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町中探索です!②

「あれ⋯⋯これって⋯⋯」

あれから色々とお店や露店をみて回っていた。


路地裏を歩いていた時、不意に目をやった壁に

字が書いてある

『誰かこれに気がついたら、ルイーダルのカフェへ』

え?!

⋯⋯これ⋯⋯

「ん?なんだ?読めない変な柄だね」

カークさんが立ち止まって一緒にその字を見る。

え?柄?

やっぱり⋯⋯じゃぁ、これって⋯⋯

「日本語だ⋯⋯」

あたしが呟くと⋯⋯

「にほんご?」

ガイさんが不思議そうに尋ねた。


「これ⋯⋯日本語⋯⋯あたしの元の世界の言葉です⋯⋯」

あたしは壁の文字を指でそっとなぞりながら、ぽつりと呟いた。

しかもこれ!たぶん油性ペンでかいてある?!


「えっ? ゆあの元の世界の言葉!?」

カークさんが驚いて目を丸くする。

ガイさんも眉をひそめて壁の文字に顔を近づけた。

「字には見えないな。俺たちにはただの妙な模様にしか見えない」

「うん見たことない模様だよ⋯⋯」

2人が真剣な顔で壁を見つめる。

あたしはドックンドックンと胸が高鳴るのを感じていた。

あたしの他にも、この世界に『落ちてきた』人がいるってこと?!


「ねえ、2人とも! この文字『誰かこれに気がついたら、ルイーダルのカフェへ』って書いてあるんです!」

「ルイーダルのカフェ⋯⋯?うーん」

カークさんが顎に手を当てて首をひねる。

と、ガイさんが横から

「ああ、中央広場から少し行った路地裏にある『カフェ・ルイーダル』のことか?店主が風変わりで、変わった飲み物と食べ物を出す店だ。でも出された物は絶品らしい。かわり者で、客を選ぶ店なんだ⋯⋯」

そこかも!

「行きたい! お願いします!」

あたしが手を合わせてお願いすると、ガイさんはふっと息を吐いた。

「まあ、同郷の人間がいるかもしれないなら確認しに行くか。ただし、危険な奴かもしれないから、俺たちから離れるなよ」

頼もしすぎるイケメン2人を従えて、あたしたちは 中央広場から少し離れた所にある『カフェ・ルイーダル』へと向かうことになったのだった。


大通りの喧噪から離れ、少し薄暗い路地裏を進んでいく。

「⋯⋯ここだね」

カークさんが足を止めたのは、レトロで重厚な木製のドアがある小さなお店の前だった。

『カフェ・ルイーダル』と書かれている。

これは⋯⋯この国の字だよね。

⋯⋯と思いきや、その隅っこに小さく手書きで、見覚えのある字がちょこんと添えられていた。

『純喫茶』

え?!ここここれ!!日本語!!

日本語じゃん!!!


カランコロン、と澄んだ鈴の音が響いてドアを開ける。

店内に入った瞬間、香ばしいコーヒーの匂いと、なんだか懐かしい喫茶店の空気が漂ってきた。

あ⋯⋯いい匂い⋯⋯


「いらっしゃい。」

カウンターの奥から顔を出したのは、エプロン姿の40代くらいの男性だった。

背は高め。ボサボサの黒髪に黒い目。


あたしはマスターの頭の上をじっと見つめる。

⋯⋯文字が浮かび上がる。

『オレは!日本人だぁぁぁ!誰か日本人いないのぉ?!』

!!!心の声、だだ漏れだよマスター!!

日本人なんだね?!


「ふん。見ない顔だな。うちは一応、客を選ぶんだが?」

めちゃくちゃキザに腕を組んで、マスターが渋い声で言った。

上から下まであたし達を見る。

頭の上の声とギャップがありすぎて、あたしは吹き出しそうになるのを必死でこらえた。


「あ、あの! 壁の落書きを見て来ました!『誰かこれに気がついたら』って!」

あたしがそう言うと、マスターの目が一瞬で輝いた。

「マジで!? 読めた!? 読めたの君!?」

さっきまでの渋い態度はどこへ行ったのか、カウンターを飛び越えて勢いよくあたしの前にやってくるマスター。

そしてあたしの肩をガシッと掴む。

「おい。離れろ」

すかさずガイさんが前に割り込み、あたしをかばうように庇う。

カークさんも

「ゆあに怪しい真似しないでね〜?」

と、笑顔だけど目が笑っていない圧をかけている。

イケメン2人からの凄まじい威圧感に、マスターはヒッと身を引いた。


「あ!ふたりとも! この人、あたしと同じ国から来た人みたいなんです!」

あたしが慌てて2人の服の裾を引っ張ると、ガイさんとカークさんは顔を見合わせた。

「本当か?!おい、マスター。話を聞かせてもらおうか」

ガイさんがズカズカと奥のテーブル席へ向かい、ドカッと腰を下ろす。

「そうだね!」

カークさんもニッコリ笑いながら席についた。

マスターは冷や汗をかきながらあたし達を見回した。


「あ、はい⋯⋯今、アイスコーヒーだしますね。あと⋯⋯ナポリタンいかがですか?」

と、急にめちゃくちゃ謙虚な接客態度になったのだった。

「え?!ナポリタン?!食べたい!」

あたしは久しぶりに聞いた言葉に涙がでそうになるほどの感動が湧き上がった。

きっと、ナポリタンって言葉で、こんなに感動する日本人はあたしくらいだよ?!


席についてしばらくすると⋯⋯

「はい。お待ちどう様!」

テーブルにナポリタンとアイスコーヒー。

あたしの前にはアイスカフェラテ。

!!!!

「これ!アイスカフェラテだぁ!!!」

あたしは思わず声が出てしまった。

「君くらいの年の子はカフェラテでしょ?」

マスターはウインクした。


ナポリタン!

目の前に置かれたナポリタンをあたしは一口食べる。

フワッと懐かしい味!

「うっううう⋯⋯」

涙がどんどんこぼれてくる。

「なんか、ナポリタンのくせに⋯⋯懐かしすぎー!ううう⋯⋯」

涙を流しながら口に入れる。

これは、懐かしい日本で食べたナポリタン!

カフェラテなんか、こっちには多分ない飲み物だよ?! 

あたし、学校帰りに友達とよくカフェラテ飲んだんだよね⋯⋯

コンビニとかでもよく買ってて⋯⋯

友達と試験勉強しながらもよく飲んでた⋯⋯


溢れてくるあたしの生活の思い出がどんどん涙となって流れる。


「そっか⋯⋯大変だったのかな?」

マスターはあたしにそう言って優しい目で見つめた。

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