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私の小失敗の本質  作者: リノキ ユキガヒ
報告「我レ突入ス」
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仲間≠裏切り

 あれから仕事が立て込んできてマルハチ会の事を一時的ではあるが忘れる事ができた。

 しかし律儀にマネージャーさんはマルハチ会の日はオフにしていた。

 例の件は明らかに私的な事なのでマネージャーさんには言っていない。いつもの流れで休みになるのは当然だ。

 ◯月◯日。自宅のポストに雑誌「丸」の今月号が三冊突っ込まれている。

 私はそれをポストから取り出すと部屋に戻った。

 本日はマルハチ会の日だ。しかしあの様な醜態をさらした後に会合に行くのは気が引ける、そして何より高島平のファミレスの方々に迷惑をかけたであろうから行きづらさに拍車をかける。

 事はどうあれ私が全面的に悪い。

 あの時二人の言動を流せばよかっただけなのだ。

 あの時点では私がモデルのリタと言う事はバレてなかったのだから。

 自分でもナゼそうなったのか解らなかったが、マルハチ会の面々に自分の仕事を否定するような事を言われたのであの様な行動を衝動的にとったのだろう。

 なんだか裏切られたような感じだ。

 ソファに寝転ぶ。悶々とした雰囲気の中、時間だけがただ過ぎていく。

 集合の時間はとっくに過ぎている。そしてそのまま時は流れ夕方になってしまった。

 マルハチ会は大体昼過ぎには終わってしまう。よしんばカネコさんと小川さんが来てたとしても、もう帰ってるだろう。

「丸の今月号渡せなくてゴメンね」

 そう私は部屋で一人呟いた。

 そして大分早いが明日の仕事の為と、かこつけて床に入ろうとした。

 陽はとっくに暮れている。

 しかし、どうにもマルハチ会の連中が頭の中にチラついて寝付く事ができない。何度も寝返りを打つ。布団を頭から被る。

「寝なければ」自分にそう言い聞かす。しかし寝付く事ができない。時間だけが虚しく過ぎていく。

「あーーーーーっ!!」

 私は思わず一人部屋で叫んでしまった。

 どうにもマルハチ会の連中の事が気になってしょうがない。

 ほぼ衝動的にベッドから飛び出すとジーンズに履き替え着の身着のままで高島平のファミレスへと自転車を漕いだ。

 このままだと気持ちの整理がつかない。

 あの二人に会えなくてもいい、とにかく何か行動を起こさないと


 気が変になりそうだ!


 私は夢中になって自転車のペダルを漕いだ。

 頬に水滴のようなものが当たる気配がする。

 雨が降り始めたのだ。カサもレインコートも勿論持っていない。

 ズブ濡れで高島平のファミレスに到着した。

 私はそのままの格好で入店すると店内を見渡した。

 やはりというか、当然というかそこに彼らの姿は無かった。

 やり場のない虚しさが私の胸中を侵していく。

 「あの、お客様?どうかなさいました?」

 ウェイトレスさんが心配そうに私の顔を覗き混みながら話しかけてきた。

 その時だが私は少しばかり冷静さを取り戻せた。

 そして自動ドアに薄っすらとだが写っている自分の姿を見て愕然とした。

 健康サンダル、ジーンズ、トレーナーにドテラを羽織っていた。

 仮にも私はトップモデルだ。いくら衝動的とはいえ、我ながら凄まじいコーデだ。

 オマケにズブ濡れの特殊メイクつき。

 自分の姿のヒドさと、カネコさんと小川さんがいなかった事への喪失感からか?私は魂が抜けたように、その場で呆然としてしまった。

 すると、奥の方から店長らしき人物が私の方へと小走りに向かって来た。その彼は


「お客様。ひょっとしてこの間のモデルの方では?」


 と私の側に寄り添い小声で言ってきた。

 そして私が小さくうなづくと人目の付きにくい事務所の方へと案内してくれた。

 店長は私にタオルを差し出すとゆっくりと話してくれた。

「本日、いつもの男性お二人、来店されておりました。で、お客様の事を随分お待ちになっておられた様子ですよ」

「そ、そうですか…」

 私はそう答えるの精一杯だった。

 やっぱりあの二人は来ていたのだ。

 久我山組と同じで私が何者でも構わず来てくれたのだ。それなのに私は…なんて臆病だったのだろう。彼らの方がよっぽど勇気がいったに違いない。

 なんせ、公衆の面前で恥をかかされたのだ。それなのにまた、同じ場所に来てくれた。

 彼らの前にどのツラ下げて会えばいいのだろう。たった一度のチャンスを逃してしまったのだ。

 私は唇を噛み締めて悔い改めた。しかし

「あの~。こんな時に申し訳ないんですけどこの間のお忘れ物です」

 店長はそう言うと、一つの紙袋を私に手渡してくれた。

 中身をみるとロングのフルウィッグが入っていた。

 それを見て店長にお礼を言おうと顔を向けると彼は嬉しそうに話してくれた。

「実は私達。お客様達がくるのを毎度楽しみにしておりました。賑やかで楽しそうだし、オーダーは沢山いれてもらえる上に多少のミスは見逃していただける。非常に良いお客様だったんです。それにお店の雰囲気も明るくなるし。楽しい雰囲気は我々だけじゃ作れないですから。随分たすかりましたよ」

 私は気恥ずかしくなり店長から視線を逸らしたが彼は構わず話し続けた。

「でもやっぱりモデルさんですよね。どんな格好でも華がありますもん。あなたが入店すると周りがパアッと明るくなる。実はちょっとお客様の事は店員同士で噂にもなっていたんですよ。本当はこんなこと言ったらいけないんですけど…。」

 私は今の格好でどんな表情をしていいのか解らなかったので「タオルありがとうございます」と力無く言ってそのまま店長に背を向けた。

 店長は少し寂しげな表情をすると

「また、お連れ様といらして下さいね」

 と言って私を送り出してくれた。

 それが例え社交辞令でも私のムネにはズシンときた。


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