ここはファンタジーな世界でした
原っぱの真ん中で、私はカークさんとガイさんからこの世界の事情を聞いていた。
話を聞けば聞くほど、あたしの顔から血の気が引いていく。
ここは、あたしのいた日本どころか地球ですらない所のようで⋯⋯。
それどころか⋯⋯『魔物』と呼ばれる、人間を狩って食べる恐ろしい存在がいる世界なんだそうだ⋯⋯。
長年にわたって人間と魔物の壮絶な対立が続いていて、いつ命を落としてもおかしくないファンタジー世界だった。
そんな恐ろしい魔物を退治し、人々を守るために戦う者たち。
どこかの国に縛られることなく、刃を振るう者たちのことを――『冒険者』と呼ぶらしい。
カークさんや、ガイさんはその『冒険者』なんだって。
「魔物⋯⋯人間を食べる⋯⋯」
なんか想像ができない⋯⋯。
「ああ。だから本来、こんな街の外に一人でいるなんて自殺行為なんだぞ。」
ガイさんの冷ややかな言葉に、私は背筋がヒヤッと凍りつく。
渋谷のホームから穴に落ちて、天国に来たかと思ったら⋯⋯まさかの超危険地帯だったってことなんだ⋯⋯。
なんでいきなりこんなこと⋯⋯。
これからあたしはどうしたらいいのか⋯⋯。
「お前これからどうするんだ?」
ガイさんが私に言うけど。
どうしたらいいのか全く分かんない。
だって、ここがどこかもわからないんだよ?
うつむいて考え込んでいると。
「うーん。ひとまず町に戻ってなんか食べながら話そうよ。」
カークさんがそう言って私を見る。
「2人はこんな危険なところで何してたんですか?」
私が聞くと2人は
ああ、っといった顔で
「鍛錬だよ。新しく習得した技を試してみたくてね。」
カークさんがキラキラした笑顔でそう答えた。
さすが『冒険者』ってやつだ。
『ぐぅぅぅ』
はっ!
その瞬間あたしのお腹が鳴り出す。
もーやだ、この子!いきなり鳴って!恥ずかしい。
慌てるあたしを見て。
2人は笑った。
「よし行こう!一緒においで。」
あたしは、ついていくことにした。
「へぇ〜すごい!」
ついた町はにぎやかで⋯⋯
建物がカラフルでかわいい。三角屋根のおうちが並んでいる。んーオランダとか?こんな感じじゃない?
お店もたくさんあって。
なんだか楽しそうなところ。
でも町には魔物は出ないんだろうか?
私が首を傾げていると。
「町は魔物避けの結界が張ってあって、町独自の結界の強さによって、平和かそうでないかになるんだよ。
強い国や町になると、強い魔物を寄せ付けない。
この町は⋯⋯中級かな?」
へぇ⋯⋯。
そういう魔法があるってことなのかな?
結界を張るなんて⋯⋯すごい!
は!
「正面から来る人⋯⋯」
私がチラッと見ながらつぶやくと。正面からこっちに向かってくる小柄な小太りの人。ニコニコとしながら歩いてる。
頭の上に⋯⋯
【絶賛浮気中〜!】
って書いてある⋯⋯。
⋯⋯えっ⋯⋯。
「どうした?まさか知り合い?」
カークが私を振り返る。
「いえいえいえ。知らない人です!」
そのまま浮気中の人とすれ違う。
「⋯⋯もしかして何か秘密が書いてあったんだな?」
ガイさんがポソっとつぶやいた。
「はい⋯⋯絶賛浮気中って書いてありました⋯⋯。」
「えー?!浮気っ?!」
それを聞いて、大きな声を出したカークさんが浮気男を振り返る。
カークさんの声が聞こえたのだろう⋯⋯。
小太りの男はビクッッとして振り返り真っ青な顔で慌てて辺りをキョロキョロする。
「どうやら身に覚えがありそうな雰囲気だな⋯⋯。」
ガイさんが感心したようにつぶやいた。
⋯⋯えーほんとに浮気してるんだなあれは。
人を見かけるたびみんな頭に文字が出ていて⋯⋯。
【今日財布忘れた】
とか
【パンツ履き忘れた】
とか
⋯⋯隠してることが見える。
くだらない内容が多すぎる。人って結構くだらないことを隠しているんだなぁ。
でも目がチカチカしちゃう⋯⋯。
あまり見ないようにしようと視線を外す。
慣れたら目に入らないようになるかな⋯⋯。




