初めて盗賊に会いました
「んーいい目覚め!」
カークさんが横で大きく背伸びする。
「本当にこれは何も寄せ付けないんだな⋯⋯」
ガイさんが感心したようにあたりを見回す。
あたしはもう少し寝たいなぁとか思いながら体を起こして、2人を見つめる。
あ⋯⋯みちゃったっ⋯⋯
『バリア最強!』
『プリン食べたい』
⋯⋯
ガイさんとカークさんの頭の上のそれぞれも文字⋯⋯
最近くだらなすぎて、じっと見るのをやめてたの。
やっぱくだらない心の声がダダ漏れしてるだけなんだ⋯⋯
この能力は一体何なの⋯⋯
何のための力なのかなぁ⋯⋯
でも、この世界で生きていくための武器とか手に入ったし。まぁいいか⋯⋯
あたしは大きく背伸びをすると起き上がる。
「早めに出発しよう。夜になる前にルノワの村につけるはずだ」
ガイさんの声と共に、テキパキ片付けをして、朝ごはんもそこそこに出発の準備を終えた。
「バリア解除、っと⋯⋯」
あたしが腕輪を撫でて心の中で念じると、あたしたちを包んでいた光がサラサラと朝の空気に溶けて消えていった。
一気に舞い込んでくる朝の冷たい空気。
結界の外の地面には、昨夜うろついていたらしい魔物の足跡がくっきり残っている!
それを見たガイさんが、感心したように深く頷く。
「大したもんだ⋯⋯バリア」
ほんとだよー!
大きな足跡!あたしは足跡を見つめ⋯⋯
このまま野宿してたらどうなったんだろうと思ってしまった⋯⋯
「普段は寝ずの番だから〜交代で。今日みたいに転がれたの初めてだね。さぁ行こう!」
カークさんがそう言って歩き出した。
まだ朝早いから外の空気はひんやりしていて気持ちがいい。
しばらく進んでいると、ガサガサと草むらが揺れた。
「おいおい、そこの三人組!!ちょっと待ちな」
茂みから泥汚れのひどい革鎧を着た男が2人、ナイフやクラブを手にニヤニヤしながら躍り出てきた。
ナイフを持った方は小柄。クラブを持った方は大柄だ。
盗賊といった雰囲気⋯⋯
わぁ⋯⋯初めて見たよ⋯⋯
「昨日、湖の周りでウサギ相手にキラキラしたルビーをどっさり稼いでただろ? 俺たちの縄張りで稼いだ分だ、全部置いていってもらおうか!」
昨日あたしたちがつの生えウサギを倒してルビーを集めていたのを、どこかでコソコソ見ていたらしい。
あたしが思わず身構えると、ガイさんとカークさんは慌てる様子もなく、心底面倒くさそうに足を止めた。
「おい、カーク。朝の準備運動にするか」
「そうだねぇ。サッと終わらせて先を急ごうか」
ガイさんが首をゴリッと鳴らし、カークさんが剣の柄に手をかけた瞬間、二人が放つ殺気に盗賊たちがひるむ。
「ひっ!宝石だけ置いてけば!今回は見逃してやる!」
大柄の男がそう言ってクラブを振り上げる。
あたしも慌てて背中の弓に手を伸ばした。
すると弓が勝手にピクッと反応し、一番威張っていた盗賊の首領の股ぐらへ向かって自動で照準を合わせる。
あたしが弦を引く間もなく、魔弓自体の圧力が空気をピキピキと震わせた。
「ひっ!? な、なんだあの弓⋯⋯あにき⋯⋯」
ナイフを持った小柄な方が、クラブを持った大柄な方にささやいた。
「女!う⋯うてるもんなら撃ってみやがれ!」
「あ!あにきぃ!!大丈夫っすか?!」
「黙ってろ!あんな小娘!たいしたことあるか!」
大柄なアニキがそう怒鳴り散らした、次の瞬間だった。
――シュバッッ!!
あたしが構える間すら与えず、『デス・クロウの魔弓』が勝手に高速で弦を引き絞り、光の矢を撃ち放った!
「ひやぁぁぁっ!?」
けたたましい音と共に放たれた矢は、大柄な男の股ぐらスレスレの地面に寸分の狂いもなく突き刺さる!
「ヒッ!? ぐ、股ぐらぁぁぁ!?」
「ア、アニキぃぃ! マジで撃ってきたぞ! あの女、迷いなく撃ってきた!!」
盗賊たちは、股ぐらをすり抜けた矢の威力と恐ろしさに顔を真っ青にした。
「ひ、ひえええぇぇぇ! 殺されるー!!」
「覚えてやがれーーっ!ブーーース!」
2人は脱兎のごとく逃げ去っていった。
え?なんだったの?
ねぇ。今の⋯⋯
あたしがポカーンとしてると
「ゆあはブスじゃないよぉ〜?」
カークさんが逃げた盗賊の方向へ向かって叫んでた。
⋯⋯何今の
「ブースとか言われたの、5歳児くらい振りなんですけど⋯⋯」
あたしがつぶやくと
「ゆあはブスではない。放っておけ」
ガイさんがそう言ってあたしを見た
⋯⋯あれ。ありがとう。
あたしはなんだか恥ずかしくなってしまった⋯⋯
「しかし、ゆあ、お前のその弓、相変わらず容赦がなさすぎるな。狙いがピンポイントすぎて、見てるこっちの股間までヒヤッとしたぞ」
ガイさんが弓を見つめそう言った。
「⋯⋯あたしが狙ったんじゃないです⋯⋯ 弓が勝手に動いた感じ?」
あたしは慌ててそう言ったけど、ガイさんは
「まあ、威嚇としては完璧だったがな」
とフッと口元を緩めた。
「さぁーさっさと出発しよう!遅くなるよぉ」
カークさんはそう言って歩き出す。
「夜になる前に村に着きたいな」
ガイさんはそう言って後に続く。
うん。まずは、進まないとだよね!
あたしは2人のあとを小走りて追いかけていった。




