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電話をかけてきた青年は、ショウと名乗った。リザと同じ高校に通っていたという。声は落ち着いていて、静かで丁寧な口調だった。リザに祈りを捧げたいと言い、午前十時ちょうどにやって来た。
ショウが家に入ってくると、まっすぐキャサリンを見つめた。その視線には押しつけがましさがなく、むしろ彼自身が、この悲しみをどう受け止めればいいのかを探しているように見えた。
キャサリンは、ショウという青年のことを知らなかった。リザの学校での友人関係についても、あまり詳しくは知らなかった。
ショウはリビングの一角に腰を下ろすと、目を閉じて祈り始めた。
その姿は驚くほど静かだった。
キャサリンは祈りを邪魔しないよう視線を外したが、ふとした瞬間に彼を見た。
自分の知らないリザの友人が、こうして娘のためだけに祈りを捧げている。
その光景には、どこか現実味がなかった。リザがいなくなったことが、まだ遠い夢の中の出来事のように思えてならなかった。
祈りを終えると、ショウはゆっくり顔を上げ、希望者だけでヨセミテ国立公園へ行ったときの話を始めた。
その旅行で、リザに助けてもらったのだという。
「本当に感謝しています」
その言葉は儀礼ではなく、胸の奥から出てきたものだった。
そのとき、キャサリンは初めて知った。
リザは、自分の知らない場所でも、誰かにとってかけがえのない存在だったのだ。
誇らしさを覚える一方で、もうその娘はどこにもいないという事実が、胸を締めつけた。
帰り際、ショウは少しためらうように口を開いた。
「リザの部屋を、見せていただいてもいいですか」
思いがけない願いに、キャサリンは彼の顔を見つめた。
そこに好奇心はなかった。ただ、リザとの思い出に少しでも触れたいという気持ちがあるように思えた。
「ええ、どうぞ」
その言葉は、ごく自然に口をついて出た。
ショウは静かにリザの部屋へ入っていった。
壊れやすいものに触れるような足取りで、部屋の中をゆっくり見回している。
そこには、リザが使っていた物が、生前と何ひとつ変わらない姿で並んでいた。
キャサリンは少し離れた場所から、その様子を見守っていた。
自分でさえ、まだ完全には向き合えない部屋だった。
その部屋に、娘を想うひとりの青年が立っている。
キャサリンは黙って、その姿を見つめていた。




