涙≠感情
そしてその一連のやり取りを見ていた久我山編集長が
「隊長さん。そ、そんな事ないですよ」
慌てフォローを入れるが、これが結果として火に油を注ぐ事になってしまった。
「んぁ。どうしたの隊長?いつもな威勢よく言い返してくるのに」
「そーだ、そーだ。ひょっとしてあれか?ファッション雑誌の編集長の前だからアガってるノカ?」
二人が必要以上に挑発してくる。
私は遂に我慢の限界を超えてしまい立ち上がってしまった。
「リタちゃんダメ!」
事態を重く見た久我山編集長は私を制しようと声を殺しながら叫んだが一歩遅かった。
気が付くと私はロングヘアーのフルウィッグを頭からむしり取りテーブルの上に叩き付けた。
ショートヘアーの金髪が露わになる。
その私の変わり果てた姿を見て唖然とするカネコさんと小川さん。
ファミレス内の空気が凍りつく。お客さんの視線は私達のテーブルに釘付けだ。
「あんた達、モデルを馬鹿にするのもいい加減にしなさいよ」
私は静かにそう言い放った。
すると、お客さんの誰かがボソりと
「あの人、ひょっとしてモデルのRitaじゃないの?」
と、言ってしまった。先程の凍りついた空気から一転。ファミレス内はザワつき始めた。
でも私は構わず話し続けた。
「確かにモデルの仕事なんて着せ替え人形みたいなモンよ。でもね、着るものを選べる程偉くないのよ!どんなモノでも着て着こなさないといけないの!!それに着るモノを与えられるまでの道のりがどんなに険しいか解ってるの!?殆どのモデルさんがそこに行くまでに力尽きてしまうわ!!私がモデルとして成り立っているのは色んな人の努力と挫折の上に成り立ってるの!いい!モデルが服に袖を通すってのはアンタ達普通の人が思う程軽くないの!!!色んな人の人生背負ってるのよ!!ブランド、ショップ、スタイリスト、カメラマン、もっともっといっぱいの人達が関わって初めて成立するの!!モデルの仕事は安くないのよ!!」
啖呵を切ってる間に私の頬をナゼか涙が伝う。
それに気が付いた久我山編集長が私の肩にそっと手を置く。
しかし、私はどうにも感情を抑える事ができず久我山編集長の手を払いファミレスを飛び出してしまった。
金髪で銀縁眼鏡の大女が泣きながら歩道を駆け抜けて行く。
道ゆく人達がギョッとした表情をするが私は構わず走り続けた。




