としたルシア先生のせりふとともに、悲壮な音楽が流れて場面を盛り上げるなどの、やりすぎとも思える演出入りである。


「ユウ! ユウ!」


 などと、ユウにすがりついて自分が泣き叫んでいるところを、大画面で見せられるのだから、ルシア先生の心中、察するにあまりある。


「ヴリトラ様、とうとう、()()()()()()()になっちゃったよ…」


 ユウがあいかわらず、わけのわからないことを言う。


「クライマックスはもちろん、最新の()()場面だからな。あれを外すわけにはいくまい。いやー、編集していてわたしもほろりとしたね」


 とヴリトラ様が、とどめの一言である。


「ユウ、あなたの力で、この上映を止めて! 今すぐとめて!」


 ルシア先生が泣きつくが、


「うーん…だめみたい。やってみたけど、ヴリトラ様の力が干渉している。もっと、シンドゥーから離れないとだめだな…」

「そ、そんなあ…」


 けっきょく、わたしたちは数時間以上にわたって、ヴリトラ様の映像を見せつけられた。

 その間、ルシア先生は耳をふさいで頭を抱えていた。

 ユウは、「()()()()()()()()()がほしいな…」などと、あいかわらずわけのわからないことをいいながら、熱心に鑑賞していて、ルシア先生の出てくる場面などでは、感動して涙を流しているのだった…。

 けっこう、涙もろいのである。


いつも読んでくださって、ありがとうございました。あと、短い二章で、当初の構想としては完結です。


楽しんでいただけたでしょうか。


ジーナ:あっ、ライラ

ライラ:なによ

ジーナ:今、ライラのパンツ映ったよ!

ライラ:もう! そういうこと言わないの!

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