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ベンチ
蝉はまだまだ煩い。
俺は記憶の隅にあったような公園のベンチで項垂れながらポケットに手を突っ込んであいつの来訪を待っていた。
あいつっていうのはもちろん過去の俺の事だ。
今の年で言えば恐らく8歳にも満たないであろう彼にもうじき始まるであろう自身の暗黒期をこの目で見届けてやりたいところだが、如何せん自身の事だけあってこれから虐められるであろう自分の姿を拝むのも精神的に苦しい物もある。
だからと言っていくら悩んで、まだいくつにも満たない幼い自分に職選びや勉強から社会の事まで懇切丁寧に教える自信も無い。
ポケットに手を突っ込んだまま立てていた首をリラックスさせ、後ろを向くような形を取った。
「昨日のおじさん?」
不意に横から声が聞こえる。
軽く驚きつつも、待っていたかのように「よう」と呟いて悟ったように笑いながら手の平で自分の隣をトントンと叩いた。




