冒険の支度をすることになりました。
「ゆあ〜服なんだけど、今度またいいの買ってあげるから。しばらくこれで我慢してくれるかな?」
カークさんがそう言ってあたしの前に服を差し出す。
あれからあたしはカークさん達の泊まっている宿屋に一緒に連れて行ってもらって、これからの準備をすることになった。
カークさんから渡されたのは青いポンチョみたいな上着と黒い長ズボン。
でもどっからどう見てもサイズが大きいのよね。
「ありがとうございます。でも大きいかも。」
それを手に取ると。
「着てみればわかる。向こうで着てみろ。」
ガイがそういうので、あたしは着替えることにした。
制服を脱ぎブカブカのポンチョとズボンを着る。
と⋯⋯
「え?!服が!」
不思議なことに服がみるみる縮んでいき⋯⋯
あたしにピッタリなサイズになった。
「うっそ!」
えーどういうこと?!
「着れた〜?」
カークさんの声。
あたしはあわてて、2人の前に行く。
「服が!服が!縮んだんです!!」
「すごい驚いてるねえ。」
カークさんが苦笑する。
「当たり前だろうが。」
ガイさんが呆れたようにそう言ってあたしを見た。
「え?!当たり前なんですか?!服が縮むなんて!信じられない!!」
ほんとにあつらえたみたいにピッタリなの。
カークさんは驚くあたしを見て笑いながら
「そんなに驚くこと?普通なのに。服は着た人に合わせて伸びたり縮んだりするんだよ?そういう魔法のかかった服なんだよ。」
そう説明してくれた。
えーすごい便利!!
「本当にこの世界のことしらないんだな。しかし、ゆあの着ていた服は⋯⋯変わった服だな。」
ガイさんは制服をじっと見つめた。
「それはゆあの国の服でしょ?触っていい?」
カークさんが制服を指差してそう尋ねた。
「はい。どうぞ。」
「へ〜なんかよくみると、頑丈にはできてるねぇ。でも、小さい服だね。僕が着ると僕のサイズにはならないんでしょ?」
「はい。その人に合わせたサイズがあって。着れるものを選ぶんです。」
「へー不便〜。」
うーん。確かに?
よくよく考えれば、着た人に合わせてサイズが変わる服なんか凄すぎると思う!
無駄なサイズ展開もいらないしさ。
1個のサイズ作ればみんな着れちゃうってことでしょ?!
すごい便利!!
「でもさ、この服は作りは細かいんだね。この折リ折りしてる箇所とか⋯⋯。」
カークさんが、制服のスカートのプリーツの部分を触る。
あぁプリーツのとこね。
「そこはね洗ってもちゃんとその折り目綺麗に出るんですよ〜。」
「へーすごいね。しかも、この柄?あまり見かけない柄だよ。」
カークさんはあたしの説明をきいて、プリーツスカートを触る。チェックの柄を気に入った見たい。
「でも。外を歩くのには不便そうな服だ。ゆあ、大切な自分の国の服だろ?この袋にしまっておけ。」
ガイさんがあたしにナップサックのような麻の袋を渡す。
「ありがとうございます。」
受け取ったナップサックに着ていた制服を小さく折りたたんでしまった。
夏服だから、スカートとポロシャツだから、がさばらなくてよかった⋯⋯。
着替えを終えて、ナップサックを背負う。
「うん。いいじゃない。似合ってるよ!」
カークさんはあたしを見て微笑む。
「じゃあ行くか。まずはギルドに登録だけしよう。」
ガイさんはそう言ってあたしの方を向いた。
ギルド?何それ??
宿屋の隣がそのギルドっていうとこだったみたい。
そこは、うーん⋯⋯。
イメージ的になんだけど⋯⋯。ファストフード店!
