12 怪しい男たち
「クラウン様!」
私はクラウン様の前まで急いだ。
「リサさん! ……どうした?」
クラウン様は何人かの騎士さんと、何か話をしていた。
息を整えて、クラウン様に先ほどの怪しい人達のことを話した。
「……至急、応援を呼ぶように」
「はいっ!」
もう一人の騎士さんは、クラウン様に言われて応援を呼びに行った。
「……数名の子供が、行方不明になっている」
「早く行かないと……、見失います!」
私は焦って、いつもより大きな声を出してしまった。
クラウン様は驚いていたが、本当に早く追わないと見失ってしまう。
「先に向かう。あとから応援が来たら追ってくれ」
「わかりました!」
ビシッと姿勢を正して、他の騎士さん達が返事をした。
「リサさん、どこに向かったか教えてくれないか?」
いつもより怖い顔をして、私に聞いてきた。
「……こちらへ」
もと来た道を戻った。この先は暗く狭い道。
姿は見えないけれど、子供を担いでの移動ならば追いつくだろう。
「この先を……、子供を担いで速足で行きました」
私は先の道を指さした。
「ありがとう! リサさんは危ないから戻ってくれ。俺はこの先を行く」
クラウン様は走り出して、怪しい人達を追った。走っていくクラウン様の後姿を見て、心配になった。
いくらクラウン様が強くても、一人じゃ危険。応援はまだ来ない。
何かあったら……。ローブの端をギュッと握った。
「お城へ卸している照明弾や、煙幕など……持っている。邪魔はしないように……」
ローブに隠し持っている道具を確認して、私はクラウン様の後を追った。
危険と思う。だけど……このままでは連れ去られた子供も、クラウン様も危ない。
私は森で熊や狂暴な動物と遇わないために気配を消す魔法と、匂いを消す魔法をおばあちゃんの教えてもらった。
だから、先ほど怪しい人達に気付かれなかった。
またその魔法を使って、クラウン様を追いかけた。
まるで迷路のような細い裏道。
一本道だったから迷わずクラウン様に追いついた。
クラウン様は、怪しい人達の様子を見ているようだ。
私はクラウン様の後ろから距離を取って、見守っていた。
この先は行き止まり。古い家があった。
あちこち壊れていて、とても人が住んでいるように見えなかった。空き家みたいだ。
怪しい人達と私達が途中で出会わなかったということは、この古い家の中に居る可能性が高い。
子供達が無事だと良いけれど……。
「うわあああ――ん!」
「!」
子供の泣き声が聞こえて、それから静かになった。
様子をうかがっていたクラウン様が、動いた。
バンっ!
「誰だ!?」
クラウン様は足で古い家のドアを蹴破った。簡単に壊れたドアは家の中へ吹っ飛んでいった。
中にいた人相の悪い男たちが、クラウン様に向かって襲い掛かってきた。
「騎士か……! 片づけろ!」
短剣で襲い掛かってくる怪しい男たち。狭い部屋じゃ、クラウン様に不利だ。
でも次々と素手で、男たちを倒していった。
凄い……! さすが騎士団の副隊長。
古い家の中には何人いるのだろう? 五人……、男が倒れている。
これで……全員かしら?
「子供達は……」
クラウン様は子供達を探しに部屋の中を進んだ。
ホッとした私は、家へ近づいた。
その時……。
気を失っている男たちの中で一人、起き上がってクラウン様の背後から短剣を突き刺そうとしたのが見えた。
「クラウン様! 危ない! 目を閉じて!」
男は驚いて私の方に振り向いた。――私は小型の照明弾をその男に向かって撃った。
パシュッ! パ――ン!
「うわああああ――!」
辺り一帯は眩しい光で照らされた。
咄嗟に私とクラウン様は、腕で目を隠した。男は目を光でやられて手で覆っていた。
「リサさん!?」
閃光が収まったとき、クラウン様は私に気が付いて驚いてこちらへ走ってきた。
「クラウン様……。無事、ですか?」
私はクラウン様が、怪我をしていないか聞いた。
「どうして……「副団長! 今の光は!?」
どうやら応援の騎士たちが、やってきたようだ。
「……ここは危険だ。ルル騎士!」
クラウン様が声をかけた。
「はい!」
やってきたのはルルさんだった。
「リサさんは参考人だ。丁寧に、詰め所に連れて行ってくれないか?」
「わかりました! さ、行きましょう」
私はルルさんに守られて、その場から連れていかれた。
「これから家に中を調べます。関係者以外、立ち入り禁止になります」
ルルさんが私に言うと、大勢の騎士団の人達が家の中へ入っていった。
ドガドガと足音が聞こえて、騒がしくなった。
もしかして、まだ仲間がいたのだろうか?
怒鳴り声や悲鳴を遠くに聞きながら、私はルルさんとお城の騎士団まで行くことになった。
「リサさん、お茶をどうぞ」
「あ、有難う御座います……」
騎士団の一室に通されて、私はお茶をいただいている。
「あの……」
私は捜査の邪魔をしてしまったのだろうか?
クラウン様に言われて大人しくしていた方が良かったのか……。出されたお茶を飲まず、俯いた。
「詳しい話を聞くことになるけれど、捕まることにはならないと思うから安心して」
ルルさんは私のことを気遣って、話をしてくれた。
「冷めないうちに、どうぞ」
「いただきます」
促されてお茶をいただいた。
子供達は無事に、助け出されたのだろうか? クラウン様は無事だろうか?
頭の中でグルグルと、考えがまとまらなかった。




