この世界で生きていくために⋯⋯
カークさんとガイさんに連れられてやってきたのは、大きな広場みたいな場所だった。
「うわぁ!何ここ、すごい活気!」
広い敷地の中に、カラフルな屋台やお店がズラリと並んでいる。
真ん中には木製のテーブルとベンチがたくさん置いてあって、大勢の人たちが思い思いに食べ物を買っては、ワイワイガヤガヤ食事を楽しんでいた。
これって⋯⋯!デパ地下とかモールのフードコートみたいな感じじゃん!
すごい!
「ここは屋台街だよ。好きな店で食べたいものを買って、真ん中の席で食べるんだ。」
カークさんがキラキラした笑顔で教えてくれる。
「へぇ〜!ホントにフードコートだ!」
美味しそうな香ばしい匂いや、甘い香りが風に乗って漂ってきて、あたしの空腹はもう限界。ぐぅ、とお腹が主張する。
「ゆあ、ここが初めてなら⋯⋯あれにしておけ。」
ガイさんが指さしたのは、香ばしい煙を上げている一軒の屋台だった。
「おすすめなんですか?」
「ああ。失敗がない」
買ってもらったのは、焼きたての分厚い肉とシャキシャキした見たことのない野菜が、ふかふかのパンに挟まれた⋯⋯サンドイッチみたいな食べ物。
「美味しそう! いただきます!」
ガブリと噛みつくと、ジュワッと肉汁が口いっぱいに広がった。
「んん〜〜っ!! おいしいっ!!」
「はは、良い顔して食べるねぇ。それはおすすめなんだ。」
カークさんが嬉しそうに目を細める。
向こうの方の席の男女の頭の上をふっと見ると
【あたし浮気してる】
【コイツ金ヅル】
⋯⋯
やっぱり人の隠し事ってなかなか⋯⋯。
でもまぁ美味しいご飯のおかげで、このシュールな光景にもちょっと慣れてきた気がする。
「で⋯⋯ゆあ。美味しく食べたところで、今後の話なのだが⋯⋯。」
ガイさんが真剣な目つきであたしを見つめ、そして話を続けていく。
「身寄りも金もない、おまけにその変な服だ。街の外は魔物だらけ⋯⋯お前、これからどうするつもりだ?」
「え⋯⋯。」
あたしはどうしていいかわからず、黙ってしまう。
「うーん。ゆあ?なんか特技とかはあるのかな?」
カークさんがあたしを見て尋ねた。
特技⋯⋯。
あたしは何が得意なんだろう⋯⋯。
何もやりたいこともなくて⋯⋯。できることもなくて⋯⋯。特技もすぐに浮かばない⋯⋯。
学校の、進路だってどうしたらいいのかもわかんなくて。
こんな異世界に来てしまって⋯⋯ひとりでどうやって生きていけばいいのか⋯⋯。どうしてこんなところに来ちゃったんだろうなあ⋯⋯。
⋯⋯。
「うーん⋯⋯でもさ!」
黙り込んでしまったあたしを見て、カークさんが困ったように笑いながら首を傾げた。
「君には、僕らのパンツの秘密を一瞬で見破るっていう、とんでもない特技があるじゃない!」
「⋯⋯それ特技ですか!?」
思わずツッコミを入れると、ガイさんが腕を組んでフッと鼻を鳴らした。
「くだらん例えは置いとくとして⋯⋯その能力は、普通じゃない。もし、悪意や嘘を見破れるなら、この危険な世界で生き抜くための強力な武器になる。」
「え?」
それから、ガイさんはあたしの頭をコツンと小突くとふっと笑った。
「とりあえず、行くあてがないならオレたちがしばらく面倒を見てやる。」
「そうだね!」
ガイさんとカークさんがそう言ってあたしを見た。
「えっ、いいんですか!?」
まさかそんな風に言ってもらえると思わなくてあたしは呆然と2人を見つめる。
カークさんはキラキラした笑顔で頷くと、
「もちろん! 放置して魔物に食べられたら寝覚めが悪いしさぁ!」
ガイさんも頷くと、
「あぁ。そのまま放置したら即、死ぬな。」
さり気なく毒舌だけど。2人は優しい目をしていた。
……パンツ前後逆と、破れたパンツ履いてる2人だけど。
すごく頼もしくて、温かい。
⋯⋯あたし、この世界でやってけるのかなぁ?
不安はあるけど、胸の奥が少しだけ⋯⋯少しだけ軽くなった気がした。




