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私の小失敗の本質  作者: リノキ ユキガヒ
報告「我レ突入ス」
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38/41

決意=覚悟

 身体を引き摺るように高島平のファミレスを後にした。

 店長の話しを聞いてほとほと自分という人間がイヤになる。

 ふと空をみあげる。

 雨は止んでいる。

 満月が私を照らし出す。

 そして月明かりで伸びた影の先に幹線道路である高島通りが見えた。

 気が付くと私は自転車のペダルをひたすら漕いでいた。

 志村一里塚、環七、板橋区役所、サンシャイン60、護国寺。

 景色がドンドン変わる。

 そして遂にJ&J編集部のある出版社のビルの前まで来てしまった。

 私は何かに取り憑かれるかの様に通用口に向かい入館しようとした。

 しかし、当然の事ながら警備員さんに呼び止められた。だがその制止を振り切るように半ば強引に入館しようと私はした。

 警備員さんは無線で応援を呼びながら私の肩をつかみ再度制止を試みる。

「止まりなさい!ここは関係者以外立ち入り禁止です!退館願います!!」

 それを無視する私。再度大声で警備員さんは私の制止を試みる。

 しかし、私はうわ言の様に

「モデルのリタです」としか言わなかった。

 普段着以下の格好でうわ言のような事しか言わない輩を通してくれるほど警備員さんは優しくない。

 そうこうしている内に通用口は警備員さんで溢れ騒然とした雰囲気になった。

 そしてその騒ぎは偶然通りかかった久我山編集長の目に留まった。

「ちょっとリタちゃんどうしたの!?」

 私の余りの姿に驚きを隠せないようだったが、すぐさま抱きかかえ警備員さんに私の素性を教えて何とか通してもらった。

 久我山編集長はまるで魂が抜けて、抜け殻みたいになった私を、J&J編集部に連れて行き応接セットのソファに座らせた。

 彼女は私の姿を改めて見て目の前に屈むとニッコリ微笑んで

「ねぇ、ちょっと来て」

 と言って私の手を引き半ば強引に

 ビルの外に連れ出した。

 編集部のビルから歩くこと大体五分位だろうか?私達は銭湯の暖簾を潜った。

 女湯の鴨居を潜るとアルバイトだろうか?高校生位の女の子が脱衣場でモップをかけていた。

 その子は私達の存在に気付くと、顔を上げながら、

「あっ。すいやせーん!今日も終わってるンすよ~。って編集長じゃないスか!」

 といかにもイマドキの娘といった口調で私達に話しかけてきた。

 話し方からすると二人共面識があるようだ。

「やぁ。どうも終わってる感じだけど少しだけいい?」

 そう言うと久我山編集長は拝みながらその娘に入浴のお願いをした。

「あ~、余裕ッスよ~。ゆっくりどーぞー。つーか後ろの大きいネーさんは?」

「ん?この娘?」

 久我山編集長がチラと私を見るのと同時にモップの落ちる音が脱衣場に響いた。

「ヤベェ!!Ritaじゃね!?」

 その娘は慌てモップを拾いながら私の事に気付くとツカツカと歩み寄ってマジマジと私を見た。

「おー…。J&Jで頭張ってるだくけありますね~。オーラ…ッハンパねぇッス」

 そう言うとゴミ袋とモップを持って脱衣場を後にした。

 私は少し困った顔で久我山編集長をみると彼女はクスリと笑い

「ココの銭湯の娘さんだから大丈夫よ。それより裸の付き合いはじめましょ♩」

 そういうと久我山編集長はあっという間に下着姿になっていた。

 そのあまりの脱ぎっぷりに私も釣られるように服を脱いでいく。

 ガランした湯船に二人ともつかると、何だか今までのなんとも言えない気持ちがお湯に溶け出していくような気がした。

 いつもは冗舌な久我山編集長も目を瞑って黙って湯船につかっている。二人して湯船で特に何か喋る事はしなかった。

 私達は娘さんにお礼を言うと銭湯を後にした。

 火照った身体に夜風が気持ちいい。

 久我山編集長は編集部へ帰る道すがら

「もう、大丈夫そうね」

 そう言うと私の背中をポンと叩いた。私も

「ハイ」

 と力強く返事を返す。

 何だか不思議な感じがした。二人とも特に何か話した訳ではないのに不思議と心の整理がついた。

 銭湯の広い湯船とお互いに裸になった解放感からそうなったのかは解らないが、とにかくササクレ立った気持ちがウソの様に消えていった。

 私は編集部のビルの前まで戻ると久我山編集長に自宅に戻る旨を伝えた。

 久我山編集長は「気を付けてね」と言うといつもの人懐こい笑顔を振りまいてビルの中へと消えて行った。

 その背中を見送ると私も帰路につく為回れ右をした。

 そして自転車に跨るとペダルを力強く漕ぎはじめた。

 少し進むと腹の虫が「グ~」っとなった。

「途中でラーメンでもたーべよっと」

 一人呟くと夜空を見上げた。

 首都高5号線の高架越しに月明かりに照らされたサンシャイン60が見える。

 私を乗せたママチャリはノンビリと板橋へと向った。


 以上。



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