自分≠思惑
かくして私のコラムの連載が始まった。
私は編集部から渡されたデジカメで馬鹿正直に部屋の様子や趣味を満喫しているところを撮りまくって編集部にコメントを添えてメールで送った。
出来上がった誌面は意外にも私の趣味が全面に押し出されていて、こっちが驚いた位だ。しかも雑誌から浮く事もなく。
私のぶっきらぼうな軍事マニアにしか解らなそうなコメントも、柔らかくアレンジされていて軍事雑誌のような無骨なテイストは微塵も感じない女性受けしそうな文体になっていた。
こういうのを目の当たりにするとJ&Jの編集部も流石プロの集団だと関心する。
特に軍事用語を極力排してこのような誌面を作るには並々ならぬ苦労があったろう。
そしてこの連載は私の変わった一面を垣間見れるという事で、読者の方々からも掲載早々、非常に好評を博しているとの事。
気の早い話しだが単行本化の話しまで出てきたという。
あの時、茫然自失だったマネージャーさんは今まで依頼の来なかった専門誌からのオファーが入り始め嬉しい悲鳴が止まらないという。
ファッションモデルとして新分野を開拓できたと大喜びだ。
私個人としては「コンバットマガジン」の仕事で表紙を飾れた事が物凄く嬉しかった。表紙で構えた銃は
「百式機関単銃」
旧日本陸軍のSMGだ。
モデルガン化に伴い特集記事を組んだ際私の名前が挙がったらしい。コメントも求められたので喜んで応じた。さすがコンバットマガジン編集部。私が何マニアか解っている。
この時ばかりはこの仕事を続けて来て良かったと心底思った。
勿論J&Jも新たな読者の会得に成功して部数を伸ばす事に成功した。
「出版業界の奇跡」が再び起きたのだ。
私もまさかこんなに良い反応があるとは思わなかった。
こんな事ならもっと早くにこの趣味を公表しとけば良かったと後悔すらしてしまうほどだ。
「J&J発行部数新記録!!おめでとう!!」
久我山編集長がそう叫ぶとそれに釣られて編集の人達も「おめでとう!」を連呼した。
辺りにクラッカーの音が鳴り響く。
J&Jは遂に発行部数の新記録を樹立したのだ。編集部では急遽であるが久我山編集長の計らいで本日都合のついた者だけ掻き集めて細やかながら編集部でパーティーを開いたのだ。
私とマネージャーさんはたまたま打ち合わせで編集部に訪れたのだがそのままパーティーに参加する事になった。
皆さんまだまだ仕事があるのでソフトドリンクと宅配ピザでの乾杯だが嬉しそうだ。
勿論、私も自分の趣味が仕事に生かせて嬉しいのだが心の何処かに支えるモノがある事に気付いた。
嬉しいのだがナゼか虚しい。
この相反する思いへの答えが解るのにそんなに時間は掛からなかった。
そう。この喜ぶべく快挙を伝える仲間がいる事に。
それは「マルハチ会」の二人だ。