カウンターがあって、そこのそばにいくつか席があるの。
でも食べ物を売るって感じではないけどね。
「ちょっと待っててね。」
カークさんがそう言うと。
カウンターで何やら話をしている。
カウンターにはサラサラの黒髪の可愛らしいお姉さんが立っていて。
⋯⋯。
「はい!いらっしゃいませ!ご要件をどうぞ!」
ニコニコした笑顔でカークさんを見た。
すると⋯⋯。ふっと目がいった。
頭の上に【人と話すのマジめんどくせぇ。今日誰も来なきゃいいのに。】って書いてあった。
え⋯⋯。本音はそれってこと?
受付の仕事だと、なかなか難しいよねぇ。それ。
カークさんと受付のお姉さんは話をしているんだけど。
お姉さんはニコニコして対応してるのがみえるのに。
本音は⋯⋯めんどくさい訳か⋯⋯。
「ゆあ、おいで。」
その時、カークさんに手招きされた。
あたしがそばへ行くと。お姉さんはニコニコしながら。
「では、ゆあ様。こちらにお名前をご記載ください。」
紙を渡された。
「えっと⋯⋯」
モタモタしていると。
カークさんが、
「ここに名前書くんだよ。細かいとこは書いといたから!」
と、教えてくれて。
あたしは手渡された、木のペン⋯⋯木の先がとんがっていて、インクをつけて書くやつを渡された。
うーん書きにくい。
なんとか名前を書き終わると。
「はい!たしかに!ゆあ様!冒険者としての登録完了しました。これから頑張ってくださいね!こちらが冒険者の身分証です!」
そう言ってカードを差し出した。
「あ、はい。」
カードをもらうと、そこにはあたしの名前が書いてある。
『冒険者 ゆあ 女 初心者』
カードにはそんなことが書いてあった。
あれ?あたし⋯⋯字が⋯⋯。
書いた字はいつもの字なのにこの世界の字?で書いてある。
あれ?変換されてた?
そういえば、紙に書いてある文字も普通に読める。
字の形はなんか⋯⋯象形文字みたいな字なのに。読める。
しかも、書ける。
え?!なんで?!
うーん。この世界に来たからそれくらいは適応されるってことかなぁ??
うーんと思いながら受付のお姉さんの頭を見る。
頭の文字は、日本語だ⋯⋯。
「あ⋯⋯めんどくさいのにすいません。ありがとうございます。」
あたしは頭を下げた。
「ん?」
お姉さんは首を傾げてあたしを見たけど。
カークさんとガイさんに連れられて、ギルドを後にした。
「ギルドって何ですか?」
あたしがカードを見ながら聞くと。
ガイさんが
「冒険者は誰にでもなれるけど、登録制なんだ。町にあるギルドで登録をする。」
そう教えてくれた。
「勝手に冒険に出るのも危険だからさ。管理されてるって感じだね。
ギルドに登録するとさ。その町で困っていることを助けてほしいとか依頼をされるんだ。それをこなすと報酬をもらえる。もちろん依頼はこなさなくてもいいよ。自由。」
へーなんかゲームの世界みたいだ。ホントに。
「レベル?とかあるんですか?」
あたしが聞くと。
「ランクのことかな?初めての人は『初心者』だね。慣れると、駆け出しとか中級とかさランクが変わっていくよ。
初心者
駆け出し
一人前
中級
上級
最上級
英雄
って感じかな?ほら、カードに書いてある。」
「へぇ〜!」
ホントにゲームみたい!!
あたしはカードを見て、そこに並んだランクの文字を眺める。
「ちなみに、カークさんとガイさんはどのランクなんですか?」
あたしが尋ねると、ガイさんがちょっと誇らしげに鼻を鳴らした。
「オレたちは『上級』だ。」
「えっ! 上から3番目!? すごいじゃないですか!」
思わず尊敬の目を向けそうになった⋯⋯けど。
……上級冒険者(パンツ前後逆)。
……上級冒険者(今日着たら捨てる破れパンツ)。
あたしは心の中で、静かに深いため息をついたのだった。
なんで隠し事がパンツなのよ⋯⋯2人して⋯⋯。




