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アンバランサー・ユウと世界の均衡  〜唯一無二の属性<アンバランサー>を持つ少年が世界を救う!  作者: かつエッグ
第一編 「エルフの禁呪」

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わたしの魔法訓練を、その人は、お茶しながら見守る。

「それでは、始めましょうか、ライラ」

 と、ルシア先生が言った。


 よく晴れた午後の、孤児院の庭先だった。

 青い空のもと。

 枝を大きく広げたサンコウジュの巨木の木陰。

 緑の葉を茂らせた枝のそこそこに、白く小さく咲いている花からは、爽やかな香りがしていた。

 置かれた丸テーブルに、ルシア先生とわたしは、向かい合って座っている。

 わたしは、ルシア先生から一対一で魔法の指導をうけているのだった。

 考えてみれば、こんなにありがたいことはない。

 伝説の魔道士「麗しの雷の女帝」から、その経験と知識に基づいたこの世界の魔法の奥義を、おしげもなく伝えてもらえるのだから。


(がんばらないと!)


 わたしは、こころに誓い、ルシア先生のことばを一つも聞き逃すまいと集中する。


「あなたには言うまでもないことだけど、この世界の魔法は、世界に満ちている火水風土の四つの根本のエレメントと、それを統括する光という要素によって構成されている」

「はい」

「あなたが魔法を使うとき、その力はどこからくるかというと、基本的には、この大地にみちている四つのエレメントから来る。

 魔法の詠唱は、それぞれのエレメントを司る精霊に依頼して、エレメントの力を借りてくると言うこと。

 精霊は、つまり、それぞれのエレメントが持つ力をとりだし、わたしたちに受け渡ししてくれる力の門ということになります。そして、その門を小さく開けるのか、大きく開けるのかに関係するのが、こちら側の魔力。術者が魔力を多く使えば、門は広く開き、エレメントからは大きな力が流れてくる」


ルシア先生の説明は明快だ。


「精霊から受け渡された力を、その力の特質にあった形に変形操作して、世界に働きかける、これがつまり魔法の行使です」


 わたしは、最初から疑問に思っていたことを、この機会に聞いてみた。


「先生、そうすると、ユウさんの力は、なんなんでしょうか? あれはどのエレメントとも違う気がします」

「そうね、そのとおり。それがわかるあなたには、やはり、持って生まれた魔法の感覚があるのよ」


 ルシア先生は、うれしそうにそう言った。

 そして続けた。


「アンバランサー・ユウ。あなたが感じたように、あの人の力は、魔法ではありません」

「ああ、やっぱり、そうなんですね。一見、魔法のようにも見えるから、みんな気がつかないのかな」

「あまりに、わたしたちの常識とちがうから、なにかへんだと思っても信じられないのだと思うわ」


 とルシア先生。


「…魔法というのは、あくまでこの世界に属するもの。だから、魔法にはこの世界の法則をかえることはできないの。

 あなたは、ユウさんから、「重力」というものの話をきいたわね」

「はい、この地上にあるものすべてに働いている、下向きの力とききました」

「そう。この世界には「重力」という力、それは法則と言い換えても良いかもしれないけれど、そういうものがある。

 その力に抗して、魔法使いが、体を宙に浮かせるとき、それはたとえば、風の魔法により体を下から押し上げるとか、そういう操作をおこなっている。

 この場合、大切なことは、けっして「重力」そのものがなくなっているわけではない。魔法で重力に拮抗する力を生み出しているだけ」

「鳥は、翼を使い、拮抗する力を作って飛ぶと、ユウさんはいっていました」

「そう。ところが、あの人の力は、その「重力」そのものを変化させてしまうのよ。拮抗する力なんて、必要ないの。重力そのものがなくなってしまえば、人は空に浮くわ」

「そんなことができるものなのですか?」


 といっても、じっさい、ユウはそれを、こともなげにやっているわけだけど。


「レイスのどんな魔法もあの人には効かなかったでしょう」

「はい、炎がぜんぶ途中で消えてしまいました」

「あれも、レイスの魔法に拮抗した力を使ったわけではないの。レイスの魔法そのものに干渉し、ないことにしてしまったのよ」

「レイスも、わたしたちに反魔法をつかいましたが」

「そう。そこが、あの人の力との違い。レイスの反魔法は、要するに、相手より大きな魔法の力で、相手の魔法を無理やり押さえつけることをしているわけ。それでも十分すごいんだけど、魔法そのものを消しているわけではないのね。それより強い魔力をつかえば、反魔法も砕けるわ。

