ギルドにむかいます
『プリンまた食べたい』
カークさんの頭の上
『プリン忘れられない』
ガイさんの頭の上
⋯⋯
⋯⋯
いや⋯⋯いいよ?
へんな、イヤラシイこととか、悪口とかそういうのを心に隠し持ってるとかより全然ね?
でもさあ〜2人揃ってプリンかよ⋯⋯
仲いいなぁ本当⋯⋯
翌朝、朝食を取りながら、2人の頭の上をジーと見つめる。
確か⋯⋯卵と砂糖と牛乳でできたはず⋯⋯
蒸すんだよね?
まえーに作った記憶を思い出す。
うん。作れそう!
今度作ってあげよう⋯⋯
かわいいカップとかはないから、鍋いっぱいに作ってあげよう。
あたしはそんなことを思いながら2人を見つめていた。
「何ジロジロ見てんだ?」ガイさんはあたしを不思議そうに見る。
「え、なになに? ゆあちゃん僕のお顔に何か付いてる〜?」
って能天気なカークさん。
食堂は人はまばら。
私たちの席は端のほうなので、3人きりでのんびり食事をしている。
「ううん。何でもないです。このパン美味しい!」
美味しいパンにハムとチーズと野菜が挟んである。
サンドイッチだ。
「な、なんだ急にバクバク食い始めて⋯⋯」
怪訝そうな顔をするガイさんをスルーして、あたしはハムとチーズがたっぷり挟まったサンドイッチを口いっぱいにほおばる。
ふふん、まさか頭の上で『プリンプリン』の大合唱がバレてるとは思ってないでしょ〜
バレてますよぉー!
「あはは、ゆあは本当に美味しそうに食べるね〜! 食べ終わったら、今日はギルドに行こう」
カークさんが嬉しそうに目を細めて、自分のサンドイッチをパクリ。
「はい!」
あたしは頷いた。
で⋯⋯まずはここからなのよ。
「ギルドはどこにあるんですか?⋯⋯あ、ギルドって何ですか?」
あたしはよくわからないことを聞いてみることにした。
「ギルドを知らないで『行こう』って言ってたのか⋯⋯」
ガイさんが呆れたように片手で額を押さえる。
「あはは! そっか、ゆあの世界にはギルドなんてないもんね!」
カークさんはサンドイッチを飲み込むと、待ってましたとばかりに身を乗り出した。
「ギルドっていうのはね、簡単に言うと『冒険者のお仕事斡旋所』みたいなところだよ! 魔物退治から薬草摘み、町のお手伝いまで、いろんな依頼が集まる場所なんだ。僕たちもそこに登録して仕事をもらってるんだよ。それに見合った報酬をもらえる」
カークさんが説明をしてくれる。
「あとは、冒険者の管理もしているよ。ゆあの持っている冒険者カードもギルドが発行だよ。困ったときなど相談にものってくれる」
ほー
役所兼ハローワークみたいなとこか⋯⋯
「へえ〜じゃあその仕事をしてお金を稼いで冒険へ行くみたいな?」
「まあ、概ねそんな感じだな」
ガイさんがサンドイッチを喉に流し込み、コップの水に口をつける。
そして話を続けた。
「魔物を倒して街を守る凄腕もいれば、街のドブ掃除や薬草摘みでコツコツ日銭を稼ぐ奴もいる。ランク分けされていてな、自分の実力に合った依頼しか受けられない仕組みだ」
なるほどー
無理な仕事はできない仕組みなのね。
「ゆあはもう冒険者カードもあるから。ギルドで自分にあった仕事を受けれるよ」
カークさんがそう言ってあたしを見た。
「そうなんですねー!」
「 ゆあと僕たちは正式に『パーティー申請』の手続きもしてあるから。一緒にお仕事を受けられるからね!」
カークさんがパッと表情を明るくして、嬉しそうにフォークを置いた。
「パーティー申請?」
あたしが首を傾げるとガイさんが答えた。
「ああ。仲間として正式に登録しておけば、報酬の分配もスムーズだし、何かあった時のサポートも万全になる」
なるほど! 一人じゃないって証明みたいなものなんだ。首から下げてるカードフォルダーをぎゅっと握りしめると、ゲームみたいだ。
「なるほど! 役所と派遣会社が合体したみたいなところなんですね!」
あたしがそう言うと、ふたりは「やくしょ……?」「はけん……?」と顔を見合わせたけれど、まあ細かいことは気にしない!
「よし、ギルドのことも分かったし! サンドイッチも食べ終わりました!」
あたしは最後のパンくずを口に運ぶと、ごちそうさまの手を合わせた。
「食い終わったなら行くぞ」
ガイさんがコップを置き、身支度を整えるために立ち上がった。
よし、初ギルド!
あたしは元気に立ち上がって、首から下げたカードフォルダーの上から冒険者カードをポンと叩いた。
「ふふ、張り切ってるね〜。ギルドは中央広場のすぐ近くだから、露店通りを通っていこうか」
カークさんはニッコリ笑ってそう言った。
カークさんとガイさんに連れられて
大通りの人波をかき分けながら進むと、やがて開けた大きな広場に出た。
その一角に、巨大で重厚な建物がドーンと構えられている。
入り口の上には、剣と盾が交差したカッコいい紋章の看板。
ひっきりなしに大きな武器を背負った人や、魔法使いみたいな服を着た人たちが出入りしている。
「ここが冒険者ギルド『ルティア支部』だよ」
カークさんが振り向いて言った。
いよいよ、あたしの初めてのギルド!
あたしは息をぐっと呑み込んで、二人の後ろについてその大きな扉をくぐったのだった。




