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アンバランサー・ユウと世界の均衡  〜唯一無二の属性<アンバランサー>を持つ少年が世界を救う!  作者: かつエッグ
第一編 「エルフの禁呪」

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ルシア先生は、その人の手を握った。

 わたしとジーナは、それぞれの修行にはげんだ。

 ギルドからの連絡は、なかなか来ない。

 やはり、ダンジョンの壁が内側から破られるというのは大ごとなので、しかるべきところに連絡をしたり、調査に参加する顔ぶれの調整をしたり、資材を揃えたりと、いろいろ段取りをするのに手間取っているのだろうか。

 そんなある日、ルシア先生が、朝早く、良く晴れた空を見上げて、


「さて、そろそろかしらね」


 といった。

 そして、しばらくすると


「ルシア様~」


 サバンさんが、息せきって、わたしたちの孤児院を訪れた。


(ついに、来たか!)


 と、わたしとジーナは緊張に顔を見合わせたのだが、話は、ぜんぜん、わたしたちの予想のようには進まなかったのだ。


「ルシア様、どうされましたか。仰せのままに、急きょ時間を空けて参上しましたが…?」


 サバンさんは、来るなり、けげんな顔でルシア先生に聞いた。


 どうも、探索の準備がととのったのではなさそうだった。


「サバン、どうもありがとう。呼びつけてわるかったわね」

「とんでもありません、ルシア様のご指示とあれば、なにがあっても…」

「うむ。それでは、あなたに、どうしてもお願いしたいことがあるの」

「はい! なんなりと」

「では、サバンあなたは、今日いちにち、わたしのかわりにこの孤児院の番をしなさい」

「へ?」

「ここで、こどもたちの世話をしてちょうだい」


 サバンさんは口をぽかんと開けて、


「はい? 俺が孤児院の…? それで、ルシア様はどうされるのですか?」


「わたしは、ダンジョンに行ってきます」


「ええっ?」

「この、『雷の女帝のしもべ』たちと、今からダンジョンにでかけてくるわ」

「「「はあっ?」」」


 サバンさんはもとより、わたしとジーナももちろん、驚いた。


「なにしろ、ライラもジーナも、ダンジョンにはまだ潜ったことがないから。

 ちょっと経験をつませるわ。

 修行の成果もみたいし」

「いや、ルシア様、それは…」

「だいじょうぶです。そんなに深いところにはいかないから。

 それに、あなたは、このわたしの力を疑うとでも?」

「いえっ、めっそうもありません!」


 ルシア先生はにっこりして、


「ではいいわね。サバン、孤児院の留守番、よろしくね」


 ルシア先生、やっぱり、なにかおかしくなっちゃった。

 いきなり、こんなことを言い出す人ではなかったと思うんだけどな。

 楽しそうではあるけど。



「さて、それで、と」


 ルシア先生は、院長室にわたしたち「雷の女帝のしもべ」を集めて、言った。

 わたしたちはおのおの、ダンジョンに向かうための身支度をして集まったのだ。


「ジーナには、このまえ契約したイリニスティスがあるから、いいとして…ライラは」


 そういって、部屋のクローゼットを開け、


「これを持つといいかな…」


 わたしに、ひとふりの杖を手渡した。

 端に魔石がはめこまれた、ところどころが曲がっている赤褐色の木の杖だった。


「ちょっと、持ってみてね」

「あっ、なにか力を感じます。わたしと、杖の間に魔力が往復するようです」

「よさそうね。それはエルフの森のセイレイガシからつくったもので、魔法を使いやすくしてくれるわ。あなたは、これを使いましょう」

「はい、ありがとうございます、先生」


「それから、あとは、ユウさんね」

「ぼくもですか…」

「そうよ。あなたには武器は必要ないかもしれないけれど、まあ、念のために、なにかひとつくらい持っていてもいいでしょう?」

「あまり、そういう心得はないけれど…」