 わたしでも、その気でやれば、おそらくレイスの反魔法くらいには対抗できると思う。

 でも、魔法そのものをなかったことにされてしまうと、もう、魔法にはなすすべがないのよ。

 つまり、あの人の力は、『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』なのよ。

 多分、あの人の力は、この世界の外からきている力だから」

「でも、それって」


 わたしは、あまりのことにめまいがしそうだった。


「なんでも、この世界を思うがままにできるってことではないですか」

「そうね、それをあの人が望めば」

「でも…もし、人が思うがままに、そんなことをしていったら」

「そう。あの人の力は、使い方を誤ったら、わたしたちのこの世界そのものを、根本から壊してしまうかもしれない…、ある意味、この世界にとってとんでもなく危険な、恐ろしい力なのよ」


(世界を滅ぼすだけの大きな力)


 わたしは、慄然として、ユウをみた。

 ユウは、庭の向こう、ふだん子どもたちが遊ぶ、木の長椅子にねそべり、ハーブティを飲みながら、のんびりとわたしたちをながめていた。

 わたしの視線に気づき、のほほんとした顔で手を振った。

 そのひょうしに、胸元においてあったマグをひっかけ、ハーブティを服にこぼしてしまったようで、あわてて、とびあがった。あたふたしている。


「ユウさんて、あんななのに…」


 ルシア先生は、にこりと微笑んだ。


「…あんなだから、あの力を持っていられるのかもしれないわね。

 あの人の、考え方、感じ方のすべてが、ひょっとして、あの力をもつ資格なのかも。

 ライラ、おぼえておいて。…大きな力には、それにふさわしい資格があるの。

 資格をもたないものが、力を野放図に使ったら、破滅するだけ…」


 ルシア先生は、そういって、とても悲しそうな顔をした。


「わたしたちエルフ族は、それを身をもって知っている…」

「えっ?」


 わたしは聞き返したが、ルシア先生は答えず、


「だから、ライラ、あなたも、自分の力をつかうための資格を持ちなさい。

 それは、いついかなるときも、自分の行いの結果に責任を負うということ。自分の行いの結果から、けっして逃げないこと」


 ルシア先生は、わたしの目をのぞきこんで


「いいわね、ライラ」

「はい」


 わたしは、ルシア先生の真剣な眼差しに、思わず肯いたのだ。



「わたしとあなたとの間に、ユウさんの言葉で言うと、レゾナンスが起きたから、今、あなたという存在には、わたしの魔法の力が複写されたかたちになっている」

「はい、それを感じます。あの地下道でも、炎の宴などの詠唱が自然にでてきました」

「そう、だからあなたは、もう、一から魔法をすべて覚える必要はない」

「なんだか、もうしわけないような…」


 ルシア先生は笑った。


「そんなふうに思う必要はないわ。…ただ、問題はこれから」


 厳しい顔になる。

 美しい人差し指を、ぴっと立てて、


「あなたは、魔法は発動できるけど、その使い方をまだ知らない。

 状況に応じて、どの魔法をどう使い分けるか、その魔法を使うと状況がどうかわるのか、その判断もできない。

 さらにいえば、そもそも、魔法の強度、すなわち、魔法に自分の魔力をどのくらい注ぎ込み、どれくらいの大きさで発動させるのか、それもわからない。

 自分の残り魔力のカウントもできない。

 今のあなたは、ただやみくもに、全力で魔法を発動しようとしているだけ。

 小さな子供が、知ってるだけの言葉を、大声で叫んでいるようなもの。

 ようするに、絶対的に知識と修業と経験が足りてないの。

 せっかくの魔法が、これでは、まったくもって宝の持ち腐れ状態ね

 ひとことでいえば、ライラ、あなたは、()()()()()、なっちゃないわけよ」


 ルシア先生は、よどみなく、そう言い切った。


「せ、せんせい」

「はい?」

「そのとおりですけど、…ほんとうに、そのとおりですけど…へこみます…」


 こういうとき、わたしはジーナの楽天的なところがうらやましくてならない。

 ジーナなら、おちこむひまなどなく、すぐに前向きなことをいうだろう。

 わたしがしょぼんとしていると、

 ルシア先生はわたしの肩をたたいて


「だから、修行するの! まずは、魔力の大きさをどうやって調整するか、からはじめましょう」

「は、はい…」


 向こうで、ユウが、わたしに向けて、なにかしぐさをしている。

 わたしたちの会話までは、ユウには聞こえてないはずだが、あの仕草はたぶん


「がんばれ!」


 だと思うんだ。

 そうだよね?



いつも読んで下さってありがとうございます。ライラもがんばっているようです。


面白かった、早くダンジョンに行け、そう思った方は、応援のポチ!


ライラ:せんせい、そこまで言わなくても…。

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