第89話 一人旅
さて、探すと言ってもそう複雑な話ではありません。
各地を旅しながら、人探しのミームが得意な生存者とコンタクトを図り、その人物の協力で時を止めた存在を突き止めます。
流れは非常にシンプルですね。
それなりの手間ですが、現状は他に手段がなさそうです。
あ、人探しの代わりに時を進めるミームでも良いですね。
強制的にタイムアップにできれば、些細な妨害など関係ありません。
本当は僕がその役目を担えればよかったのですがね。
生憎と時間操作に関するミームとは相性が悪いようです。
何度も練習してみましたが、一向に成功する気配がありませんでした。
この苦手意識が根付いている間は、どんなに頑張っても不可能でしょう。
というわけで日本を発ち、現在は飛行機の中にいます。
空港からざっと三時間くらいは経過しましたね。
優雅にお酒を飲みながら空の旅を満喫しています。
こんな狂った世界ですが、実は各種交通機関の一部は平常通りに運行しています。
ただし誰も運転はしません。
現在の交通機関はすべてミームで成立しています。
詳細は不明ですが、誰かのミームで機能しているようなのです。
或いは数少ない生存者の願いかもしれませんね。
インターネットが未だに健在なのもこれに関連していると思います。
ネガティブな妄想ばかりが叶いがちなミームですが、発想次第でいくらでも化ける能力です。
生存者の切実な望みが、こうして形となって生活を支えようとする様は健気ですね。
おかげで僕も快適な旅ができています。
もし飛行機がなかったら、自前のミームで用意しないといけないところでした。
別に不可能ではありませんが、ずっと運転するのは面倒ですからねぇ。
そういえば、最近はミームの効果が高まっている気がします。
おそらくは地球上の人間の割合が少なくなっているからでしょう。
相対的に個人の扱うミームの影響力が強くなっているようです。
きっと現在の人口の九割以上はモブでしょうから、ちゃんと生きている人は貴重です。
ミームを使いこなす者はさらに少数派でしょう。
だから一人ひとりのミームが映えるのです。
もし世界に残る人間が僕だけになったら、ミームはどれほどのパワーになるのでしょうか。
それこそ神に等しい存在になれるかもしれませんね。
まあ、完全に孤独なので誰に誇れるというわけでもありませんが。