 ユウはあまり気乗りしない様子だったが、そんなユウにかまわずルシア先生は、クローゼットのなかをかきまわし、


「たしか、このへんに…ああ、あった、あった」


 そういって持ち出してきたのは、


「これは、クリスですね」


 独特な、波打つ刀身をもった短刀である。

 黒い刃には、呪術的な価値のある紋様がきざまれている。


「そうです。これは、わたしの家系のものが、みな、ひとふりずつ持っているものです」


 そんな大事なもののわりには、なんだか無造作にしまってあったような気もするが、たしかにその刀は格調高く、武器としての鋭さに、美しさも兼ね備え、エルフの至宝といってもいいような逸品に思える。


「ぼくが、これを持っていていいんですか?」


 ルシア先生はうなずいた。


「持っていてください。そのクリスには、いろいろな能力がありますから、どこかで役に立つはずです」

「そうですか…では、ありがたく、身につけさせていただきます」


 ユウはそう言って、クリスを腰に結びつけた。


「ねえ、それで、ルシア先生は、何を持つんですか?」


 ジーナが聞いた。

 ルシア先生は、


「わたしは、これよ」


 といって、本棚の横に立てかけてあったものを、ひょいと掴んだ。


「それって…」


 たしかに、以前からそこにあったのだが、ルシア先生があらためて構えるまで、まったく気にも留めなかった。

 金属製の長い棒の先に、鎖でつないで可動性をもたせた、トゲのある短い棒がつけてある。

 これで相手を殴りつけると、先の部分が遠心力で急速に叩きつけられ、より強い衝撃を与える。

 いわゆるフレイルである。


「わたしの得物は、これなの」


 そういって、石突で、床をどんと突いた。

 鎖がじゃらんとなった。

 なにか、おっかなかった。

 ルシア先生、こんなものをふりまわすの?

 わたしの知っているルシア先生は、どこにいってしまったのか。

 でも、よく考えてみれば、これをふりまわしてた方の人が、もともとのルシア先生、いや大魔道士「麗しの雷の女帝」なのだ。


「では、みんな、いきましょうか」


 そういうと、ルシア先生が、フレイルの石突で、部屋の床をさっとなぞった。

 すると、そこには複雑な模様に輝く魔法陣が出現した。魔法陣の模様は、黄色と緑に光っている。


「これは…」

「時間ももったいないし、手っ取り早く、ダンジョンの入り口までは転移魔法で移動します」


 転移魔法…ルシア先生、そんな大魔法まで使えたんだ。いったい現在、この地上で、何人の魔法使いが使えるのか、といえるぐらいの高度な魔法である。

 さすが、伝説の大魔導士だ。


「さ、ライラはそこ、ジーナはそこに立って」


 魔法陣上の位置を、ルシア先生が指定する。

 わたしとジーナは、指示に従って、魔法陣の前半部分で光る小円の上に、並んで立つ。


「わたしは、ここ。ユウさんはここに」


 ルシア先生は、魔法陣の後半部に位置し、ユウを自分の横に立たせると


「さあ、いきましょう」


 そういって、自分の左手で、ユウの右手をぎゅっと握った。

 わたしが、振り返ってそれをじっとみていると、先生はことさらに


「手を繋ぐのは、ユウさんは、こうやって接触しないと、魔法の効力内に入らないからです。

 他意はありません!」


 そういうのだが、本当だろうか。

 なんだか怪しい気もする。

 他意がないなら、なぜ顔を赤くするのか。

 疑問を感じずにはいられない。


「と、とにかく、いきますよ」


 ルシア先生は転移魔法を詠唱する。


「土と風の精霊の舞踏により異なる光と影が成約する、転移!」


 わたしたちのからだは、光の渦に包まれ、そしてーー跳んだ。


いつも読んで下さってありがとうございます。ルシア先生がいきなり言い出して、ダンジョンに突入です。


面白いぞ、続きがよみたいぞ、という方は応援のポチを。


サバンさん:ルシア様さいきん人使いが荒いなあ…でも、そこがいい(❤️)

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