Rita=モデル
次の日私はタクシーに乗ってJ&J編集部へと向った。
例の如くマネージャーさんが私を編集部へと促す。
昨日の事もあり少し足取りが重い。その様子に気が付いたマネージャーさんは
「どうしたの?具合でも悪いのかな?」
と、優しい声で聞いてきた。勿論だが昨日の事は言ってない。
私は、「いえ、大丈夫です」と言い放つと背筋を伸ばした。
J&J編集部は例の如く忙しそうだった。
アレコレ指示を出していた久我山編集長が私達の存在に気付く。
久我山編集長は昨日の事が無かったかのようにいつも通りの笑顔で私を迎えてくれた。
正直ホッとした。
「オハヨー、リタちゃん。ちゃっちゃっとフッティング終わらせちゃって何か美味しい物でも食べに行こうか?」
そういうと準備してある会議室の方へと促してくれた。
編集部のスタッフの面々もいつも通り接してくれた。
ちょっと拍子抜けした感じがするが内心は安堵の溜息をついていた。
私は安心したので改めて部屋の中を見渡した。
「?」
何か違和感を感じる。いつもはブランドのロゴが入ったショッパーが散乱しているのに今日はそれがない。
その代わりにビニール袋が散乱している。私はその中の一つを拾うと広げてマジマジと見た。
「ノ…ト…ヤ…。ノトヤってあの!?」
思わず叫んだ。まさかJ&Jでノトヤの服を着るとは思いもよらなかった。
久我山編集長は私の反応をケラケラと笑いながら楽しんでる様子だ。他のスタッフの反応も似たり寄ったりだ。
「おっとリタちゃんイキナリ気になっちゃう感じィ~」
と、少し意地悪そうな感じで久我山編集長が話しかけてきた。
私は呆然とした顔付きで久我山編集長の顔を見る。
「さぁ、腕の見せどころね!J&Jは話題になってるショップはどんな所でも扱うわよ!!アメ横も小伝馬町も巣鴨だってドンと来いよ!!」
私はハッとした。そうだ私はモデルだ。それも全国の女性が羨む程のモデルだ!
J&Jの顔。トップモデルのRitaだ!!
全国の読者が私の事を待っている!
ヘコんでる暇はない!!
顔を挙げろ!
胸を張れ!
そう自分を鼓舞する様に言い聞かせるとスタイリストさんが用意してくれた服に袖を通す。
以上。




