町中探索です!①
『ゆあが描いたクマさんとうさぎさん可愛い』
⋯⋯ガイさん⋯⋯
朝っぱらからそんなこと⋯⋯
そんなに気に入ってくれたんだね⋯⋯
また消えたら描いてあげるからね!
翌朝、
あたしを部屋まで起こしに来てくれたガイさんをジっと見ると
頭にその文字。
『クマさんいいなぁ僕にも描いてほしいって頼んだら嫌われるかな⋯⋯昨日頼めばよかった⋯⋯』
隣のカークさん。
⋯⋯
あたしはカバンの中からボールペンを取り出して手の甲に黒でクマさんを黙って描いた。
本当に2人は⋯⋯
ろくなこと考えないね!!
しかもクマ!!
おかしくてつい笑みがこぼれる。
でも、変なことを考えたりする人より全然いいのかなぁ。
「ゆあ!ああ⋯⋯ありがとう〜」
カークさんが嬉しそうに笑う。
「どういたしまして!」
「さて、朝食を食べよう。ゆあ、荷物は必ず身につけること。この世界は油断するな」
ガイさんがあたしにそう言った。
⋯⋯確かに!
貴重品とか?は身につけるけど、他のは部屋ならいいかとか思うかも。
カードは肌身離さず、カークさんにもらったカードホルダーを首から下げてる。
それ以外の貴重品はないようなもんだけどね。
渋谷から穴に落ちたときにカバンも何もかもどっかいっちゃって、身一つできたもんだから⋯⋯
お財布すらないんだあたし⋯⋯
あたしは袋を背負ってカークさんとガイさんと食堂へ向かった。
食堂の席につくと、さっそく運ばれてきた朝食。
焼きたてのパンと、お肉と野菜がごろっと入った温かいスープ。
うわぁ⋯⋯めちゃくちゃ美味しそう!
口に運ぶとやっぱりとっても美味しかった!
「あ、そうだ。ゆあ」
ガイさんが懐から小さな革の袋を取り出して、テーブルの上に置いた。
チャリン、と重みのある音がする。
「え?なんですかこれ?」
「お小遣いだ。手ぶらで来たんだろう?お財布もないと言っていたしな。これ使え」
「ええっ!そんな、もらうわけには⋯⋯!」
「いいから取っておきな〜?俺からも半分入ってるからさ。女の子なんだから、可愛いものとか買いなよ。ここは色々なもの持ってるからね〜」
カークさんもニコニコしながら言ってくる。
「⋯⋯ありがとうございます!大切に使います!」
あたしは革袋をギュッと抱きしめた。
朝食を済ませて宿を出る。
「さっそく町中を見て回ろう」
大きな町に足を踏み入れると、そこはあたしの知らない活気で溢れていた。
この間までいた町とはまた全然違って、こっちは本当に賑やか。
辺りをキョロキョロ見回してしまう。
石畳の道路の両脇には、カラフルな布の屋根を広げた露店がズラリと並んでいる。
焼き肉の香ばしい匂いや、見たこともない果物の甘い香りが風に乗って漂ってきて、歩いているだけでお腹が鳴りそう。
「へえ、今日は果物屋が多いね〜」
カークさんが珍しそうにキョロキョロ見渡す。
「馬車や人が行き交うからな。足元とスリには気をつけろよ」
ガイさんは周りを警戒しつつ、あたしがはぐれないように少し歩幅を合わせてくれている。
飛び交う威勢のいい商人たちの声、馬車の車輪が石畳を鳴らすゴトゴトという音、沢山の人の話し声。
本当に知らない国に来たんだなぁ⋯⋯って、あたしは圧倒されっぱなしだった。
「欲しいものがあれば言ってね?大して支度してあげれなかったからさ」
カークさんがあたしにそう言ってくれた。
「はい!」
と、ふっと横を見ると⋯⋯
あれぇ?
ここは⋯⋯洋服とか売ってるのかなぁ?
キラキラしたお店だ⋯⋯
雑貨とか、カバンとか、服がところ狭しと並んでいる。
ん??
「あ、あの⋯⋯あの服⋯⋯」
沢山の服の中⋯⋯
「どうした?ゆあ?」
ガイさんが私の隣に並ぶ。
「あの服⋯⋯『ゆあ専用装備』って⋯⋯」
「えー?ほんとー?」
カークさんが驚いた声を出す。
『ゆあ専用装備 ダメージ軽減 ただし、ゆあ以外が着ると死ぬ』
⋯⋯だからさぁ⋯⋯
極端なのよ!
「これは⋯⋯あたしが着ないと被害者が出ます⋯⋯」
あたしが呟くと
「え?」
カークさんが首を傾げた。
「お嬢ちゃん〜気に入ったのあったー?安くしとくよー!」
店主があたしに声をかけてきた。
店主をじっと見つめると
『この呪いの服誰かに売りつけたい⋯⋯』
ええええ⋯⋯
あたし専用服⋯⋯邪魔物になってる!!
あたしは、ゆあ専用装備を手に取る。
うーん
普通の服だよ?
色はピンク。
あたしは今、カークさんにもらった青いポンチョみたいのを着てるのね。
下は黒いズボン。
そのズボンの上にちょうどいい感じの長めのチュニックワンピ!
あたし好きだなぁこういうの。
「おおおお客さん!!その服!!!お気に入りですか?!それねぇー!もう格安!100ゴールド!今ならこの、髪飾りもつけちゃう!」
店主が、可愛い蝶の髪飾りをあたしに渡す。
可愛い⋯⋯
てか、100?!100円じゃん!
しかも!髪飾りつき⋯⋯
「ガイさん、カークさん、この服買っていいですか?」
あたしが服を手に持って2人に聞くと。
「もちろん」
そう言って頷いた。
「どどどどどーぞ!良かったら奥で着替えていただいて!今着ている服は良かったら引き取りますよ?!」
あたしは奥で着替えさせてもらった。
服はあたしにピッタリ。
ほら、今着ていた服は、あたしの形に縮んだんだけど。これは、最初からあたしにジャストサイズ。
あたしのためのサイズって感じ。
着替えて出てきたあたしを見て。
店主は拍手
「ピッタリ!!!よくお似合いで!!かわいいですな!あ!返却はしないでくださいね〜!!」
⋯⋯
あたし専用アイテム⋯⋯
結構邪魔物扱いされてるんだけどー!
「着ていた服はもう着ないから引き取ってもらえる?」
横からカークさんが口を出す。
「へいへい!もちろん!これは、一般的な上着ですが⋯⋯サービスで!1000ゴールドでお引き取りしますね!」
あたしの専用装備⋯⋯そんなに厄介者だったのね⋯⋯
店を出て歩き出す。
「ゆあ!よく似合ってるよ!で、その専用装備は効果はなんなの?」
カークさんがあたしにコソコソ聞く。
「え?ああ、ダメージ軽減らしいです。でも⋯⋯あたし以外が着ると⋯⋯良くないみたいです⋯⋯」
さすがに死ぬって言うのは伏せておこう⋯⋯
「え⋯⋯だからあんなに安かったのか⋯⋯」
カークさんとガイさんが納得したように頷いた。
「ゆあの専用装備だから特別ってことなのかもな。まぁ、似合ってるからいいんじゃないか」
ガイさんはあたしの服をみてぽそっと言った。
「それに、さらっと言ってたけど、ダメージ軽減の服なんか⋯⋯そんな珍しい服聞いたことないからね!」
カークさんはコソコソ私の耳元で答えた。
そうなんだ⋯⋯
あたし専用アイテムは⋯⋯
ちょこちょこあるもんなんだね⋯⋯




