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君のお腹を幸せにする部  作者: チームつちのこ


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4話

「そんな使い方だと……怪我しますよ」

 急に僕の左の耳元に言葉が囁かれた。


「ぅぉえぇ!」

 握られた右手を見ていたからか完全に不意打ちを食らって再び変な声を上げる。


「す、鈴木くん?」

 その声の主は先程まで僕の料理デモンストレーションを見ていたはずの鈴木くんだった。


 その鈴木くんはいつの間にか僕の背後に回り、右手を強く握り左耳に言葉を囁いたのだ。


「ぇ、えと、あの?」

 背中に鈴木くんが密着していて手を握られているので身動きが取れない。

 僕は動揺しながら背中にいる鈴木くんに返事する。


「貸して下さい」

「俺がやります」

 そう言って手を離した鈴木くんは予備として置いてあった割烹着と三角巾を手早く付けて僕を再び見つめる。


「ぁ、えと、でも……」

 これはデモンストレーションだし、新部長としてカッコイイ所見せなきゃいけないし……と葛藤していると、



「魚捌くの、というか料理慣れてないですよね」

「目の前で怪我されても寝覚めが悪いですし」

「俺がやりますよ」

 鈴木くんはそう言って、手を離して置いていた僕の包丁を見つめる。


「とりあえず手を洗って」

「大人しく待っていて下さい」

 そう言いながら鈴木くんは手を洗い始める。


「ぁ、でも、その……」

 僕がしどろもどろで返答していると、


「待っていて下さい」

 先程まで僕が使っていた包丁を手に取り、僕に向かってクールにさっきと同じセリフを言い放った。




「……はぃ」

 そのクールな威圧感と、包丁を持ったまま語りかける謎の圧に僕はそう返事する。



「三徳包丁か……」

 包丁をチラリとみてそう呟く鈴木くん。



「さんとく?」

 謎のワードに僕もつられて呟くが、鈴木くんは静かに作業を始める。



 ダッ


 サッサッ


 料理初心者の僕が見ても分かるぐらい鈴木くんは手際のいい動きで鮭を捌き始める。



 頭を一瞬で落とし、身も綺麗に切り分けられていく。

 そう、これ見たことある切り身。

 

 そうこうしている内にその綺麗な切り身はグリルに入れられた。


「次は、味噌汁ですか?」

 鈴木くんが手と調理器具を洗いながら僕に問いかける。


「ぁ、うん」

「これが材料、だけど」

 そう言って料理番組のアシスタントみたいな動きになりつつある僕は準備してあった味噌汁の材料を並べる。


 豆腐、ワカメ、そして味噌。


 豆腐はパックのやつ。

 ワカメは乾燥のやつ。

 味噌汁の具の定番といえばこれかな?ってものをチョイスしてみた。

 味噌はあまり詳しくは無いので、味噌!って感じのパックを準備した。


「……これ、です」

 鈴木くんのあまりの手際の良さに完全にアシスタント状態の僕。


「……」

 暫くその材料を見つめる鈴木くん。



 どうしたのかな?と思い、声をかけようとした所で鈴木くんの方から話し始めた。

「……出汁は?」



「だし?」

 問いかけた鈴木くんに素っ頓狂な声で返答する僕。


「味噌汁ってこの味噌まぜて作るんじゃ?」

 そう言って味噌の入ったパックを手に取り、そう鈴木くんに言った。



「……」

「出汁は和食の基本」

 僕のセリフを聞いて冷蔵庫やら辺りを見回し、手際よく食材を準備する鈴木くん。


「とりあえず……」

「この鰹節使っていいですか?」

 何かの料理の残りだったか鰹節を取り出し僕に許可を求めてくる鈴木くん。


「ぁ、うん」

「大丈夫かと」

 なにに使ったのか忘れてる位だから多分大丈夫だろうと、僕は返答する。


 すると手際よく調理器具を準備した鈴木くんは鰹節を使って黄金色の液体を作り上げる。


「……凄くいい香り」

 その黄金色の液体から発せられる香りに僕は思わず呟く。



「これが和食の基本」

「出汁」

「本来はもっと手をかけて作るのだけど」

「今日の所はこの出汁で行けると思う」

 先程より少し饒舌になった気がする鈴木くんが、そう説明してくれる。


「後はこの出汁を使って味噌を溶かし」

「具を適切なタイミングで投入する」

 鈴木くんは喋りながら手の上で豆腐を鮮やかに切る。


「ぅおっ!」

「……凄い!」

 手に乗った豆腐に包丁が入るたびに何故か僕の方が緊張してしまい、思わず声を上げる。


 そうこうしている内にグリルから香ばしい香りが漂って来る。


「ぉお……」

 出汁の香りといい、グリルから香る香ばしい匂いといい思わずヨダレが垂れてきそうだ。


 なんて思っていると手際のいい鈴木くんが素早く動き、いつの間にか僕の目の前に朝ご飯?が準備されていた。




 ありのまま今起こった事を話すと……僕は新入部員候補の鈴木くんの前で朝ご飯を作っていたと思ったら、いつの間にか朝ご飯を作ってもらっていた。


何を言っているのか分からないと思うけれど、僕も何が起きたのか分からなかった。


 催眠術とか瞬間移動とかそんなものでは無く、もっと恐ろしいものの片鱗を味わった気がする。



 ともあれ僕の目の前には美味しそうな朝ご飯が置かれている。

 今はお昼過ぎなのに朝ご飯だとかそんな細かい理由はどうでもよくなる程食欲をそそる香りが僕を刺激する。



 対面の机にも同じ朝ご飯が並べられており、そこに鈴木くんが座る。


「あ、どうぞお構いなく」

 クールに話しかける鈴木くんの勇姿に少々見とれる僕。

 魚を捌く時の手際や料理中の動きが凄く綺麗で、カッコ良かったからである。


 とは言え新部長としてカッコイイ所を見せようとしたのに、何故かカッコイイ鈴木くんを見ていた件についてはちょっぴり哀しいかも、しれない。


 なんて朝ご飯と鈴木くんを見つめていると、


「……食べないんですか?」

 呆けている僕に鈴木くんがそう声をかける。


「ぁ、いや」

「いただきます」

 僕はそう言って手を合わせる。


「いただきます」

 鈴木くんもそれに次いで手を合わせた。


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三徳包丁!?さんとく!? 三文の徳的な包丁かちら(* ᐕ)!?
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