第19話
少女を介抱する事にした俺たちは、道から外れて用意を始めた。湯を沸かし、保存食のパンをふやかし、更にオーク肉を使ってスープを作っていく。俺も一応自炊経験があったので、スープ作りはサクサクと進んだ。
スープが出来る頃に、その匂いに気付いたか、少女が目を覚ました。最初に見た時から思っていたが、彼女は美人だ。元の世界だったらモデルやグラビアアイドルなんかをしていただろうと思う。
「美味しい匂いがします」
彼女の最初の一言はこれだった。そんな彼女に俺は微笑みながらスープとふやかしたパンを皿に注いで渡す。
「起きたか。まぁとりあえず食べな。話はゆっくり聞くから」
「ありがとうございます、えっと……」
「名前はクレアだ」
初めて俺はクレアとして名乗った。
「ナギナと申します。それではいただきます」
ナギナと名乗った少女はそう言うと、一心に食事を始めた。美味しそうに食べる彼女は空腹だったからか、無言で勢いよく食べる。パンと2人前のスープを食べ終えてもまだ足りない様子でお腹を鳴らし、
「す、すいません……」
と恥ずかしそうだった。
「いやいや良いって」
と俺も美味しそうに食べる彼女を微笑ましく感じ、追加のスープを作っていく。
結局4人分のスープと2人分のパンを食べた彼女は、
「ありがとうございます。もうダメかと思いました」
と頭を下げた。
「それは構わないけど、どうしてあんな所で?」
気になっていた事を聞いてみる俺
「えっと、私はいわゆる東来人と言うものでして」
「東来人?」
「ご存知ないですか?こっちでは私たちの事をそう呼んでると聞きましたが……」
ナギナが少し不安そうに答える。これはクレアに聞くべきだな。
(クレア、知ってるか?)
(ああ、この大陸の東にある島から来た人々を東来人と呼ぶな。獣人の国と聞くが、実際に会うのは始めてだ)
一瞬で情報交換を済ませて、ナギナに話しかける。
「東来人、東来人……ああ、あれか。東の島から来たって言う?」
「はい、そうです。私は武臨という街から来た東来人でして、16歳になったので一念発起してこっちには修行に来たんです。ですが途中で路銀が尽きてしまいまして……」
「倒れたと」
ちなみにこの世界での成人は15歳らしい。
「はい、恥ずかしながら。ところで貴女はお一人ですか?」
ナギナが見上げるようにして聞いてくる。
「ああ。そうだけど、それがどうかしたか?」
「それでしたら、私も一緒に連れて行ってくれませんか?」
名案のように彼女が言う。
「私こう言うのもなんですが、結構強いですよ?刀術に関しては自信がありますし、魔法も多少使えますから付いて行かせて下さい!!」
「おいおいおい、いきなりどうしたんだ?」
慌てて俺が答える。付いていくって俺たちにか!?
「一人旅と言うのも寂しかったんです!お願いします!」
ナギナは土下座をせんとばかりに頼みこんで来た。
(なぁ、これどうする?)
(とりあえず王都フォカリオまでは連れて行こう。その上でウィスに行く事、旅の目的が仇討ちである事、彼女の実力を見る事を条件にしてはどうだ?)
(それが良いな)
「ナギナさん?」
「ナギナで良いですよ」
「じゃあナギナ。俺はウィスに向かってる。途中でフォカリオに寄るが、そこでお互いがどのくらい強いか確認して、それから決定するってのはどうだ?」
「はい、構いません。よろしくお願いします」
即答され、頭を下げられた俺たちは、ナギナと言う少女を連れていく事になった。




