第88話 罠職人の本音
僕はこうして撮影を続けていますが、一体どれだけの方が視聴するのでしょうね。
後世に語ると言っても、そもそも後世が存在するのかという問題があります。
既に"ゲーム"で滅ぼすと明言してしまいましたからね。
世界が続くとすれば僕が死んでいるので、どのみち答えを知る機会はなさそうです。
まったく、どうしてこうなったのでしょう。
カオスの原因は分かっています。
ジ・エンドという組織が、世界をリセットするためにミームを蔓延させたのです。
彼らの望む通り、人類は自滅の果てに根絶の道を進んでいます。
唯一の誤算と言えば、リセットの前段階でジ・エンドが存続できなくなっている点でしょうか。
ジ・エンドの皆さんにとっての天敵はリペアです。
きっと両組織による壮絶な戦いが、本来のシナリオだったのだと思います。
それを私が容赦なく打ち壊しました。
世界は既定のシナリオを脱線して、白紙の上を暴走しているのです。
……先ほどの怪獣とゾンビの対決も終わったようです。
怪獣がゾンビ化して、腐肉を散らしながら街中を闊歩しています。
このまま郊外へと出て暴れ回るのでしょうね。
そして他のモンスターか生存者が倒されるはずです。
いやはや。
ええ、はい。
まったく、もう、ね。
飽きましたよ、さすがに。
……だから七日間という制限を設けたのですよ。
どんなルールであれ"ゲーム"には緊迫感が必須です。
弛緩した時間はいりません。
四カ月は、僕の熱意をも削いできます。
期待していた秘密組織もあっけなく壊滅してしまいました。
時を止めた誰かさんも一向に姿を見せません。
さすがに困りましたねぇ。
僕が"ゲーム"に飽きるなんて滅多にないですよ。
時間停止という奇策は評価しますが、個人的には賛同できません。
せっかくの"ゲーム"の良さを潰された形ですから、まあ当然の意見ですよね。
建前ばかりを並べてきましたが、もう認めましょう。
究極の"ゲーム"という試みは失敗しました。
想定外の膠着状態で延々と長引くようなものを究極とは呼べません。
とは言え、前言撤回はできません。
動き出した"ゲーム"は僕にも止められませんから。
僕のミームには、自他を問わず高い強制力があるのですよ。
つまりこのまま続けるしかないのです。
参りましたね。
色々と考えていますが、打開策は数えるほどしかありません。
最も有効なのは、時を止めた人物を探し出すことですね。
僕のミームでは難しいので、誰かの力を借りることになりそうです。
今までは"ゲーム"に大きく干渉したくないので避けてきましたが、そろそろ行動しましょうか。




