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一度ホテルに戻り、部屋の明かりをつけると、バッグにしまっていた拳銃を取り出した。
持って行くべきか迷った。もしものとき、威嚇する手段にはなる。そう思う一方で、なぜ自分はこんなものを買ったのかと考えた。そもそも僕は、争いを好むような人間ではない。気が引けて、そのまま捨ててしまおうとも思った。
「けど、アメリカに来て、ジャップだとか言われることもある。そうすると、僕は無性に腹が立つ」
顔の見えない場所から、ショウの声がした。
その言葉を聞いているうちに、僕はそいつらを撃ち殺してやろうという衝動に駆られた。殺さないまでも、足の指くらい撃ってやろうと考えていた。
僕は現金をポケットに突っ込み、拳銃をリュックサックに入れ、スナップをしっかり閉じた。
部屋を出て廊下を歩いていると、薄暗い空きスペースに、メイドの清掃用具を載せた台車が置かれているのが見えた。そこにあったゴム手袋を取り、質素なホテルのエントランスの裏手から外へ出た。
ウィンドブレーカーのフードをかぶり、顔を隠すようにして自転車に乗り、ロッジへ向かった。
陸橋を渡っていると、夏の夜空に花火が上がっていた。火の矢が夜空へ放たれ、無数の星の間に大きな光の輪を描きながら、いたるところで轟音を響かせていた。
橋の下にある黒いトンネルの入口へ目を向けると、オレンジ色の光が広がり、その中から巨大なトレーラートラックが勢いよく出てくるのが見えた。
ペダルをこぎながら、花火に彩られた川と空を眺めた。
やがて市街地を離れ、木々に囲まれた山道へ入っていく。しばらく進むと、道の先に静かなロッジが見えてきた。
洒落た木造の建物だった。花火の光が周りの森を断続的に照らし、そのたびにロッジの姿が暗闇の中に浮かび上がった。




