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10 翌週

 ソラがジンの家に来てから、一週間が経った。


 この一週間は、毎日毎日、朝から晩まで、数学づくしの生活であった。孤児院にいたら、けっして習わないであろう事項が多数現れ、ソラを悩ませたが、ジンの的確な指導でなんとか乗り越えることができた。


 今日は、いよいよ商業ギルドの寮に引っ越す日である。


 朝、ソラと顔を合わせたジンは、挨拶がてら、この一週間を総括する。


「なんとか商業ギルドで働ける最低限の数学は身についたようじゃな」


 ジンの評価に対して、ソラはありがとうございます、と答えた。この一週間で僅かであるが、自分に自信が持てるようになった気がする。


 ソラは数学を学んだ感想を述べる


「数学を学んで、世の中の見え方が変わった気がします。これまで一階の窓から外を見て、こんなもんだと思っていたところ、二階に上って見ると、全然違って見えるような感じです」


 ジンはソラの感想を聞き、嬉しそうに応える。


「それが現実世界と理想世界をつなぐ感覚じゃ。大切に、忘れないようにな」


 ソラは元気にはい、と返事をした。


 朝食の後、ジンがソラに話しかける。


「そろそろ出る時間じゃのお。商業ギルドのギルドマスターは、チョウという。坊やは、チョウの親戚ということにしてある。覚えておけ」


「ボクが師匠の養子ということを知っているのは、チョウさんだけですか?」


 ソラの質問にジンはああ、と肯定した。

 

「ワシが送っていくと面倒なことになるので、すまんがふもとのジンノ村まで一人で歩いて移動してくれるか」


 ソラははい、と答え、玄関に行き靴を履いて、お世話になりました、と挨拶した。


 ソラは家の外に出る。そういえば、この一週間、一歩も家から出なかった。


 丘の上にあるので、遠くの山や近くの牧場が良く見える。ソラはぐるりと見回すと、景色を目に焼き付け、ジンノ村へ続く道を下り始める。


 ふと後ろを振り返ると、ジンの家が霧に包まれていくのが見えた。


 ――これが魔導具の効果か。


 ソラは感心しつつも、前に進む。いつしかジンノ村の通りに出ていた。


 振り返っても、さっき下りてきた道が見当たらない。童話に出てくる神隠しみたいだと思いながら、ソラはジンノ村の通りを歩き、商業ギルドに向かった。

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