昴のヤキモキ
昴は数字が苦手だ。だから必死に板書を写し、教師・七瀬の言葉を聞き逃さず必要なメモをノートに書き込み、教科書にもマーキングとメモを欠かさない。その努力もあって、中間テストでは93点を獲得した。その習慣の甲斐があって、いま、昴は時計を全く気にすることなく過ごせていた。恐らく、時計を見れば再び怪異が顔を覗かせるかも知れない。そういう意味で都合が良いと言えた。
しかし現在、昴は数学の授業に完全に集中している訳ではなかった。チラリと悠太の後ろ姿に視線を移す。長めの髪にほぼ隠れているが、両耳に絆創膏が貼ってあるのが見える。白くて細い首筋がとってもキュートだ。暇を持て余しているのか、校庭に視線を移してアクビを1つ。実にプリティかつビューティホー!(片想い少年フィルター実装中)…と、ほんの一瞬だけ妄想の世界にダイブしてしまったが、昴は気を引き締めて再びノートを取る。板書を書き写し、宿題の範囲をチェックし終えると授業終了のチャイムが鳴った。次の授業は国語。昴は悠太の席に向かう為にバタバタと急いで授業の用意をする。
「おい、昴ー!何なんだよ、今日、ぜんぜん話せてねーじゃん?」
そう声を掛けてきたのは川端雷魚。クラスメイトであると同時にバスケ部の仲間だ。
「悪い、ライギョ。今日はちょっと立て込んでて…」
言いながら立ち上がり、悠太の席に向かおうとしたが後ろ襟首を掴まれた。そのまま流れるようにヘッドロックを掛けられて拘束。
「なに? 山口と何かあった?」
と、上から雷魚の声がした時には、いつものメンツが昴の席に集まっていた。
「何か昨日から山口君推しよね? どうしちゃったの?」
と、平田優美が不服そうな声を上げる。
「ユミちゃん、もっと言ってやって!」
「昴くん、ワタシ、寂しい〜い〜!」
戯けたように体を揺らすとドッと周囲から笑いが起きるが、昴は最近、優美の本気が垣間見える気がしている。それを周りが承知の上で助長している感じだ。昴は今まで、敢えて気付いてないフリを貫いてきたが――
「あ、もしかして山口をコッチに引き込む的なこと考えてる?」
そう言ったのは大内将司。いつも明るくノリも良いが、悪い意味でも軽薄な帰宅部所属。そして悠太のような陰キャだとかアニメオタクだとかいった者を何かと見下しがちな性格だ。
「えぇ…ちょっと大丈夫?」
「話が合わないというかぁ…?」
原田千絵、伊藤カナが口を揃えた。話題が山口悠太なのに、誰もこの会話に加えようと呼びに行こうとしないことを昴は少し残念に思う。
「いや、そんなコトねーよ? 話してみると案外、おもしれーヤツだと思う。」
フォローを入れると雷魚が拳で昴の頭をグリグリと圧迫した。
「ヤッパ何かあったんじゃねーか? 話せ話せ、ぜんぶ話せ!」
「痛だだだ! なんもねーよ、止めろライギョ、離せよッ!」
そんないつもの会話の流れで休憩時間が浪費されていく。昴は悠太と2人きりで話して悠太のことを知りたいし親睦を深めたい、そのついでに怪異について知っておきたいと思っているのだが。なかなか思い通りに物事が運ばず、昴は歯痒い思いを抱えながら6時限目を迎えることとなった。
■沢渡 昴[Subaru SAWATARI]
身長:175cm 体重:61kg
誕生日:5月3日(おうし座)
血液型:O型 年齢:14歳
好き:山口悠太
嫌い:イジメ、嫌がらせ、仲間はずれ
ポジション:基本的に攻め




