↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君のお腹を幸せにする部  作者: チームつちのこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/9

6話

 俺の名前は鈴木 猛宗(すずき もうそう)


 授業が終わった放課後、理科室や家庭科室のある特別教室棟へと向かっていた。


 昨日部活紹介や部活体験があり、新一年生はそこで思い思いの部活へと入部した。


 この俺はと言うと……昨日の部活体験で色々とあり、家庭科部に入る事となった。


 この学校は男子校である為、運動部の方が人気がある。

 文化部の方は人気が無いとは言え、美術部などに入る生徒は一定数居た。


 そんな中、俺は不人気なのは承知の上で家庭科部の部活体験へと向かい、さらには入部までしたのだ。


 それはなぜかと言うと……と思いを巡らせた辺りで、


「ぁ、鈴木くん」

「ようこそ、家庭科部へ」

 家庭科室に着いてしまい、その家庭科部の部長である佐藤 現実(さとう うつみ)……先輩に声をかけられる。



「ぁ、はい」

「どうも」

 部活体験で勢い余ったとは言え、佐藤先輩がやるはずだった料理デモンストレーションを俺がやってしまった。


 さらには佐藤先輩に料理を教える流れになり、毎日味噌汁を作ってあげることになって……しまったのだ。


 まぁ、料理を教える事自体は苦痛では無いし……あんなに美味しそうにご飯を食べてくれるなら、また作ってあげてもいいかな……なんて、いやいや料理の道は厳しいのだ!教えるなら厳しくいかないと。


「良かった〜来てくれて」

「ありがとうね」

 凄く純粋な満面の笑みをストレートに向けられて怯む俺。

 なんというか、こうも直接想いのこもった笑顔を向けられるとなんか……こう、照れると言うか。



 顔が赤らめそうな所をグッと堪えて表情を引き締める。

「……しっかりと覚えてもらいますから」

「覚悟して下さい」

 そう言って俺は佐藤先輩に脅しをかける。



「……優しく、してね」

 佐藤先輩が上目遣いで俺に迫って来る……、



「……そんな目をしてもダメです」

「厳しくいきますよ」

 その笑顔に一瞬絆されそうになるものの、釘を刺す様に佐藤先輩に返答する。

 



「じゃあ早速ヤリますか」

 俺が佐藤先輩に向かってそう言うと。



「もうヤルの?」

 キョトンとした顔で俺に向かって返してくる。



「そうですよ、その為に俺は来たんですから!」

 なんだかのらりくらりと躱されそうなやり取りだったので、俺は改めて叫ぶ。




「大丈夫だよ〜食材とかは準備してあるから」

 佐藤先輩がそう言い、なんだか相手のペースになりつつある気がして来たかと思うと、


「でもね」

「その前に見せたいものがあるんだ」

 そう言うと佐藤先輩は何やら箱を取り出した。



「……ほぅ、なんですか?それは」

 話の流れが変えられてる気もするが、ひとまず乗っておくことにする。



「これはね〜」

「じゃん!」

 佐藤先輩は子供っぽく叫んで取り出した箱の蓋を開けた。



 その箱の中には……手拭い?タオル?なのか布製の何かが入って居た。


「ゴソゴソ」

 ゴソゴソと自分で言って箱の中身を取り出す佐藤先輩。


「なんですかこれ?マフラー?」

 取り出した物体がマフラーっぽく見え、何故にマフラー?と思いつつなぜこんな春先に?と疑問が絶えない。



「ふっふっふ」

「腹巻き!」

 佐藤先輩は俺に向かって自信満々に叫んだ。



「……なんで腹巻き?」

 急に出て来た腹巻に困惑する俺。


 目の前に広げられた腹巻きには大きめのトマト?が描かれている……いや編み込まれている?とでも言うのか。


「なぜトマト?」

 困惑ついでについ俺は佐藤先輩に聞いてみる。



「ぇ、だって美味しいから」

 答えになっていないのだが、屈託のない笑顔でそう答えられて俺はトマト件についてはスルーする事にした。


「ほら、どうぞ鈴木くん」

「早速着てみてよ」

 そう言って謎のトマト腹巻きを手渡された。



「……ぇ!?」

「俺が着けるの?」

「なんで?」

 状況が把握出来ずに思わず変な声を出しながら叫んだ。



「……ダメ?」

 佐藤先輩が上目遣いとウルウルした目で脅迫して来る、いや脅迫はしていないけど迫ってくる。



「……」

「……はぁ」

「わかりました」

 自分でも何故だかわからないが、佐藤先輩に迫られて謎腹巻きをつける事を承諾してしまった。


 あんな顔で迫られたら断りづらいし、断ったら泣いてしまいそうだし、小動物みたいな目で見つめられてつい承諾してしまった。


 俺は渋々上着のブレザーを脱ぎ、机にかける。

 そして手渡された謎のトマト腹巻きをつけて佐藤先輩の方を向く。


「……これで……いいんですか」

 自分でも顔が赤くなっているのがわかる。



「うん!」

「すっごく似合ってる!」

「かわいい!」

 佐藤先輩は凄く喜んでいるようで、その笑顔からストレートな気持ちが伝わってくる。

 

 ただ、シャツの上に腹巻きという状態なのが少々恥ずかしい。


「でも何故に腹巻きを?」

 頭に浮かんだ素朴な疑問を佐藤先輩にぶつけてみる。



「……それはね」

「昨日の朝ご飯のと」

「おにぎりの件も含めてのお礼」

 佐藤先輩が俺の問いかけに答えてくれる……が、腹巻きの答えになっていない気がする。


「……お礼ですか?」

「いや、おにぎりのお礼なら」

「この謎縫いキーホルダー貰いましたよ?」

 そう言って俺は何故かおにぎりのお礼に貰ったつちのこの縫いキーホルダーを見せる。



「ぁ、鞄につけてくれてるんだ」

「ありがとう」

 佐藤先輩はその縫いキーホルダーを見て凄く喜ぶ。



「いや、俺キーホルダーとか持って無いから」

「鞄の目印とかに丁度良かっただけで……」

 自分の鞄と他の人の鞄を区別する為にキーホルダー等をつける事が一般的らしいのだが、そんなキーホルダーなんて俺は持っていなかった。



「このキーホルダー、あまり売ってなさそうなキャラで」

「他の人と被らないから区別しやすかったというか……」

 だから丁度良かっただけで別に何の他意も無い。

 なんて俺が言い訳をつらつらと喋っていると、



「ぁ、うん」

「それ、僕の手作りだから」

 佐藤先輩がさらっと意外な事を言う。



「ぇ、これ佐藤先輩が作ったんですか?」

 あんな料理の手際だったのに……なんてうっすら思ったが、人それぞれ得意分野はあるのか?と思い直す。



「うん、僕そういうのを昔からよく作ってたから」

「割と得意なんだ」

「かわいいでしょ」

 そんな事を言う佐藤先輩が可愛いかもしれない……なんて事は思って無い!

 俺はそんな事を思いながら貰ったつちのこのキーホルダーと佐藤先輩を交互に見つめた。



「僕、裁縫とか編み物とかが出来るから」

「新部長に選出されたんだ」

「ぇへん!」

 小さな佐藤先輩が頑張って大きく胸を張る。

 なんだか子犬かハムスターみたいに見えて来た。



「だからその腹巻も僕の手編みなんだ」

 そう言って俺の着けている腹巻きを見つめる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ぉおぉ❣❣ 鈴木君サイドの話になった❣❣ 新鮮な視点で良きですね♡♡ 視点が切り替わるの好きです♡(^q^)♡
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。